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12<求婚>

前回のあらすじ

女子が乗った体重計に重力魔法は厳禁である。

ヒロシ先生が立ち去り、黒髪の男が交代で彼に近づく。その左腕には厚皮の鎧が見える。


ケイゴ「・・・・」


そのままケイゴは彼にそれを突き出す。


「うん?ケイ兄?」


ケイゴ「着ろ。お前には必要なはずだ。」


「うん?」


彼は言われるがまま身に着ける。


ケイゴ「偶数の皆、お待たせした。初回は近接スキルの実演をしようと思う。」


「・・・・・。」


ケイゴ「君たちは兵士になる訳ではないのであまり高度なことをやる気はないが、一連の授業では小型の魔物が現れても武器があれば逃げ切れる位を目指す予定だ。」


彼は皆の前で立たされている。ちょうどケイゴの隣に立つ形だ。


女の子「こうして並ぶと目の色と背丈以外はそっくりね。」


ケイゴ「では、まず一番有名な戦闘スキルであろうドゥオブロを竹刀にて実演しようと思う。」


ケイゴはそう言いながら竹刀を彼に向かって構える。そしてなぜか彼の手にも竹刀が握らされている。何が起こるのだろうか?


ケイゴ「では助手君。兜をかぶり、俺に向かってかかってきたまえ。そう、例えば人の卵焼きをこっそりすり替える時のように本気で来て構わないぞ。」


「もしかして、バレてる?」


ケイゴ「余談だが、とある家庭のとある日の夕飯にでた卵焼きはユリという素敵な女性が誰かのために高級卵を使って焼いてくれた物だったはずなのだが、何故か普段と同じ味がしたらしいのだ。何故だろうな?何故だと思う?最愛の弟よ。」


「どうか、慈悲を・・。」


ケイゴ「どうかしたか?顔色が悪いぞ?お前は全く関係ないはずだろう?いいから、かかってこい。」


「ク・・・やられるぐらいなら差し違える覚悟で・・・。ケイ兄なんかこわくねえ~~、うおーーー!!!」


彼は素人丸出しの袈裟切りでケイゴに切りかかった。


ケイゴ「ドゥオブロ」


ケイゴは足を止めたまま、スキルを放つ。複数個所で同時に硬い物があたる音がした。


「痛!!!!!」


彼は痛みに耐えるように地面にゴロゴロ転がっている。


ケイゴ「このように2か所を同時に攻撃できる。・・助手君、感想はどうだ?」


ケイゴは地面に転がっている無様な弟を見ながら感想を求める。


「衝撃が竹刀と肩に同時に来ました。が、竹刀が増えたようには見えず寧ろ一瞬消えました。あと、とても痛いです。そう、私怨のようなものを感じました。これは立派なドメスティックバイオレンスだと思います。」


ケイゴ「そうか。よく見ているな。撃つ側の感覚としては撃った瞬間は手の感覚がなくなり、その後手ごたえは一回だけ発生するといった具合だ。俺は魔法は使えないが、知り合いの魔法使い達と話した限りでは自分の体を使った魔法という感覚が一番近いと思う。」


ケイゴは弟の訴えについては黙殺した。


ショウジ「剣聖様、質問よろしいですか?」


友人が地面に無様に転がっている男を無視しながら質問をする。


ケイゴ「普通にケイゴで良いぞ。どうした?」


ショウジ「教科書にはスキルを撃つにはその名前を宣言するだけとあるのですが、実際はどうなのでしょうか?」


ケイゴ「・・・。ああ、教科書のとおりだ。君の理解は正しい。」


一瞬剣聖の答えには間があった。


ケイゴ「他に質問がなければ、次は教科書に出てこないスキルの実演とする。助手君、列に戻ってくれてよい。」


彼は無言で列に戻った。


ワタナベ「大丈夫?ニノマエ君?」


「ワタナベさん、俺の身を案じてくれたのは世界で唯一貴女だけだ。どうか俺と結婚してください。」


彼はワタナベの手を取り、少し芝居がかったセリフを言う。


ワタナベ「うん♡喜んで♡」


間髪入れずにワタナベは満面の笑顔で答える。


「え?」


何故か言い出した本人が一番驚いている。


ショウジ「え?」


コバヤシ「やだ、この娘、強い。」


ワタナベ「クスクス、ニノマエ君。冗談よ。でも、多分前を見た方が良いと思うよ。」


「え?」


彼は小声で話していたつもりのようだがケイゴがガン見していた。


ケイゴ「お前はずいぶんと余裕なようだな。気が変わった。もう一度協力してもらおう。」


「はひょ?」


口は災いの門、この日彼は一つ賢くなった。


ケイゴ「とはいっても今度は俺は攻撃をしない。お前はひたすら俺をその竹刀で自由に攻撃してみろ。」


「う、うん?」


ケイゴ「遠慮するな。」


「い、行くぞ!」


彼は竹刀を上段から振り下ろす。それと同時にケイゴはゆっくりと横に移動する。


彼の竹刀はブオンと音を立てて空を斬った。


「あれ?」


ケイゴ「もう一度攻撃してみろ。違う軌道でいいぞ。」


「タア!!」


彼は今度は竹刀で突き上げる様に攻撃をする。それと同時にゆっくりとケイゴがやはり横に移動して攻撃を躱すのを認識できた。


「ケイ兄はゆっくり動いているのに当たらない?動きは見えているのに当てられない。なんでだ?」


ケイゴ「兵士のように近接武器を扱う加護を持っていると反射神経が良くなる。相手の行動を認識した瞬間に体を自由に動かせる。だからこんなこともできる。」


「うん?」


ケイゴ「じゃんけんをしてみよう。そうだな100回ぐらいやってみるか。」


「うん。」



**「おいおい、うそだろ、これで100連勝だ。」


**「まるで示し合わせたかのように毎回同じ結果だったな。」


「ケイ兄、これも加護の力?」


ケイゴ「ああ。相手の手の出だしを見て自分の手を変えることができる。つまり、相手と同時に手を出しながら後出しができるようなものだな。」


「ドゥオブロとかの技よりもこっちの効果の方が本体か?」


ケイゴ「近接系の加護の紹介はこんな感じだな。では時間もあまりないので最後に剣聖の専用スキルを実演しよう。ヒロシ殿、協力願う。」


いつのまにか魔法の先生がケイゴの隣に来ていた。


ヒロシ「魔法の対策は基本は逃げることだけども他の方法も存在する。その中の一つに剣聖の専用スキルが存在する。これを実際に見れる君達は運が良いかもしれない。では、ケイゴ殿。」


ケイゴ「うむ。」


そう言いながらは二人は離れる様に別の方向に歩いていく。


ヒロシ「このぐらいならちょうどいいだろうか?」


ケイゴ「問題ない。ではお願いする。」


そう言いながらケイゴは「刀」を構える。


女子「・・・あの真剣な顔・・格好いい。」


ヒロシ「グランダファイロ!!」


ヒロシ先生が赤く光ったと思うとおおよそ成人2人分の直径をもつ大きさの巨大な火球が離れた生徒達にも感じられるぐらいの強力な熱気を放射しながらケイゴの方に飛んでいく。


ケイゴ「アンタウアムーロ!!」


ドゴーーン!!!という大きな音とともに火球がケイゴに激突し爆発した。


「ケイ兄は大丈夫なのか?」


土埃が晴れるとそこには無傷のケイゴが立っていた。


ヒロシ「これが剣聖が始原の加護の持ちの防御壁と言われる所以なんだ。物理攻撃はもちろん魔法攻撃も防げる攻防一体のスキルを持っている。」


**「・・・爆風で見えなかったな。」


生徒の誰かが言った。


ケイゴ「む?では魔法なしでもう一度行おう。」


ケイゴ「アンタウアムーロ!!」


ダン!!!!


大きな乾いた音が多重に重なった様な音があたりに響き渡った。


動作後の恰好から察するに恐らく高速で刀を振り回したと思われるが、スキル発動の瞬間に腕が消える。


「魔法があろうがなかろうが見えないのは変わらないか。ともかく、ケイ兄には頑張って災厄を倒してもらおう。」


キーン、コーン、カーン、コーン


先生「時間のようだ。お二方今日はありがとうございました。」


ヒロシ「いえ、こちらこそ。懐かしい学生時代を思い出しました。」


ケイゴ「はい。こちらこそありがとうございます。」


女子「あ、あの、ケイゴ様・・。」

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