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110<ムシャクシテしてやった反省はしていない>

前回のあらすじ

二級神様による魔法防御訓練を受けた。

「え~と、俺は己の力量を弁えて、とても謙虚に行動する予定なので、マルモ様の御気遣いは不要というか全力で御遠慮願いたいと言うか・・。え~・・・そのですね・・・。」


彼は全力で冷や汗をかいている。


マルーモ「ハッハッハッハッ。そんなに怯えなくていい。この空間では何があっても君は死ねな・・コホン。死なない。それに喜べ。地上の生物でこの階級の魔法を其の身に受けるのは君が初めてだ。どうだ嬉しいだろ?」


「・・・・・。嬉しくて涙が止まりません。」


マルーモ「ハッハッハッハッ。君はユーモアのセンスもあるな。さあ、どの属性がいい?もちろん、光、木、闇以外だぞ。」


一般に光と木は回復魔法、闇は妨害魔法を司る。


「では・・地属性で。」


マルーモ「確かに無効化出来れば被害はゼロだな。本来は無詠唱で撃つ物だが、タイミングをとりやすくするために敢えて詠唱をしようか。」


「ゴクリ。」


マルーモ「スペラティーヴァ・」


マルーモが黄色に激しく光る。


それと同時に俺は雪月白桜を振り下ろす。


マルーモ「・グラヴィート。」


ズン!!!!


彼のいた場所には円形の漆黒の空間が発生し、その空間の表面は周囲の光が凝縮したように強力な閃光で覆われている。


もし学者がこの場にいれば事象の地平線がドウタラコウタラ言うのかもしれない。


マルーモ「やべ・・ちと力加減を間違えたか?」


パチン!


マルーモは少し焦った様子で指をはじいた。


重力場が霧散し、彼が地面に倒れているのが見えた。


「ん?あれ?俺は何で倒れているんだ?剣を振ろうとしたのは覚えているんだが・・視界が暗くなって・・どうなった?」


彼はゆっくりと起き上がる。


マルーモ「今、君は俺の重力魔法で縦に潰れ地面のシミになった。まあ、あまりに力の差があると今のように打ち消しきれずに魔法を食らうことになる。ちなみに君が刀を振ったからこそ、君は自身の体の異変を僅かながら感じ取れた。振ってなければ視界が暗くなった事すら気が付かなかったことだろう。」


「これがスペラティーヴァ級・・。神の魔法・・・。」


マルーモ「まあ、これは神の魔法だから今は気にしなくていい。・・・・・そのうち嫌でも何億発と受けることになる・・。安心したまえ。」


彼は少し怪訝な顔をしている。マルーモの後半のセリフは非常に小声だったため彼には聞こえなかったようだ。


「マルーモ様?後半が聞き取れませんでしたが・・?なんとおっしゃられたのですか?」


マルーモ「ハッハッハッ。大したことではない。ともかくだ、健闘を祈るよ。加護のない素の人間の力を神々に証明してくれ。」


「ありがとうございました。」


彼は意識が浮上するのを感じた。




マルーモ「今の強さは凡そあの時の彼と同じぐらいか。出来ればサイゴまで理性を保ってくれよ。・・・・いい加減こっち側にこいよ。頼みたい仕事が沢山あるんだ。」





兵士A「なんで大型弩砲による矢が効かないんだ。あれ、おかしいだろ。」


深い森の中、数名の兵士達が木の陰に隠れながら青い狼を監視している。


兵士B「もうすぐ、勇者様達が来られる。少しでも情報を引き出すんだ。」


兵士C「なあ、搦手で妨害魔法ならどうだろう?」


青い狼「・・・・!!!」


青い狼は兵士達に気がついたのか、大きく息を吸っている。


兵士A「まずい!!散開!!!」


次の瞬間、狼から高速の氷弾が兵士達に向かって飛んできた。


氷弾はナニカに辺りドゴーンという轟音と共に氷弾は砕け散り、周囲に冷気が漂う。


兵士A「おい、どうなった?」


兵士B「・・・・。」


兵士C「・・・・・。」


兵士A「お前ら・・自分の子供にもう一度会うんじゃなかったのかよ・・。」


着弾点の周囲にあった木々はなぎ倒され地面には二つの大きな赤い氷による模様が出来ていた。


狼は兵士Aを見ている。


兵士A「・・ここまでか・・。」


青い狼「!!!!」


兵士A「・・・ん?」


いままで警戒体勢すら取らなかった青い狼は一瞬何かに驚いたかのように身を固くした後、何かを探すように周囲を確認し始めた。


「アオーン!!!」


遠くから遠吠えが聞こえる。


青い狼「アオーン!!!」


兵士の前にいる狼は返事と思われる遠吠えを返しながら、遠吠えが聞こえた側に走り去った。


兵士A「助かった・・・のか?」




「まだかろうじて秋なのにここは真冬なのか?凍りついてやがる。」


彼は歩く度に足元から聞こえてくる霜を踏み潰す音を聞きながら独りごちる。


セドリック「これは大型の獣の足跡か?近いのかもな。」


パトリシア「・・・ふう〜〜〜。」


モニカ「何か聞こえませんか?」


ァォーン


リサ「遠吠え?」


ガサガサ。


「!!!!!」


セドリック「!!」


パトリシア「!!」


ゴオ!!!!何やら冷気の塊が偶々一行の端にいたモニカ目掛けて飛んでくる。


前衛三人の内、彼だけが反射的に雪月白桜を引き抜きそのままナニカを切り裂いた。


ギィイイイイン!!!といつもの甲高い音がし、彼の周囲に冷気が霧散する。


モニカ「ヒッ!!」


リサ「・・・・。」


モニカが少し遅れて驚いている脇で彼の横顔をリサは静かに凝視している。


善行度:728049(+6000)


雪月白桜の表面の表面に大気中の水分が凝固し、白い曇りとなって現れている。


「・・・・。今のはあの夢のエト級魔法と同じぐらいか?」


彼は攻撃が飛んできた方向を見ながらぼそりと言った。


「賢者は怪我はないか?」


モニカ「え、ええ。はい。」


セドリック「・・・。今のが報告にあった死の氷弾か。」


ガサガサガサと音がしたかと思うと、比較的小型(それでもかなり巨大だが)の狼3体とさらに大きな狼1体が茂みから現れた。


リサ「・・・・!!」


青い狼達「・・・・・。」


狼たちは全員リサを見ている。


パトリシア「リサ姉を見ている?回復役がわかるのかしら?」


「案外、見惚れているだけかもしれないぞ。」


彼は内容とは異なり大まじめな顔をしながら狼を凝視し続ける。


リサ「・・・・・?」


モニカ、パトリシア「・・・・。」


モニカとパトリシアは一瞬だけつまらなそうな顔をした。


「とは言え、後衛に襲い掛かられるのは問題か。どれ俺が囮になろう。王子様、先頭を譲ってくれ。そもそも王子様が先頭というのもなんか違和感がある。」


セドリック「・・・・。」


彼はそう言いながら先頭にいた勇者を追い越し、狼の前に躍り出る。


青い狼達「「グルルルル・・・・。」」


狼たちは全頭、聖女から彼に視線をかえ鼻面に皺を寄せ牙を向けた。


「おいおいおい、そこまであからさまに態度を変えられると傷つくぞ。俺はそれなりに繊細なんだ。」


狼たち視線は全て彼に向いている。


リサ「・・・・!」


よく見ると彼の脚は少し震えている。


「・・・・。」


彼はゆっくりと青い狼たちに近づくが、狼達は警戒しているのか彼と距離を保つように少し後ずさっている。

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