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11<魔法>

前回のあらすじ

馬鹿と天才は・・・。

「多分、こういうことだと思ったんだけど、ヒデはどう思う?」


翌朝、彼は教室内で自信満々に友人に持論を展開する。


ヒデアキ「・・・・。」


友人は呆れた目をしている。


「どうした?」


ヒデアキ「仮にお前の推測が当たっていたとして、その権力者はその色男?美女?とやらと同じ時代に生まれているのか?もしそうなら、既に文字を消す意味はなくなっていないか?逆に違う時代ならばやはり消す意味はない。というか、そもそもお前の説は絶望の大鬼と関連がある様に思えないのだが?」


「た、確かにそうだな。」


ワタナベ「二人とも何を話してるの?」


ヒデアキ「ああ、ワタナベさん。先日のマルモ神の言伝についてニノマエがぶっ飛んだ説を提唱したんだ。」


「そこまでぶっ飛んではいないだろう。」


ワタナベ「わ、面白そう。どんなの?」


ヒデアキは彼の説を紹介した。


ワタナベ「・・!・・!・・!・・!。」


ワタナベさんは肩を震わせて笑いを堪えている。


「そこまで面白いか?」


ワタナベ「ニノマエ君は可愛いね。」


「う、うん?」


ワタナベ「多分事実とは異なると思うけど、ニノマエ君の説、私は好きよ。」


「じゃ、じゃあ、君たちは何だと思うんだ?」


ヒデアキ「そんなの知るか。学者でも思いつかんことを分かるはずないだろう!!」


ワタナベ「私も思いつかないね。」


「君達な~、人の意見を否定しておいてな~~。」


ヒデアキ「そんなことより、今日はあれだぞ。戦闘訓練だ。」



先生「え~、では戦闘訓練の授業である。法律に従い4コマ・・要は約一か月行う。もし将来この分野に興味があれば講師に相談するとよい。戦闘用の加護がなくとも軍関連の仕事はいくらでもあるからな。」


「ん~?」


彼らは今、曇り空の下、体操着状態で校庭に集められている。先生の脇に普段は構内にはいない人物が二人立っている。


先生「知っている奴もいるだろうが、戦闘訓練の特別講師殿に挨拶をしてもらう。静かにな。」


ケイゴ「俺はケイゴ・ニノマエ。一応剣聖という立場ではあるが、この学校の卒業生でもある。気楽に接してほしい。近接戦闘について実演を行う。短い間だがよろしく頼む。」


ローブをまとった男性「私はヒロシ・ヨシダ。魔法に関する実演を行う。よろしく頼む。」


ショウジ「なあ、あれが剣聖様か?」


「ああ。・・なんで、ケイ兄がここにいるんだ?」


ワタナベ「ニノマエ君のお兄さんって格好いい人ね。」


「ああ。アルバイトかな?でも、災厄手当が国から出ているはずだが・・。」


コバヤシ「・・・・・・。ニノマエ君、結婚しよ?」


コバヤシは彼の様子をじっとりと観察した後、本気か冗談かわからない発言をする。


「ああ。ユリ姉にプレゼントでも用意するつもりなのだろうか?」


コバヤシ「良し♪」


ワタナベ「モモコ!!!」


コバヤシ「冗談、冗談。」


「ああ。なんかの記念日だったか?」


ショウジ「ニノマエ、そろそろ現実に戻ってこい。」


そんな彼をヒデアキは一瞬無表情で見た後、声をかける。


「ああ。」


先生「わざわざ外部から来てくださっている。私語は控える様に。」


ヒロシ「魔法に関しては加護の有無で使用可否が決まってしまうので、この講義では魔法の実演に留める。私の授業は今日一日だけだな。物理攻撃に関しては加護関係なしに武器は扱えるので次回以降はケイゴ殿が指導することになる。」


ケイゴ「今日は出席番号が奇数の者は俺が近接武器のスキルを実演するのでそれの見学、偶数の者は最初にヒロシ殿の魔法の見学となる。後半は逆だな。」


「俺達は最初は魔法か。」


ヒデアキとワタナベは頷く。


ヒロシ「戦闘用の魔法には土、火、水、木、光、闇の六属性がある。そのうち私は土、火、水が使える。木と光と闇は回復であったり補助的な効果をもたらすものだが、それらについては受ける側としては特に何かすることはない。」


「今日やらない属性については要はじっとしていれば良いわけか。」


ヒロシ「まあ、論より実物を見た方が理解が早いだろう。」


生徒たちはそわそわしている。


ヒロシ「今日の講義は安全性を考慮して最下級のエト級だけで行う。まずは土属性の石壁から実演しよう。」


ヒロシ「シュトンムレート」


ヒロシ先生が魔法名を唱えると身体が黄色く光り、その次の瞬間に


ドコ!!


という音とともに少し離れた地面が一部せりあがった。成人男性の半分くらいの高さまでせりあがっている。上から見た時の面積としては手のひらサイズぐらいだろうか。


「あれがもし下腹部にヒットしたら痛そうだな。」


ショウジ「おい、やめろ。変な想像してしまったじゃないか。」


ヒロシ「この魔法を受ける側の対策としては詠唱の間にその場から移動することだろうな。この対策方法は大抵の攻撃魔法に有用だ。」


「先生、質問よろしいでしょうか?」


ヒロシ「む?なんだい?」


「シュトムレートは誰が唱えても今ぐらいの大きさなのでしょうか?どのくらい逃げればよいかが変わることはありますか?」


ヒロシ「良い質問だ。実は詠唱者の力量によってサイズが変わる。いわゆる一般的な魔法使いならば人により微妙に差異はあるがおおよそ今のぐらいだが、もし災厄が唱えれば巨大な壁となるだろう。尤も災厄はエト級なんかは使ってくれないだろうがね。」


「初見の相手の場合は大袈裟にかわしたほうがよさそうだな。」


ヒロシ「さて、次にもう一つの土属性である重力魔法を唱えよう。少し待っててくれ。」


そういうとヒロシ先生は懐から竹を斬った物を取り出し地面に複数横に寝かすように置いた。それらに節の部分はなく中空の円筒状のような形状をしている。


ヒロシ「何もないところに唱えてもわからないと思うので的を用意した。」


「グラヴィテート」


先ほどと同様にヒロシ先生は黄色く光り、次の瞬間


パン!!


と音を立てて竹がつぶれた。ただつぶれたのは中心の1個だけで他の竹は無事である。


ヒロシ「このように上から下に力がかかり押しつぶされるが、エト級の場合はごく狭い範囲しか効果がない。」


「もし、女子の乗った体重計にかけたら火刑に処されそうな魔法だな。」


ショウジ「どうでもいいけど女子ってなんで体重の値を気にするんだろうな?見た目の方が重要だろうにな。」


「それで思い出したけど、筋肉質だと見た目に対して重いらしいな。」


ワタナベ「他の女子に自虐を装いながらマウントをとるためよ。」


ふいにワタナベが無機質な声で割り込んできた。


「え?」


この後も同様にヒロシ先生による魔法の実演は続いた。


火属性魔法ファイレートは火の玉をまっすぐ飛ばす魔法。

火属性魔法トンドレートは小さな雷を落とす魔法。

水属性魔法リヴェレートは水の玉をまっすぐ飛ばす魔法。

水属性魔法グラツィエートは氷の玉をまっすぐ飛ばす魔法・・らしい。教科書通りである。


ヒロシ「こんな感じだ。ファイレートやリヴェレート、グラツィエートは料理に使われることも多いね。」


「使えたら便利だろうな。」


ヒロシ「そろそろ交代の時間だけど何か質問あるかい?」


彼は周囲を見回す。誰も手を挙げていないようだ。


「4つよろしいでしょうか?」


ヒロシ「さっき質問してくれた子だね。何かな?」


「無印級やグランダ級及びグランデガ級は単に規模や威力が大きくなるという認識で良いのでしょうか?」


ヒロシ「概ねその認識で間違いないが、それに加えて発動までの時間が長くなる。」


「魔法の場合もスキルと同様に体力が特別減ったりすることはないのでしょうか?」


ヒロシ「体力的にはそうだ。ただ、使うたびに脳が疲れるというか集中力が下がっていき、やがて撃てなくなるというのはある。強い魔法の方がそうなるのが早いというのが実体験だ。」


「ありがとうございました。もう一つの質問は災厄は魔法をいちいち口に出さないというか口にできないと思うのですがどうやって判断すれば良いのでしょうか?」


ヒロシ「君は兵士希望かな?いい質問だ。確かに君の言う通り災厄は人語を話さない。魔法発動前に分るのは詠唱光による属性だけだ。先ほど実演した通り各属性には魔法が2種類あるが、どちらになるかは発動の瞬間まで知るすべはない。」


「む?」


ヒロシ「先ほど魔法を唱えられたら取り合えずその場から移動しろと言ったのはそうすればとりあえずは躱せるからだ。とりわけ火属性魔法には火の玉と雷という全く性質の違う魔法があるから要注意だね。」


「なるほど。ありがとうございました。最後の質問は魔法というのは決まり切った事しかできないのでしょうか?例えばファイレートで空に火の玉による絵を描くとか出来ないのでしょうか?」


ヒロシ「ハッハッハッ。君は変わったことを思いつくな。可能ではあるが酷く集中力を使う。グランダファイロを日に何十発も使える熟練の魔法使いでも、君が言ったようなファイレートは一日に数回使うのがせいぜいだろう。神が定めた魔法を少しでも変化させると極端に集中力を使う事になる。」


「魔法とは不思議ですね。ともかくありがとうございました。」


ヒロシ「ふむ。他に質問がないのならケイゴ殿と交代だね。」

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