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103<褒美>

前回のあらすじ

彼はシンディに何かを期待していたらしい。

彼は入口で最敬礼をとる。


金髪の美丈夫「コホン。楽にしてくれ。私はマルティン・ユベラージョイ・セレスタ。この国の王である。最初に言っておくが、細かい儀礼もいらないし、直答も許可する。」


「ご配慮痛み入ります。」


マルティン「先ずは・・素顔を見せて貰ってもよいだろうか?」


彼は紐を外し、左手に仮面を持ちそのまま外す。幾つか息を吸うような音がした。


マルティン「其方は貴族出身か?」


「よくご存知でしょうに。唯の孤児ですよ。」


マルティン「其方の容姿ならば貴族に迎えられても不思議じゃないな。」


「お褒めに預かり光栄です。」


マルティン「あまり関心がなさそうだな。」


「歳を取れば皆一緒ですから。」


マルティン「違いない。私も今はこんなんだが、若い頃はオナゴにモテてな、王妃に毎日頬を抓られたものだ。」


セドリック「陛下。」


マルティン「おお、スマンスマン。あと、志願の理由が宿題だとか聞いたが、詳しく聞いてもよいか?」


セドリックはいつの間にか陛下の横についている。


「説明が難しいですが、一言でいうならば、今の人類にとって最も利となる行動をとる事とだけ。それ以上は答えられません。」


マルティン「そうであるか。其方が災厄を倒した暁には褒美を考えているのだが、欲しい物はあるか?」


「何も。」


マルティン「何もないのか?其方をこの国限定で人間扱いすることも・・。」


彼は無表情でマルティンを直視する。


「俺が欲しい物を用意する事は世界一の大国の国王陛下であったとしても難しいでしょう。」


マルティン「其方の欲しい物あるいはしたい事は一体なんだ?」


「死者との再会です。」


マルティン「死者?其方には親しい存在は・・・・。」


「出来ないことを話すのは止しましょう。時間の無駄です。ともかく俺を最前線に送ってほしいのです。先払いになるのかもしれませんが、それが報酬です。」


マルティン「其方は本当に魔物なのか?」


「さあ、どうでしょう?俺が生きている限りはそれを証明できないと考えています。俺の死体が魔石になれば魔物ですし、腐ったら人間だったということでしょう。」


マルティン「・・・・。」




「逆に伺いたいですが、国王陛下はご自身が人間であることをこの場で証明できますか?」




彼の言葉は特別な意図はなく文字通りただの疑問を口にしたというような響きを持っていた。


マルティン「セドリックがその証拠である。そしてセドリックが人間であることは私が証拠となるだろう。」


「その論理でいうのならば、そちらにいらっしゃる兵士の方々もそれぞれその両親の存在が人間である証拠ということですね?」


マルティン「ああ。そうなるな。」


「・・・・・。約千年前。」


マルティン「む?」


「ケイゴ・ニノマエという人物が居ました。ご存じでしょうか?彼はハルモニーオ出身の剣聖です。」


マルティン「流石に名前はパッとは出ないが、ハルモニーオ出身の剣聖がいたというのは学生時代に暗記した記憶がある。」


「実は彼には血のつながった弟が居ました。」


マルティン「む?」


「その弟は兄と同様に極普通の夫婦から生まれ、寝坊助であり、少し思い込みが強く、思考が暴走し突拍子もないことを発想することもありますが、卵焼きと桜の花が好きな極普通の少年でした。」


マルティン「うん?それがどうかしたのか?」


「ここまでの説明で陛下はその弟は人間だと思いますか?」


マルティン「ああ。人間だと思うぞ。」


「そうですか。ですが彼は俺と同じ黒髪紅眼の容姿を持ち、加護がありませんでした。そして俺と同様に当時の異端審査官のユリ・アサノに背中から斬りかかられます。その後、弟は・・コホン、弟のその後は本題ではありませんね。忘れてください。ここまで聞いて陛下はその弟は人間だったと思いますか?」


マルティン「・・・・・それは・・・・。」


「そう。人間から生まれたとしてもそれが人間という証明にはならないのです。そもそも人に化ける魔物というのが存在するらしいですからね。」


マルティン「其方はその弟は人間だったと思うか?」


「加護なしが魔物というのならば彼は魔物だったのでしょう。人間に害をなす者が魔物というのならばやはり彼は魔物なのでしょう。何せ彼は追手を何人か実際に殺害していますからね。真相は誰にもわかりません。歴史書には彼の事なんてどこにも書いてありませんから。」


マルティン「其方は一体・・。まるで実際に体験してきたかのように言うのだな。」


「ハッハッハッハッ。俺は作り話が得意なんです。まあ、その辺は陛下のご子息やそこにいらっしゃる始原の加護持ちの方々はよくご存じだと思いますが。」


彼は作り物めいた笑顔でセドリックを眺める。王子さまは怪訝な顔をしている。


「少なくとも災厄を倒すまでは利害が一致しているんです。仲良くとは行かないでしょうが喧嘩せずに行きましょう。陛下、もしこれ以上聞きたいことがなければ準備をしたいのでお暇したいのですがよろしいでしょうか?」


マルティン「ああ。私の方から聞きたいことはもうない。この場はお開きとしよう。」


彼は最敬礼をした後、部屋から出て行った。


マルティン「セドリック、お前の報告の通りだな。実際に会ってみると普通の人間にしか見えん。」


セドリック「はい。」


マルティン「所であの目に気が付いたか?」


セドリック「どういう意味ですか?」


マルティン「あの者、声だけは最後笑ってはいたが、この部屋にいる間、一回も眼が笑っていなかった。あれは全く一欠けらも他人を信じていない眼だ。お前にはまだ任せたことはないが、スラムの視察に行けばアレ程ではないが、似たような負の視線を感じるだろう。」


セドリック「だとするならば彼はこちらの思惑も・・。」


マルティン「褒美を求めなかったということからも恐らく気が付いているだろう。それでも災厄に対峙する意思はあるのは幸いだな。セドリック、チャンスはあまりないが0ではない。必ず討伐を成功させるのだ。」


セドリック「御意。」



***「・・・・。」


とある森の中に人間の身長の3倍ぐらいの体高を持つ青い大狼が居た。そいつの周りは一面の銀世界となっている。


今、一匹のドラゴンがたまたまそれを発見した。


ドラゴン「!」


ドラゴンはその狼を大きな獲物とみなしたのかソレの目の前に着陸する。


静寂の世界にズシーンという大きな音が響く。


狼「・・・・。」


狼は先制攻撃をするつもりはないのか黙ってドラゴンを観察している。


ドラゴン「グオオオオ。」


狼の態度が気に入らなかったのかドラゴンは息を吸った後、狼に向かって炎のブレスを吐きだす。


ドラゴン「ガァ!!!」


巨大な火炎弾が狼に向かって風切り音を鳴らしながらすごい速度で飛んで行く。


狼は面倒くさそうにドラゴンの方に歩いていく。


そのまま火炎弾は狼に眉間に衝突し、爆炎と熱気を周囲に撒き散らしながら消滅した。


爆炎が晴れた後、狼は何事もなかったかのようにドラゴンに向かって歩みを進める。


ドラゴン「!?・・・グアァァァァ!!」


己の渾身の一撃が全く効かなかったドラゴンは恐怖を感じたのか悲鳴を上げながら飛び立ち逃げ出そうとする。


狼はそれを見ながら息を吸い込み・・・


ターン!


狼は人の体大の高速の氷弾をドラゴンに向けて放つ。


ドラゴン「!!!・・・・。」


ズズーン!!!


その氷弾はドラゴンの体を貫通、破壊し、彼方へ飛んでいった。


打ちぬかれたドラゴンは瞬く間に氷像になり、墜落の際の衝撃で粉々に砕けた。


狼は撃ち落としたドラゴンには目もくれず元いた場所にゆっくりと戻った。


「アオーン!!」


ふと何処からか同種の狼と思われる遠吠えが聞こえる。


それに呼応するようにその狼も鳴く。


「アオーン!!」


しばらくすると同じぐらいの大きさの狼が複数現れ、更に二周り大きい狼が現れた。


狼達はまるで何かを警戒するかのようにじっとセレスタの方向を見ている。


テルーオ歴6017年11月8日


「で?今回の災厄について何か分かっている事はあるのか?」


彼は今大きな馬車でニグラリベーロという川が多い国に向かっている。どうやらその国のとある森の中に災厄が発生したらしい。彼はあまりにも暇らしく楽しい話題を同行者に提供した。


セドリック「・・・・・・。」


モニカ「・・・・・・・・。」


リサ「・・・・・・・・・。」


パトリシア「・・・・・・。」


「ん?皆、どうした?暗い顔して?腹でも下したか?駄目だぞ、食べ物にはちゃんと火を通さなきゃ。」


パトリシア「なんで・・・。」


「ん?」

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