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102<夢の終わり>

前回のあらすじ

彼は気まぐれを起こした。

シンディ「あ・・・・・・紅眼・・・・・・。」


彼女の雰囲気が変わったことに彼は気が付いたようだ。


茶髪の女の子は一歩後ずさる。


「・・・・。」


彼は無表情で彼女を眺めている。


茶髪の女の子「黒髪紅眼・・・・・人に化ける魔物・・・・・。」


茶髪の女の子は更に一歩後ずさる。


「・・・・・。もうすぐ秋も終わりだ。夜は冷える。風邪をひかない内に布団に入ったほうが良い。では、さようであるならば。」


彼は彼女に背を向けそのまま自室に戻る。


茶髪の女の子「・・・・・・。」


彼はその後いつも通り日記を書いたが、更に其の後、水がめの中身を確認し指南書に何かを追記してから就寝した。



翌朝。


彼は目を覚ます。


「・・・・・。」


部屋の中を観察した後、雪月白桜を手に取る。


「・・・・・。」


彼は自室から出る。村は普段と異なりシーンと静まり返っていて己の足音だけが響き渡る。


「・・・・・。」


彼は王子の泊まっている宿に向かって歩を進める。その道中、一つも窓を開けている家がなく、いつもは何かしら準備しているシグルドの居酒屋も窓が閉まっている。どの家屋も留守というわけではなく、家屋の中からは人の気配はする。


「・・・・。まあ、前世よりはマシだな。」


やがて彼の視界には宿の前で何かを話している金髪王子と部下と思われる兵士が入ってくる。


セドリック「・・・・。」


「・・・・。俺の方の準備は出来ている、いつでも出発できるぞ。」


兵士が彼を警戒している。


「そう警戒しないでくれ。俺からは積極的に争う気はない。今も昔もな。」


セドリック「・・・・。」


「勇者様、どうやら約束というのは人間どうしでのみ成立するものらしい。」


セドリック「うん?」


「ただの魔物の独り言だ。さ、行こう。」


村の出口に向かうと何やら地面に光るものが転がっている。


「ん?」


彼はそれを拾い上げる。


「・・・・・・。ハッハッハッ、こいつはいい。どれ、兵士さん、これをあげるよ。」


一瞬の無表情の後、彼は陽気に笑ったような顔をしながらたまたま一番近くに居た兵士にソレを渡す。


**「ん?」


「なんと、ニグラ・ディアモントの指輪だ。魔物と行動を共にしなきゃならない可哀想な貴方への神様からのボーナスさ。質屋にでも持っていくと良い。もしそこが良心的な質屋ならば250銀貨ぐらいで引き取ってくれるだろう。」


セドリック「なんでこんな所にそんな物が落ちているんだ。」


「勇者さま、世の中にはお金よりも大切な物があるみたいだぞ。クックックッ。」


彼は馬車に揺られセレスタに向かう。



そんな彼の後ろ姿を窓越しに観察している親子がいた。


ニヘル「行ったか?」


シンディ「うん。」


ニヘル「会話は一部しか聞こえなかったが、王子殿下・・・いや勇者様の警戒した様子を見るにお前の言うことは正しかったみたいだな。」


シンディ「うん。」


ニヘル「引き返せるところで止まれて良かったな。」


シンディ「うん。」


エレーヌ「今日は何もせずにゆっくり過ごしなさい。シンディ。」


シンディ「うん。」


彼女は寝室に戻る。


シンディ「はあ。・・気持ち悪・・。」


シンディの右手の人差し指には赤い跡が付いている。


テルーオ歴6017年10月17日


「王城は相変わらずバカでかいな。ここに入るのは・・確か・・マニコ様事件以来だな。懐かしいな。」


彼はチラリと勇者を伺う。勇者様は少しバツの悪そうな顔をしている。


「今になって思うがあれは果たして変装する気があったのだろうか?俺の眼には唯の美しい可憐な女性にしか見えなかったのだが。あの時の彼女について勇者様の見解はどうだ?まるで白雪の妖精の様ではなかったか?」


セドリック「黙れ。お前と馴れ合う気はない。」


「そうかい。あの時、彼女に王子様は貴女と結婚したくないそうだと言ったとき手がピクリと強張ったけどあれは果たして本当に演技だったのだろうか?」


彼はニヤニヤしながら王子に問いかける。


セドリック「黙れと言っている。」


「知っているか?今の俺は何をしてもありとあらゆる刑は保留なんだ。いわば無敵の人・・いや、無敵の魔物か。王子様も災難だな。始原の加護持ちというだけで俺の様な性格の悪い人間もどきの魔物の監視役にさせられるのだから。ハッハッハッ。本当にかわいそうだ。ハッハッハッハッ。心から同情するよ。ハッハッハッ。」


セドリック「・・・・・。」


彼はいつになく饒舌であるが、そんな彼に対して勇者様は無視を決め込むことにしたようだ。


「で、ニグラリベーロに出たと聞いたが、大軍を派遣するのか?」


セドリック「いや、外国だからそうは行かない。最小限の兵士たちだけ随伴させる。もし戦力が不足するような場合は現地の兵力を借りることになる。」


「魔物からすれば災厄相手に政治がどうこう言っている場合かという考えがあるが、まあ、人間のお偉いさんは大変だねえ。」


セドリック「・・・・・。お前は何故、対災厄の兵士に志願した?」


「とある宿題をこなすためだ。」


セドリック「宿題?」


「俺にとっては命をかけるに値する宿題だ。」


勇者に連れられ彼は城内を歩く。


城内には何に使うかよくわからない壺や恐らく歴代の王族であろう肖像画などが並べられている。


「ん?」


彼はとある肖像画の前で足を止める。


セドリック「?」


「プルーナ・モナータ・ブランカネージョ・・・?」


そこには金髪の女性が描かれていた。絵の説明は殆どかすれているが絵の名と年号だけは残っていておよそ3000年前を示している。実は彼はプルーナという人名を知っているはずなのだが、忘れているようである。


「ブランカネージョの王族が何故飾られている?」


セドリック「その方は復興の祖サンドロ・ユベラージョイ・セレスタの妃となり、彼を献身的に支えた俺の祖先でもある方だ。」


彼はセドリックを見る。彼の視線は王子の髪の毛に向かっている様だ。


「なるほどな。この御姫様の名を無理やり現代語に訳せば梅・月・白雪か・・・・うん?」


セドリック「無駄話をしている場合ではないな。行くぞ。」


彼が何かに気が付きそうになったところでセドリックが思考に割り込んだ。


「ま、いいか。ところで俺たちはどこに向かっているんだ?訓練所ではないよな?」


セドリック「謁見の間だ。陛下が紅眼の死神に興味があるらしい。」


5分も歩くと金色の大きな手すりが付いた赤い大きな扉の前に辿り着いた。


「俺が言うのも何だが、危険だとは思わないのか?豪胆というかなんというか。まあ、俺としてはあの子への良い土産話になりそうだから良いんだけどな。」


セドリック「・・・・・。」


勇者は彼を無視し扉の両脇に居る兵士に合図をする。


二人の兵士により大きな扉は静かに開かれる。


扉の先には大きな空間が広がっていた。まず目につくのは床に引かれた赤い絨毯だ。それは部屋の入口から人間10人分ぐらいの幅をもって部屋の奥に続いている。


部屋の奥は少し高くなっており中央に豪華な椅子が2つその脇にややこぶりな椅子が幾つかある。部屋の両脇には大きなステンドガラスがあり、カラフルな光が部屋に降り注いでいる。


豪華な椅子には金髪の美丈夫が座っておりもう一つの豪華な椅子は空席、あとその周りの小ぶりの椅子には聖女を始めとする知り合い達が座っていた。


「いかにも謁見の間って感じだな。赤絨毯なんて始めて見たぞ。」


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