101<綺麗な思い出>
前回のあらすじ
別れの挨拶
村長さんは庭で盆栽を弄くっていた。
ニヘル「・・・あの新人には負けん。いかに盆栽の加護があるとはいえ・・ブツブツ・・。付け入るスキはあるはず・・ブツブツ・・・。今度の品評会ではこのアンディ11号が必ずや王者の地位を奪還し・・・ブツブツ・・・。」
「どうも。」
ニヘル「お、おう! ・・・コホン。ジョンか。シンディから聞いたが、ついに行くんだな。」
ニヘルは驚いたように彼の方を向いた。
「ええ。仲が良い人達とは既にお別れは済ませています。災厄と戦いに行くとは流石に言えませんでしたが、しばらく旅に出るとだけ。」
ニヘル「村の者には俺から上手く言っておく。」
「ありがとうございます。」
ニヘル「そうだ以前からジョンに聞きたいことがあった。」
「何でしょうか?」
ニヘル「シンディの事はどう思う?」
「ん〜、少し手のかかる妹みたいな感じですかね。年齢的にはほぼ同じですけど。」
ニヘル「・・・。そうか。シンディが後で話しをしたいそうだ。まあ・・俺はお前なら良いと思っている。」
「ん?」
ニヘル「今夜は見てみぬふりをすると言っているんだ。」
「よくわかりませんが、分かりました。」
ニヘル「あと、これはシンディから預かった護衛依頼の報酬だ。」
彼は9銀貨を受け取った。
「毎度あり。」
ニヘル「うむ。話は以上だ。」
「はい、失礼します。」
彼は立ち去り自室に戻る。
「村長さんが何を言いたいかイマイチ分からなかったが・・・。まあいい。恐らく今日が安全な場所で手記できる最後の機会だろう。今日はあれの仕上げいこう。」
彼はある冊子にメモを追記する。
「ルミオ神様によれば文字単位で消せるようだから、一般人にはただの雑学本に見え、俺の後輩には本当の意味がわかるように且つ矛盾が無いように・・・。」
部屋の中には彼が文字を書く音だけが響く。
「加護無しの人間が今後発生するか分からないが、まだ見ぬ後輩の最後の希望になればいいな。偶には本音をこっそりと書いておくか。後輩も笑いながら同意するだろう。ククク。さて肝心のタイトルは・・・。」
彼は最後にタイトルを記載した後に時計を見る。
「そろそろかな?今夜は流石に仮面は要らないな。」
彼が表に出るとシンディが切り株に腰掛け彼を待っていた。
シンディ「こんばんは、ジョン。」
「こんばんは、シンディ。いい夜だな。」
漆黒の夜空には大きな月が浮かび、辺りをぼんやりと照らしている。
シンディ「ええ。」
シンディは前髪を整えている。少し緊張しているようにも見える。
「そう言えば初めて会った時も君はそうやって髪の毛を触っていたな。懐かしい。」
シンディ「そうだったかしら?」
「もしかしたら俺の気のせいかもしれないが。」
シンディ「フフ。貴方には感謝を伝えたかったの。ジョン、ありがとう。」
「ん?」
シンディ「ほら、貴方には命を助けてもらったし、あとは・・まあ、いろいろよ。」
「そうか。どういたしまして、シンディ。」
シンディ「で、でね。その、ついでというか・・」
「うん?」
シンディ「お、お願いがあるの。」
「どうした?」
シンディ「スーハー、スーハー」
相当言いづらいことがあるようだ。
シンディ「ねえ、ジョン。」
「何だい?」
シンディ「思い出が欲しいの。」
「ん?それは言葉通りの意味じゃないよなあ。多分。」
シンディ「貴方、ここには帰ってくる気はないでしょ?」
「・・・・・。よく分かったね。」
シンディ「まともな考えなら災厄になんて自ら挑まないもの。」
「・・・・。そういえばそうだな。」
彼も少し遠い目をして答えた。
シンディは無言で抱きついた。彼女の体の柔らかい感触や体温が服を通して彼に伝わってくる。
シンディ「ねえ、だから、抱いて欲しいの。貴方が居たって証拠が私の中に欲しいの。」
シンディは少し服装を緩めながら上目遣いで彼を覗き込んでいる。真っ白な形の良い乳房の一部が上着の隙間から見えていてかなり煽情的な姿となっている。
シンディ「あの人達には及ばないけど私だってそれなりな見た目だと思うの。」
「・・・・・・・。」
シンディ「・・私じゃ、駄目?」
「もし、俺が普通の人間ならば君の気持ちに答えていただろう。今の君は素敵だからな。」
シンディ「ジョンは普通じゃないの?」
「ああ。所謂、人に言えない秘密というやつがある。」
シンディ「・・・それでも・・私は・・・・グス・・・グス・・。」
シンディは彼の胸に顔を押し当てる。
「もし、俺と男女の仲になれば君は一生悔やむことになるだろう。俺のことは出来れば綺麗な思い出の中にそっと入れておいて欲しいんだ。」
シンディ「ジョンの秘密ってなんなんなの・・?」
「それは言いたくないな。君とはサイゴまで友人のままでいたいからな。」
シンディ「駄目!!・・言ってくれるまで放さない。それで寝不足のまま出発すれば良いんだわ!!」
「俺にとってはこの村は良い思い出しかない場所だ。最後まで良い思い出のままというのは贅沢なお願いだろうか?」
彼は少し困ったような表情をしている。
シンディ「ねえ、絶対に教えてくれないの?」
シンディは顔をあげる。目が充血している。
「おやおや、せっかくの可愛いお顔が台無しだ。」
シンディ「もう、ジョンのせいでしょ!!さっさと教えてよ。」
「・・・・・。一つ約束して欲しい。」
シンディ「・・・何を?」
「俺の秘密を言いふらしても良いが、それは俺がこの村を去ってからにして欲しい。つまりあと半日だけ誰かに言うのを我慢して欲しいんだ。」
シンディ「・・・・。」
シンディは彼の真意を伺うように瞬きを繰り返す。
「繰り返しだけど俺はこの村に関しては良い思い出だけ覚えておきたいんだ。守ってくれるか?」
シンディ「・・・・分かった。」
彼はシンディを体から静かに引き剥がす。
「・・・・。」
彼はシンディに背を向け着色瞳水晶を外す。
シンディ「・・ジョン?」
「場合によっては君はトラウマを抱えるかもしれない。引き返すなら今が最後のタイミングだ。」
背を向けたまま彼はシンディに問う。
シンディ「・・・お願い教えて?」
彼は意を決して振り返えり、目を開く。
彼の瞳を見たシンディは・・・。
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