長靴をはいた猫~もしも、ハンスがホントに「カラバ侯爵」だったら~
もしも・・・
「長靴をはいた猫」のハンスが、正真正銘の「貴族」の末裔だったら?
猫を支援する謎の人がいたら?
そんなifを込めてみました。
昔々、ある国に・・・
粉挽きの三男が、いました。
ある晩のこと・・・
「うあ・・・
暑くて死ぬ・・・」
粉挽きの三男・・・
彼は、ハンス。
先祖は、かつて「カラバ領」という広大な領地を持っていた貴族でしたが、悪い魔法使いに領地を奪われ、粉挽きに没落していたのでした。
しかも、ハンスは・・・
父親が亡くなった際に、長男が製粉会社・・・
次男が工場を・・・
それぞれ継いだのです。
しかし、ハンスが継いだのは、一軒の小屋と子猫だけ・・・
「やってらんねーッ!」
ハンスは、エアコンの効いた部屋でパソコンを立ち上げます。
「ならば・・・
株で稼いでやる!」
象に踏まれても、ただでは起きない男でした。
「あいつが、散歩から帰ってくるまでに・・・
最高の「魔法の長靴」を買えるだけの金を!」
なんと!
ハンスは、それだけの金を稼ぎ出したです。
そして、もとから気になっていた通販サイトに、注文をいれたのでした。
夜・・・
「にゃ~お・・・」
ハンスの家のドアを、カリカリとやる音がします。
「マオ!
お帰り!」
「にゃッ!」
マオと呼ばれた猫は、猫耳の少女の姿になりました。
「ご主人様!
酒場で聞いてきたにゃ!」
マオは、まくしたてます。
「ご先祖の領地・・・
「カラバ領」・・・
ここが・・・
大変にゃ!」
どう大変なのかというと・・・
「ご先祖様を追い出した魔法使いが・・・
領内の人々をこき使って、私腹を肥やして・・・
さらに、月に一度・・・
生贄を出させて、領内の人々を苦しめているにゃ!」
「く・・・
でも、僕は何もできんぞ!」
その時だった。
「お困りにゃ?」
「「誰?」」
そこに、黒猫系の猫耳魔女がいました。
ハンスは、この魔女のことを伝説で聞いています。
「「カラバ侯爵」ハンス公・・・
確かに代金を承りましたにゃ。
魔法の長靴・・・
それに、魔剣バステトカリバー、猫騎士の服・・・
それと、「カラバの指輪」・・・
セットにしてお付けいたしますにゃ。」
魔女・・・
彼女は、伝説の魔女でした。
聞けば、伝染病を操るネズミの悪魔を退治したとか。
「なんで、僕の素性を!?」
「秘密にゃ。」
魔女は、指を立てるとしたり顔で言います。
「マオさん。
これから、狩りをして王様に獲物を届けるにゃ。
「カラバ侯爵からの贈り物」と付け加えること。
ハンス公は、とにかく下準備を。」
王宮・・・
「ほほお・・・
あのお取りつぶしになった「カラバ侯爵」からの貢ぎ物であるか。」
王様は、マオにお金とカードを手渡しました。
「大儀であった、マオよ。
このお金は、この獲物の代金。
そして・・・
このカードは「領主証明書」である。
よしなにな。」
「ははあッ!」
マオは、ばくばくする心臓を押さえ、帰路につく。
「これでよろしいかな?
アリナ姫に、ランスロットさん。」
「ありがとう。」
「恩にきます。
魔女どの。」
伝説の魔女・ミーニャは、姫とそれに仕える猫耳の騎士と話をしていました。
そして・・・
王様は・・・
アリナ姫と連れ立ち・・・
なんと、カラバ領に視察に出るという話に・・・
それをマオが聞き、ハンスに報告しました。
「げッ!」
ヤバい!
自分の準備ができていない!
「マオ!
すまん!
僕が、領内のカラバ館に到着するまで、王様を足止めしておいてくれ!」
ハンスは、それなりの服を着ると、「カラバの指輪」を手に急いでカラバ領に向かいました。
カラバ館には、魔族の魔法使いが、ふんぞり返っていました。
魔法使いは、さらってきた領民をクッキーにして食おうとしましたが・・・
「どりゃあああああッ!」
ハンスの放った魔法が、それを阻止しました。
「誰だ・・・
貴様は・・・?」
「カラバ侯爵家のハンスだ!
領民は・・・
領地は、返してもらうぞ!」
「お・・・
おおッ!
領主様の末裔が・・・」
「帰って来られた!」
捕らえられた領民たちは、喜びます。
そのころ・・・
「いい土地だな・・・」
エアコンがかかった馬車の窓から、外を見た王様が感想を述べられました。
よく見ると、魔法使いが放ったと思われるゴブリンやオークが、魔法の炎で焼かれた跡があります。
魔法使いの圧政から、ハンスが戦っている証拠です。
マオは、主人の奮闘に喜びましたが、王様がいいタイミングで到着しません。
「ここで、止めてから出発してください!
侯爵に繋ぎをつけますので!」
内心、マオは・・・
ハンスに助太刀したかったのです。
一方、ハンスは・・・
「ハンス様!
壁に飾ってある剣をお取りください!」
捕らえられた村娘に従って、ハンスは剣を手にします!
「こ・・・
これは・・・
領主の剣・・・
「カラバの剣」!」
魔法使いは、驚愕しました。
そのいいタイミングで・・・
マオが、飛び込んできました!
「マオ!」
しかし・・・
領民たちがむしろ驚いていました。
「お・・・
おお・・・!
その者・・・
領主の剣を手にして魔法を操り・・・
猫神の聖剣をもった猫の騎士を従者として現れ・・・
この領を救う・・・
このカラバ領に伝わる伝説・・・ッ!」
長老格が言いました。
「ついに成就するのね!」
村娘が興奮しています!
「だからどうしたッ!」
魔法使いは、魔法をぶっ放してきますが・・・
マオが、バステトカリバーで反射しました。
その魔法は、魔法使いに正確に戻り・・・
なんと・・・
巨大なネズミになってしまいました!
「どりゃあああああッ!」
その隙にハンスは、魔法使いを一刀のもとに斬り捨てました!
その後、王様とアリナ姫が到着。
「よい土地であるな。
カラバ侯爵よ。」
「ははッ!
お褒めにあずかり、光栄にございまする!」
がちがちに固まるハンス。
「先の貢ぎ物の褒美として・・・
アリナ姫との婚約権を与えよう。」
「ありがたき幸せ!」
と・・・
取り繕ったところで・・・
なんと、王様は一人で帰られてしまったのです。
「はあ・・・
領地は取り戻したけど・・・
とんでもないことに・・・」
昼間とうって変わって、涼しい夜風にあたりながら、ハンスはこれからやることの多さにへたりこんでいました。
「そうでもないですよ。」
そこにいたのは、アリナ姫その人でした。
「粉屋時代のあなたも、まじめに働いていました。」
そこで、姫に控えていた猫の騎士ランスロットが、付け加えます。
「姫様は、お忍びで城下を時々見ておられたのです。
そして、そのお眼鏡にかなったのが、ハンス公だったのですよ。」
アリナ姫は、ハンスにそっとキスをしました。
さらに・・・
「あなたこそ・・・
ハンス公の猫のマオ殿が好きなくせに。」
「「にゃッ!?」」
こうして・・・
夏の英雄譚を終わります。
猫の魔女ミーニャは、この顛末を見守ると・・・
ほうきに乗って、どこかへ飛び去っていきました・・・