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【完結】異世界から帰還したら、パーティーメンバーの女騎士(ポン)が付いてきた。いや何してんの?  作者: 環月紅人
第七話 女騎士に会いに来た

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Chapter.35 胸のうち

 ――水瀬を悪く言いたいわけでもないし、この話は自分の惨めなところが表れるのであまり触れたくないのだが、確かに俺は過去水瀬に告白し、返答を貰えないまま今日まで来ている部分がある。


 そのはじまりは高二の春。

 クラス替えの時期に水瀬と知り合った。


 水瀬は昔から華があって、男子たちによくモテる。かくいう俺も当時はその一人で、よく目で追ってしまっていたし、純粋に、好意を寄せていた。


 仲良くなるのは簡単で、だけど踏み込むことは難しい。親密とは言えないけど疎遠と言うほどにも離れない。機会があれば普通に喋るし暇だったら軽く遊ぶこともある。仲の良いただのクラスメイト。

 それが俺たちの距離感で。


 告白したのは、いつだったか。

 俺の一世一代の告白。こんなにも人に惹かれることもなかったから、俺が一番勇気を出した頃じゃないか?


 言葉を言い切った、その瞬間で、災難なことに邪魔が入って。


 教師による呼び出しだったので、水瀬は急いでそっちに向かってしまって。

 これがまず一つ目の惨めポイントだ。


 それでも期待していた俺は、明日返事が貰えるんじゃないかと思って、待っていた。その翌日、顔を合わせた水瀬に何事もなかったかのように普段通り接されてしまって、落胆する。これが二つ目の惨めポイント。


 事実上、振られたんだと思った。改めて切り出さないのは水瀬の優しさで、それでもなお友人でいてくれるのは水瀬の恩情だと思ったのだ。


 それからしばらくして、彼女が誰々と付き合っている、というのを噂話で耳にした。

 その成否は分からなかったけど、不思議と落ち込むことはなかった。まあ当然だろうとも思ったし、これを機に悩むのをやめようと、一人前に失恋を乗り越えた。


 恋人の出来た水瀬に男友達がいるのは悪いだろと思って、自分から距離も取るようになって。そうやってだんだんフェードアウトするつもりだった。


 何度も言うけど、俺には水瀬が分からない。

 だからその真意も分からないが……。


 一、二ヶ月くらいが経つと、そんな噂や雰囲気もパタリと止んで、いつの間にか水瀬はフリーになったようだった。そうなると人の気も知らないで、水瀬は俺に話しかけてくるようになり、度々、近付いたり離れたりっていう、そんな距離感を繰り返したこともある。

 水瀬は長続きしないタイプらしくて。


 だから俺も、いつかはと、期待しちゃうところがあった。上京などしない場合、県内で大学っていうと場所も限られたりはして、水瀬も同じ場所に行くんだ、と知った時は運命のようにも勘違いした。


 だから俺は卒業が近づいた頃にこの話を蒸し返してしまった。これが最後の惨めポイント。

 ……まあ、水瀬は本当に忘れていたみたいだが。


 別に返事を求めたわけじゃない。「告白したこと覚えてるか?」と後ろめたくも尋ねて、「え? そうだっけ?」とそっけなく言われて、俺が絶句して「忘れてくれ」と言った。ただそれだけのやり取りなんだけど。


 以来、俺は、恋愛感情は持つもんじゃない、というのを強く思っている。

 どうせ後悔することしか起こらないからだ。


 その話さえ切り出さなければ。


 水瀬にそんな感情を持たなければ。


 仮に、秘めることが出来ていれば。


 もう少しまともな友人でいられたかもしれないのに、何も良い結果にはならない。あるいは邪魔が入らずに、素直に玉砕出来ていればどれほど良かったか。


 なんにせよ、いまになって水瀬にそう話を振られたとき――、セシリアの笑顔が思い浮かんだ時点で、自分の気持ちがどこにあるのかを気付けた。

 はじめて、ちゃんと自覚した。


「ごめん。無理だ」

「……へえ? わたしのこと、嫌いになっちゃった?」


 そう聞かれると、嫌いと突っぱねられるほど俺は強い人間じゃないが。


「俺だって、ずっと待つことは出来ない」


 水瀬にはもう囚われたくない。

 俺は、今日、けじめを付ける。


「……………それって、なんか、ひどいね」


 声を落とした水瀬にそう言われ、ズキリ、と胸が痛む。でも、それはきっとその通りなのだ。

 冒頭にも言ったが水瀬を悪く言うつもりはなくて、告白だって邪魔が入ったから。忘れていたのだって悪気があったわけじゃないだろう。

 そこを詰めるつもりはないし、どうせ、水瀬の考えていることは俺には一生分からない。

 たぶん、俺たちは分かり合えない。


「あはは、まさか振られちゃうなんて思わなかったなあ」


 水瀬が俺からはじめて視線を外す。一方的に告白して来た相手に時間を開けて答えたら断ってくるなんて、こんなにひどい話もないはずだ。いままで友人関係でもあっただけに、誠意の欠片もない態度だと思う。


「タクヤくんはわたしのことずっと好きでいてくれてると思ってたから。焦っちゃって、変なことしちゃった」

「……………」


 まあ、俺は俺で水瀬の態度に不満を持ってしまっていたから、その言葉には何も返さない。返せない。

 その資格がない。


「俺はもう行くよ」

「はいはい」


 お代を置くと、投げやりな態度で見送られる。いまはお互い一人の時間が必要だった。


 水瀬とはもう関わることもないだろうか。どうなるか分からないけど、変化は必ず起こるはず。


 ……………。


 セシリアには。

 俺は、どうするべきなんだろう。

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