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31.エリックとシャルル

「これにて一件落着、かあ」


 エリックは、滞在中間借りしている自室の中でぐっと背伸びをした。


「シャルル。僕を信じてくれてありがとう」

「お前は意外と冗談は言わないやつだからな」

「あはは、そうかなあ」


「でも、どうしてわざわざソニアにちょっかい出すフリをしたんだ?」

「うん? いやあ、だって、ソニアさん美人だし、『聖女』だし、ワンチャンあるならいいな、くらいだよ~」

「本気で無くてもあまりそういう類いの言葉を妻には言われたくないものだが……」

「ふふ」


 エリックはクスクスと笑う。シャルルはそれを少し冷たい眼差しで静かに眺めた。


「お前が本当に気にしているのは俺のほうだろ」


 エリックは一瞬真顔になり、それからへらへらといつも笑みを浮かべた。


「バレたか」

「最初からわかってる。ソニアのことが本当に気になってちょっかい出そうとしていたんじゃなくて、俺の反応が見たくてそうしていたんだろう」

「はあ、『期待の王弟様』には敵わないなあ」

「エリック。たびたび俺をそうやって呼ぶけど、俺はちっとも期待なんかされていなかったってば」


 エリックは金色の瞳を眇める。


「三男坊よりマシだろ。王の地位を期待されていなかったとしても、お前は間違いなく、優秀な『弟』として評価されてた。僕はさ……」


 ふっと、エリックは俯く。


「……王の弟って立場は一緒なのに、どうしてこうも違うかね。僕にはお前が『弟』ということを誇りに思って、王のために良くあろうとしていたことが理解できなかった。どうしてこんなにコイツは割り切れるんだろう、って」

「俺はそういうこと考えたことがないからわからないけど……」

「はー。いいよな、僕もブラコンに生まれたかったよ」


 シャルルはきょとんと目を丸くする。


「ブラコン?」

「無自覚かよ、まあ、お前はそういうヤツだよな」


 エリックは深いため息をついて、大げさに頭を振った。


「……僕は、君のことが友達だと思う以上に羨ましい。いっそ、妬ましいくらいに」

「そうか。エリック、君のお兄さん二人も素晴らしい人物だと思うが」

「兄の話はしてないってば、ほんとブラコンだな」


 エリックは眉をしかめる。


「わざととぼけてるんだか知らないけど。……それなら、僕だって、ホントのことは言わないよ」

「うん? そうなのか?」


 シャルルが首を傾げると、エリックはますます顔を歪めた。


「……その、なんでもわかってそうなのがムカつく」

「別になんでもわかってるとか、そういうのじゃないよ。むしろ、わからないことがあってもそれが当たり前なんだと思ってるだけで」

「だから! そういう超常的な感じがムカつくんだってば。ああもう、お前、人生二週目とかだろう」

「……? いや、俺はまだまだ未熟だと……」

「あーあーもう、だから、いいってば、ソニアさんにはもうちょっかい出さない、僕は君にちょっといやがらせしたかっただけ、はいこれでおしまい!」


 エリックはシャルルに背を向けて、わーわーと喚きながら耳を塞いだ。

 シャルルはまだ怪訝な顔をしていたが、エリックの様子からこれ以上何かを言うことは諦めたようだった。


「じゃあ、俺はもう行くよ。今回のことでお礼を言いたかっただけだから」

「はいはい。真面目だなあ、別にそういうのいいのに」

「エリックって、お礼を言われるの苦手だよな」

「だからそういうのいいんだってば」


 シャルルは少し苦笑しながらドアノブを回した。


「一応、いっとくんだけどさ」

「うん?」


 エリックの小さな声に、シャルルは振り向く。エリックは少しだけ真面目な顔をしてシャルルを見上げていた。


「――ソニアさん、多分めちゃくちゃお前のこと好きだよ。一回も僕のこと、まともに相手しなかったもん」

「……お前も本気じゃなかったからだろ」

「いやあ、本命がいなければいいトコ行ってた自信あるんだけどなあ」


 ケラケラとエリックは軽く笑った。


「ソニアはお前のような男はタイプじゃないと思う」

「シャルルってかなりバッサリ言うよね」


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