18.ウロボスお悩み相談所
ソニアには、アイラのようにこんなざっくばらんで思い切ったことを言って人とコミュニケーションを取ることはできない。これはアイラが生まれ持った対人スキルなのだろうとソニアは思う。こんな風に砕けたやりとりに憧れないと言えば、嘘になった。
「……やっぱり、私もアイラみたいに……」
「だから、やめとけって。アンタはべつに今のままでいいだろ」
「おじいちゃんはお姉様のことをよく知らないから。ずっと一緒にいるといい加減にしなさいよってこと多いわよ」
「ご、ごめんなさい……」
「……まあ、あたしはもうお姉様とは別れたわけだし? いいんだけど」
アイラは目を少し細めながらまたバリッといい音を立ててビスケットを噛んだ。それから様子を窺うようにチラチラと横目で見られてソニアは首を傾げる。
(……言われていることは同じでも、なんとなく、いままでと雰囲気が違う気が……?)
不思議に思うが、聞くにも聞けずソニアはアイラが咀嚼する姿をただ眺めた。
「――あれ、どうしたんだ、みんなここに集まって」
「お前まで来たのかよ」
よく通る低い声、シャルルだ。
「ウロボスにちょっと相談ごとがあったんだけど……改めたほうがいいかな」
「あっ、え、ええと、私たちのは終わったのでウロボスさんさえよければ……」
「ああ? 何言ってんだ、いいわけねえだろ」
「す、すみません」
じろ、とウロボスに睨まれてソニアは小さくなる。アイラは変わらず、ボリボリとビスケットを齧っていた。
「……もう子守は終わったと思ったのによぉ……」
はー、とウロボスは目頭を押さえて俯く。
「揃いも揃って孫ヅラして集まってくんじゃねえ!」
「ひいっ、すみません!」
怒鳴り声に反射的にソニアはびくっとなりながら謝る。しかし、アイラとシャルルはケロッとして聞き流しているようだった。
ウロボスに拒絶されたにも関わらず、シャルルもまたちゃっかりと家の中に上がり込んで、ソニアの隣に座り、アイラが食べていたビスケットの皿に手を伸ばしていた。
(……豪胆さはわりと、アイラとシャルル様は似ているのかもしれない……)
シャルルはそしてビスケットを齧りながら、ウロボスを見上げた。
「ウロボスには不思議な求心力があるんだよな、さすがは集落の長だ」
「やめろ、今はお前が領主サマだろ。お前に言われたかねーよ」
もしかしたら、シャルルは単にウロボスと少し話をしたくてここに来たのかもしれないなとソニアは思った。
本当に相談事があるのだとしたら、きっと、この辺境領復興のためのことだったのだろうが。
ソニアの思い違いでなければ、ウロボスは口でこそ「帰れ」とは言うものの、拒絶はしていない。口が悪くとも、彼の言葉からは冷たさは感じない。シャルルのいう通り、『長』としての品格や素養ゆえか。
(……私はいつも、人の顔色を気にして、とにかく下手に出ることばかり考えて、本当は私は他人のことなんて、ちゃんと考えられていないのかもしれない)
ノヴァがソニアをシャルルの妻としてはふさわしくないと思うのも、ソニアが気に入らないと感じるのも、それが理由だろう。
(もう少し私は、自分のことばかりじゃなくて、周りのことを考えられるように頑張りましょう!)
居心地の良いウロボス宅で、ソニアはそう気合を入れた。
実はちょっとくらい前からAmazonなどの予約ページが開通してたのですが、2巻が電子配信で出る予定になっています!5/10に!
WEB版を元に全体的に加筆改稿と限定番外編がある感じです。
そんなわけで実はWEB版はすでに書き終えてるのですが、週一更新だと発売日までに全部公開しきれなさそうなので、おそらくどこかで毎日更新のペースになるかなと思います。
まだ1話ごとに区切る作業が終わっていないので私もそれがいつになるのかわからないのですがそろそろやろうと思っているので、月末くらいには………………







