2 IFルート
誰も幸せにならない。 そのはずでした。
2年ぶりに私や両親、イーサンたちは王宮へ呼ばれた。
「本日、婚約は白紙になる運びとなりました。最後にお二人には少しばかりですが時間をとの王命です。10分程度になるかと思いますが、我々も席を外します。お二人には本当に申し訳のないことをいたしました。」
王家から派遣されていた文官と衛兵は部屋を出、最初で最後の2人きりの時間となった。
「ルーナ。僕の気持ちはずっと「なりません。イーサン、いえマクレガー様。私への想いなどどうか捨ておいてくださいませ。姫君をどうか幸せにしてください。私はもう疲れてしまったのです。もう、婚約者でもなくなります。どうか名前で呼ぶのは今日限りとしてくださいませ。長い間ありがとうございました。どうかお幸せに。」
その場を去ろうとした私の腕をイーサンが掴む。
「待って!ルーナ。」
そういって強く抱きしめられた。
「イー…マクレガー様!なりません!」
「ねえルーナ。本当はほかの人と幸せになってほしいなんてそんなこと思っていないでしょ?何年一緒にいたと思ってるんだ。僕はルーナを思わなかった日は一日だってない。」
「…でも!どうしようもないじゃない!耐えられないの。どんなに私がイーサンを好きでも王命には逆らえないじゃない!」
「…うれしい。ごめんね。ルーナにばかり嫌な思いをさせて。でもルーナもそういってくれるなら、その王命が覆るような出来事があればいいんだね?大丈夫。僕に考えがあるんだ。」
__コンコン。
「失礼いたします。お時間です。申し訳ございませんが謁見の間で王がお待ちです。」
「わかりました。__いこう、ルーナ。大丈夫だから。」
___
「イーサン・マクレガー、ルーナ・ハイナー。君たちには本当に申し訳ないことをした。」
「発言をよろしいでしょうか。」
「許そう。」
「姫君と婚約の話ですが、なかったことにはなりませんか。」
「「っ…!」」
謁見の間に緊張が走る。
「ほう?理由を聞こうではないか。」
「はい。かの国の姫君ですが、妙な噂を耳にしました。姫には恋仲の騎士がいると。王もご存じではありませんか?かの国では公然の秘密とされているようですが。」
「…確かにそのような話は聞くが、あくまでも噂。事実ではあるまい。」
「そうでしょうか?父上、例の者をこちらへ呼んでいただけませんか。」
そういうとイーサンの後ろにはどこからともなく影が現れた。
影が持っていた書類の束を王へ渡すと、王は顔色を変えた。
「…これは。よくここまでの物を用意したな。しかし我が国も舐められたものよ。よかろう。ここからは私の預かりとする。沙汰は追って通達する。今日はこれまでとする。」
「「「御意に。」」」
___
婚約を解消される予定だった今日、なぜか婚約は解消されず私とイーサンは同じ馬車でマクレガー領へ向かうこととなった。
「あの時、何を渡したの?」
何とも悪い顔で笑うイーサンはこう答えた。
「かの姫君と騎士の情事をね、影に記録に収めさせたのさ。」
聞けば、姫は婚姻も結んでいない相手と未成年にも拘らず人目を厭わず婚前交渉をしていたそうだ。
かの国では未婚の女性であってもあまりとがめられることはなく、むしろ子を生せる体なのかを知るためにも推奨されてさえいるそうだ。
対する我が国は、初夜を迎えるその日までは初心であることが前提とされている。
隣国内の婚姻であればとがめられることはなくとも、わが国では十分に婚約破棄の理由になりうる。
他国の王族といえど、嫁いでくるのであればこの国のルールに従うのが常となる。
「そんな…イーサンはいつからそのことを?」
「この一年ほどかな。本当はね、僕もはじめのうちは王命だからってあきらめていたんだ。でもどうしてもルーナじゃないとダメだと思って、父上に影を借りていたんだ。これから領に戻ったら、ルーナの両親にも詳しい内容を説明するつもり。」
「そうだったの…。ごめんなさい私何もできずに。」
「いいんだ。知らなかったんだ仕方ないよ。」
それから1か月王家から沙汰が届いた。
姫君との婚約の話は白紙とし、イーサンとの婚約は続行される。と。
「ルーナ、もう一度君に求婚させてほしい。これから先なにがあっても僕の気持ちは変わらない。ずっと大事にする。僕の妻になってくれませんか?」
「えぇ!もちろんよ!私もずっとイーサンのことを愛してるわ!」
王が隣国に渡っていた1か月の間に隣国とどのようなやりとりがあったのか私は知らない。
だけれど、最後だと思っていたあの日、すべての運命は変わったのかもしれない。
補足:ルーナとイーサンの二人共が素直に想いを伝えていたことで、二人は無事に結ばれます。
1の時点でも、イーサンは姫の不貞を知っています。ですが、ルーナをこれ以上気付つけたくない、もう心が離れてしまったのかもしれない。と思ったので引き留めることはしませんでした。
王が噂の真相を知らなかったのは、あくまでも自分の子供の婚姻ではなかったからです。
申し訳ないという気持ちはあるものの、王として戦争や争いを避けるために必要な手段だと思っていました。
特に本文中には爵位を書きませんでしたが、イーサンは侯爵家、ルーナは伯爵家くらいの想定で書いています。そのため、1でイーサンは姫との婚姻が結べたという設定です。