File4 潜む闇2
この作品はフィクションであり、実際の人物・団体・事件とは関係ありません。
始まりは瑛子の浮気調査からだった、純一が最近何やらこそこそしているようで当初は浮気が疑われていたがそれは瑛子へのサプライズによるものだと思われた。
しかし数日後に純一は殺されてしまった。あまりに突然の事に瑛子は大きなショックを受け、瑛子に付き添って正は純一の遺体と対面。瑛子の深い悲しみ、突然奪われた純一の生命。自分の調査に責任があると感じ、正はこの事件を調査する事にした…。
星見家の純一の自室、そこにあるパソコンを調べ情報を伝えようと正はスマホで連絡をする。その相手は……。
「おお、神王君!何か進展はあったかな?」
電話越しに聞こえる男の声は馴染みの刑事である白石大樹。彼に報告と同時にこの情報が今回と関係があるのか確かめてみる目的で電話をしたのだ。
「白石さん、俺は今星見家に来ていて純一さんのパソコンを調べた。そこに何かヤバい事をしてる芸能人達に関する記事が出て来た…」
「芸能人…ふむ、一人一人名前を言ってみてくれ」
「ああ、まず……」
正はパソコンの記事にある芸能人達の名前を読み上げて白石へと伝えた。
「……その人物達は今回とはおそらく無関係だな」
「無関係?」
一通り芸能人の名を伝え終えた正は白石から少し時間をくれと言われ、一旦電話を切った。やがて白石の方から連絡が来て正は再び電話を取る。そこで聞いたのはその芸能人達が今回の事件とは無関係であるという事だ。
何故だと正は訪ねようとすると…。
「調べてみたが問題を起こした芸能人達は刑務所で服役中、または既に死亡していた。その純一に恨みを抱いていたとしても何も出来ないだろう」
記事にある芸能人達はいずれも動きようが無い、彼ら自身では何も出来ない状態なのだと白石は語る。
「本人自身には無理でも関係者が純一を、という可能性はあるだろ」
正としては本人には無理でもその関係者が純一を殺害した可能性はあるかもしれないと考えていた、破滅した本人よりもその周りに居た者が強い恨みを持って純一へと迫り生命を奪った。その人物によって何らかの得をしており、それが純一のせいで断ち切られたと考えるなら凶行へと走ると。
正は近くに瑛子が居るので純一に対して家にまで来て怒鳴り込んだ相手とかいないか尋ねる。
「いえ…そんな相手はいなかったと思う。純一が一人で行動していた時はどうなのか分からないけど私が見た限りでは…」
「そうか…」
瑛子の知る限りだと純一に恨みがありそうな人物が近づいて来たという事は無かった。純一が個人的に会っている人物で居るかもしれないが本人は既に死んでおり聞く事は不可能。
「白石さん、妻の瑛子はそういった人物を見ていないそうだ」
「分かった。こっちは低い可能性とはいえ調べてみなければならない。芸能人達の関係者を」
少しでも可能性があるのなら調べるべきと白石は考え、此処は正が調べるよりも警察の組織力を頼った方が早いだろう。
「俺は家の方を調べたらマジリアルの方に行ってみようと思う」
「うむ、純一の職場か…もしかしたら何か知っている者が居るかもしれないからな」
正と白石の会話は此処で終わり正は電話を切ってスマホを仕舞うと再び純一の自室調査へと戻る。パソコンの方は今白石へと伝えた芸能人の事以外は特に載ってはいない。とりあえずパソコンで得られる情報はこんな所かと判断し、正はその前から離れた。後は本棚にある本、改めて見れば様々なジャンルの本があり純一がこれを全部読んでいる事を思うと彼は余程の勉強家、または読書好きかと思わせる。
正の探偵事務所にもある程度の本は置いてあるが全部読んだかと言われれば答えはNOだ。そこまで勉強家でも読書好きでもない、本を読むよりもスマホを見る時間の方が圧倒的に多く、最近は明や涼とゲームをやる時間も増えてきている。
一応本の方をざっと見て行くが、共通している事と言えば人気男性アイドル歌手が度々登場するぐらいだ。確か涼が好きだという芸能人だったなと正は純一達と昼食を共にした日の事を思い出す。
あれが純一との最初で最後の会話だった、あの時点で最後になるとは誰も、そして純一本人も思ってはいなかったことだろう。
正は本棚から瑛子へと視線を向けた。
「純一さんを最後の見たのは何時とか覚えてるか?」
「最後に見たのは昨日の朝に仕事で家を出る時に見送って…それが最後だったと思う、それで私のスマホの方に今日は帰りが遅くなって夕飯は外で済ませるから先に寝ててくれって連絡は来てた…」
瑛子は昨日の朝に純一の姿を見ている、その時までは彼は確実に生きていた。そしてスマホの方に遅くなる事を連絡して伝えていた。
「彼が遅くなる事はよくある?」
「そうかも…仕事が早い時もあったりとかあるけど、遅い時も同じぐらいあるかな…?」
純一の帰宅が遅い事はよくあるのかと瑛子へと聞けば何時も遅いとは限らないようだ。正が彼を尾行していた時も純一はそんな遅くはない時間帯に会社を出て帰宅していた。これで普段は帰りが早くて今回だけは帰りが遅いとなっていたら気になりはするが帰宅時間がランダムとなれば難しい。
純一は一体何故命を絶たれたのか、この手がかりだけでは特定する事はまだ出来ない。次に手がかりがあるとすれば何処なのか正は深く考え込んだ。
彼の職場である出版社、マジリアルの方はどうだろうか?そこで誰かが知っているかもしれないし純一の行き先の手がかりが見つかるかもしれない。
「俺はこれからマジリアルの方に行って来ようと思う、社員の誰かが何か知っているかもしれない」
「うん……お願い」
家を出る正を瑛子は見送り、内心では純一を亡き者にした犯人を見つけてほしいという強い願いがある。
追加依頼となって瑛子は追加料金を支払おうとしていたが正はそれを断った、これは正が勝手に調べる事であり自らにも責任がある。依頼人である瑛子の為であり自分の為でもある今回の事件。
何がなんでも真相を突き止めなくてはならない。
正は再び電車へと乗り込み今度は純一の職場である出版社マジリアルのある水道橋へと向かった。
つい最近通って来た道なのでスムーズにその場所まで来る事は出来た、人通りや周囲の景色もその時と変わりはない。あの時と大きく違うのは純一がもうこの世にいないという事だが彼らにはそれは関係なく、今日も何時も通りの日常を、時を過ごすのだろう。
マジリアルの前まで来たがこれからどうやって中へと入ろうかと正は建物の前で考える。
堂々と探偵と名乗って中を調査出来るかと言われれば無理だ、不審者扱いされてつまみ出されるか警察に連絡されてあらぬ疑いをかけられて面倒な事になるかもしれない。それで忙しいであろう白石の手を煩わせたくはなかった。
一体どうするべきか、正が考えていると……。
「神王じゃないか」
考え込む正に声をかける人物が居た、正の耳に聞こえた男の声。これはつい最近も聞いており聞き覚えがあった。偶然にも同級生がマジリアルで働いていて彼とは昼飯を共に食し純一について教えてもらっている。
「永倉…」
正の中学時代のクラスメイトである永倉新一郎。彼は会社の中へと入ろうとしており、そこに会社の前に居る正を見かけて声をかけたのだ。今日も最初に此処で会った時と同じ茶色のスーツを着ている。
「今日はどうしたんだ?」
永倉には確か自分は無職で職を探していると装っていた。しかし此処で二度も職探しで此処に居るという言葉を信じてくれるのか、それに今度はマジリアルの社内に入って社員の話や可能なら純一のデスクを見ておきたい。何らかの話、または証拠が出て来るかもしれないならば避けては通れない。
普通に考えれば無職の男をすんなり社内へと入れてくれるとは考え難い、ならばどうするか…。
「…永倉、純一さんが亡くなったというのは聞いてるか?」
「!?な、なんだって?何を言って…!」
純一が死んだ、それを聞いて永倉は動揺していた。どうやら彼の方へとその知らせはまだ届いていなかったようだ。
「俺は今朝瑛子と共に純一さんの遺体をこの目で確認してきた…」
「……本当…なのか?」
「ああ」
永倉が静かに問い、正は頷く。純一が亡くなった、永倉としても信じられないといった気持ちだろう。だが正はその目で純一の遺体を見てきている、残念ながら嘘でもなんでもなく事実だ。
永倉は後ろを向くと俯いている。気持ちの整理が必要のようで、正は永倉が次に動くまで黙っていた。
「……急な事で驚いた、つい最近まで一緒に仕事してたのがもう…いなくなっちまってるなんて想像もしていなかった…」
再び永倉は正と向き合い、今の心境を語った。仕事先の世話になっている上司の死、それまで普通に仕事をしていた者がそれを知れば計り知れない衝撃が襲いかかる。
この永倉の姿を見て正は打ち明ける事にした、今の自分の事を。
「永倉、実は黙っていたが……俺は無職じゃない」
「え?」
「…今は探偵をしていて純一さんの事件を調査しているんだ」
「調査…探偵…!?」
正の事を無職だと思っていた永倉にとって驚く事だった、正は探偵をしており純一を調べていると。
「悪かった。あの時は純一さんの調査をしていてね、探偵だとバレたら都合が悪いと思って装ってたんだ。今度昼飯奢り返すからさ」
「編集長の調査…いや、それより事件って何だ?編集長は…殺されたってのか?」
永倉は正の事件という言葉に反応、どうやらまだニュースにはなっていないようで世間的にはまだ知られていないらしい。とはいえマスコミ達が嗅ぎつけて来るのも時間の問題ではあるが。そうなれば調査はしづらくなって来ると思われるので今回は迅速に調査を進めていきたい、それが正にとっては望ましい展開だ。
「ああ…そうらしい」
「………」
殺されたと知れば永倉は次の言葉が中々出てこない。死んだというだけでなく誰かに殺害された、それに驚いていると思われる。
「それでその手がかりを探そうと、此処に来たのか?」
「そういう事だ、社員の話を聞いて純一さんが誰かに恨まれてそうな人物に心当たりはないか…そうだ、永倉。お前は何か聞いてないか?」
正は永倉が何か知らないかと問う、彼も此処マジリアルの社員であり純一の部下だ。何か純一から話を聞いていたり誰か恨みある人物を見ているのかもしれない。
「いや、俺は特に…けど恨みを持つってだけなら、結構いるとは思うぞ。ペンは剣よりも強し、と言われるぐらいで書いた記事によっては人を破滅させる程の力はある…勿論こっちとしてはそんなつもりで書いちゃいないが」
芸能人が不祥事を起こした時、何かスキャンダルを見つけた時それを記事にする。それは彼らもあくまで仕事としてやっている事だがそれによって大衆の目に晒され悪いイメージが付き纏い、それにより破滅していく。今のSNSが当たり前の時代では特に昔よりも広まりやすく、小さな火があっという間に業火へと変化する。
それを思うと純一だけでなく永倉もこの先記事を書き続ける事によって誰かに恨まれるかもしれない。
純一に恨みを持つのは記事にされて破滅した人物の仕業か、それとも個人的な理由か、それともただ理不尽に殺害した通り魔の仕業か。
正が犯人の候補について考え込んでいると永倉が声をかける。
「神王、会社の方は…俺が調べてみる。お前よりも俺の方が自然に社員の人に近づけるし編集長のデスクも調べられるだろうから」
永倉は正の調査を手伝うつもりのようでマジリアルの調査を自分がやると言い出した、確かに正はマジリアルとは関係の無い部外者だ。一方永倉はマジリアルの社員で純一の部下、彼ならば社員から何か話を聞ける上に純一のデスクを調べる事は可能だろう。
「…頼めるか永倉?」
「ああ、勿論!じゃあ此処は俺に任せてくれよ!」
永倉に頼もうと判断し、正は託すと永倉は顔を明るくさせて張り切る様子を見せて会社へと入って行った。
正がこのマジリアルを調べるつもりだったが永倉が此処を調べてくれるようで手間は省ける、そうなれば此処水道橋で正がやる事はもう無い。
ならば次は純一が遺体で発見されたという空き地へ向かおうと正は代々木へと足を運ぶ…。
あまり歓迎したくない密集の満員電車、居心地の良くない環境で揺られながら正は代々木に到着し満員電車を脱出。その解放感に浸っている場合ではない、目的は純一の遺体が発見された事件現場だ。
少し通い慣れてきた代々木の道、何度か訪れたのでその道は覚えている。
事件現場である空き地には死体が発見されたとなって野次馬が集まっており警察の捜査が始まっている。警部の知り合いである正とはいえ一般人がこの捜査に入る事は不可能であり野次馬と共に外から見ているぐらいしか無い。
そんな事は正とて此処に来る前からそれぐらいは分かっている、事件現場の空き地そのものの調査は出来なくとも警察の邪魔にならない程度の外ならば可能だろう。
正は空き地から少し離れた周囲を歩いてみる。
よく見れば細い路地があり、成人男性一人がなんとか通れそうな程の狭さだ。その細い路地をよく見てみると地面に何か緑色に光るものが落ちていた。
それは宝石が入ったペンダント、確かエメラルドの類だったはずだ。その価値はよく分からないが偽物でもなければ高いアクセサリーとなる。そんなものが何でこんな路地に落ちているのか、とりあえず警察が居るので彼らもこの証拠に気付くかもしれない。勝手に持っていくのは不味いと正はスマホでそのアクセサリーの写真だけ撮って画像に残す事にした。
そして正はその場から離れて歩き、あのペンダントについて考える。人が落とした物だとしたらあの細い路地を人が通ったという事になる。それが事件と関係しているのかどうかは現時点ではまだ不明ではあるが、路地が事件現場の空き地と繋がっていたら関係はしてくる、そこは警察のこれからの捜査に期待するしかない。
正はその空き地と細い路地、その位置を確認してみる。中へと入る事が可能ならば確認もある程度楽になるが警察の捜査が入っている今そうもいかなかった。外から見ると方向としては細い路地はあの空き地へと向かって伸びているように見えるがハッキリはしない。
これについては後で白石に聞いてみると決めた後にスマホを見る、そこに先程のペンダントの画像が映し出されていた。
これも調べる必要があるのか、しかし事件と関係しているのかまだ分からない。
その時だった。
「よーし、行くぞー!」
近所の子供達だろうか、やんちゃそうな男の子3人が細い路地へと向かって走っていた。
「こら!今そこ行っちゃ駄目でしょ!そこから今おまわりさんが調べてるあの空き地まで行って迷惑になったらどうするの!」
それを見た50代ぐらいの中年の女性が子供達を叱り飛ばす、怒られた子供達は諦めて別の所で遊ぶ為か歩き始める。
今正にとって実に有力な情報が聞けた、あの女性の言葉を考えると細い路地と遺体発見現場の空き地は繋がっているという事になる。つまりその細い路地で落ちていたこのペンダントがただの落し物ではない、そんな可能性を匂わせてきていた。
これは調べてみる価値がある。正の中で探偵の勘がそう叫んだ気がし、正はペンダントを調べる事にした…。
まずは此処まで見ていただきありがとうございます。
展開考えるのにとにかく必死でした、そして流石に状況的に美味いグルメ出してる時ではなくて正もココアを全然飲んでない状態です。
それだけ彼も必死という事で…。




