【第10話】必死さ
懐かしい。
俺もチャンネル登録者数200人くらいの時、とにかく必死だった。
それが今どうだろう。
200万人を超えるまでに成長し、今度は逆に教える立場なのだ。
「ということで、今日は人生ゲームをしていこう!」
「いいねー。」
「早くやりましょ。」
「うんうん、やろやろ。」
そんな感じで特に大きな課題が見つからないまま、リハーサルを終えた。
「特に悪いとこはないぞ。挨拶から割と出来てるじゃないか。」
「え!ほんと!ありがとう!」
ただ俺はこの時気づいていなかった。
YouTuberにとってかかせない大きな課題を。
それは俺がゲーム実況者だからであろう。
普段、テレビやパソコン、スマートフォンに向かってやっていて、ずっと顔も出してこなかった俺でなければこいつらはもっと早く売れていたのかもしれない。
「いいよ。今日はこれで終わりにしよう。」
「はーい。ゆたっち、今日はありがとねー。」
「んじゃ、また。」
この帰りの時、俺は真剣だった。
最初はいやだったYouTuber指導。ただ、あいつらの必死さがそれをかき消してくれていたのだ。
必死さか…
俺はあの時どんだけ必死にやれていたのだろうか。
あの1万人を目指して日々動画を撮り続けていた時に。
ていうか、何でこんなバズったのか?
200万人ってえぐくないか?
もうそんなことさえ忘れるくらい、俺は必死だったのかもしれない。
そんなことを考えていると丁度、冬乃が聞いてきたのだ。
「なんでYouTuberなんて始めたの。」
冬乃が聞こえる声で喋っている…!
質問よりそっちに気が行ってしまった。
「うーん。なんで始めたんだろ。」
「教えてよ。優多君のここまで来れた歴史を。」
「じゃあ特別に教えてやろう。」
「俺の『なぜここまで来れたのか。』という話を。」




