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9 克服すべきは


「クソ、逃した!」

「助かった、アレス」

「まったく…貴様らは観てないで加勢しないのか! 何のためのシルバーの腕章だ!」


挿絵(By みてみん)


 アレス、なんなのこいつ…って、あの腕章は金色! ゴールドのハンターってことよね!?

 彼は私たちを見つけるなり近づいてきた。


「…おい、ちっこいの。貴様どうして加勢しなかった?」

「えっ…?」

「なぜ加勢しなかったと聞いている! 隠しても無駄だ、お前にその腕章はふさわしくない!」


 どういうこと…? なんでファリスが責められてるの?


「だ、だってボクは…」

「戦力になるハンターがどうして加勢しない!? お前がいればガイザロスを取り逃すこともなかった! 何を日和っていたのか知らないが、モンスターと戦わないならハンターを辞めろ!」


 な、そんな横暴な…言い過ぎよ!


「ま、待ってよ! いくらなんでもそんなこと言わなくてもいいじゃない!」

「貴様もそうだ! 同じレザーならなんで参加を彼女に促さなかった?」

「ちが…だって加勢しようにも足を引っ張りそうだから…」

「だからといって加勢しないのはハンターではない腰抜けのすることだ。特にちっこいの、ハンターはお前みたいな腰抜けがなるものじゃない!」


 いくらなんでもあんまりじゃない!


「あなたがファリスの何を知ってるっていうのよ! これ以上好き勝手言うなら私も我慢ならないわ!」

「ふん、これは先輩からのありがたいアドバイスだぞ? おい、貴様ら行くぞ」

「は、はい? 一体どこへ…」

「一刻も早くガイザロスを追うんだ! 向かった方角からするにエレジア大陸の凍土の方だ!」


 傍若無人! 鬼畜! 何よアイツ、自分がゴールドだからって何しても良いって思ってるわけ!?

 言って良いことと悪いことくらいの区別くらいつけなさいよね!!


「君、すまない、俺が余計なことを言わなければ…」

「ああ、あなたが謝ることはないわ。ね、ファリス…えっ?」

「……」


 ファリスはすごく深刻そうに俯いてた…まさか、さっき問い詰められたときからずっと?

 と、とと、とりあえず、何とかしなきゃ!


「だ、大丈夫か?」

「わ、私がどうにかする! あなたにはあなたのやることがあるでしょ?」

「そ、そうか、すまない!」


 グレンさん、なんだか申し訳ない!

 まずは近場の飲食店に入ったけど、やっぱりこれじゃ彼女の様子は変わらない…。


「ねぇ、一体どうしたの? あなたらしくないわよ?」

「…実はさ、アレスって人の言ってたことは正しいんだ」

「はぁ? あんな傍若無人のどこが?」

「ボクは人と狩りをすることができないんだ」

「えっ、でも洞窟の時は平気だったじゃない?」

「あのときは大丈夫だった。だけど……」


 ♦︎♦︎♦︎


「よし、体勢を崩した!」

「頭部を狙え!」


 ダウンしたモンスターにハンターたちが集まり、集中攻撃を仕掛けていた。

 もちろんボクも混じって頭部を殴っていたんだけど…そのとき、横から入って来たハンターにボクの攻撃が直撃しちゃったんだ。


「あっ……!」


 その瞬間、真っ青だったよ。謝って済めばそれで良かった。

 でも、闘争心を纏った一撃を受けたそのハンターは、背骨を複雑骨折して脊髄にも損傷が…それで一生歩けない身体になって、ハンターを辞めるしかなかったんだ。


「謝っても謝っても謝りきれないけど、本当にごめんなさい…!」

「いいっていいって……ハンターやってりゃこういうこともあるさ。お前を恨んじゃいないって」


 その人は「不慮の事故だ」ってとても気を遣ってくれてたんだけど、周りのハンターはボクを露骨に避けるようになってた。


「げっ、あいつが居るのか…」

「あのハンマーの子って怖いよね…」

「悪いけど、俺たちで行ってくる」


 意図しなかったとはいえ、一人のハンター生命を絶ったことの罪の重さと自責の念はずっと消えなかった。だからボクは、人と組むのを止めたんだ。


 ♦︎♦︎♦︎


「そういうことがあったのね…」

「君はいいの? ボクと一緒に居たらいつかは…」

「なによ、そんな話聞いたくらいで私が揺らぐと思ったの?」


 たしかに仲間を傷つけた傷は消えないかもしれない。だけど!


「私はそうならない! ファリスには色んなことを教えてもらったし、助けてもらったし、特訓とか助言とか沢山してくれたじゃない!」

「え…」

「ファリスは強いよ! それを1番知ってるのは間近で見ている私だもの!」

「……」

「1番最初に私に教えてくれたじゃない、「よく見ること」って。じゃあ今度は、味方の動きも見て動けばいいじゃない! 初心者の私がこんなこと言うのもおかしいけど、絶対ファリスならできるから!」


 せっかくファリスとまた会えたんだ…彼女ほどのハンターは他にいないって私は信じてる! だから、アレスの言い分をファリスが認めるなんてことは絶対に許さない!


「…ありがとう。はは、何が「恐怖心を克服する」だよ。同じハンターを恐れて組まずに尻込みしてたボクこそ1番「恐怖」してたんじゃないか」

「ファリス…」

「おかげで見つけたよ。自分の恐怖が…それを見つけてくれたのはクロエのおかげだよ」


 ファリスがようやく笑顔になってくれた!

 やっぱりあなたはその笑顔が1番かわいくて素敵よ!


「ハンターは恐怖心を無くしてこそ強くなれる…よーし! 今度こそ一緒に戦おう!」

「ええ! もちろんよ! 吹っ飛ばされたって構わないわ!」

「あはは、クロエは強いね!」


わだかまりも無くなったことだし、海鮮料理で腹ごしらえを終えた私たちはアレスたちに一足遅れて船に乗った。


「凍土か…初めて行く場所だね」

「ファリスも行ったことないの?」

「ボクは基本的に別の大陸に行ったことがないんだ。モンスターの情報はいろいろと調べてるけど、こうして海の向こう側に足を運ぶのは初めてなんだ」

「そうなのね。…私、なんだかその気持ち分かる気がするわ。すっごくワクワクしてるんでしょ?」

「ふふ、そうだね!」


 凍土、どんなモンスターが待ってるのかしら!


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