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3 クロエ

 

 流れるようにボクらは街の外に来た。

 とりあえずは成り行きでガイザロスの痕跡を探すために北西へと向かうことになったんだけど…。


「ねぇ、クロエ。君にはいっぱい聞きたいことがあるんだけど…」

「ん? もしかして、「なんでハンターになったの」ってこと?」

「うん、君と初めて会ったときは戦えなかったはずだったし、なんで家を出たの?」

「…そうね。実は私、家を出たんじゃなくて追い出されたのよね」

「ど、どうして?」


 ♦︎♦︎♦︎


「クロエ、またあんたの仕業ね!?」

「はぁ? フラン姉様、なんのことです?」


 まーた始まった…姉様のいちゃもん。


「あんた、あの花瓶を割ったんでしょ!?」

「何言ってるんです? 私がそんなこと—―」

「じゃあパトリックに聞いてみなさいよ、あんたがやったって白状したわよ?」


 えっ、私の執事…? たしかに私の近くにいつも居たけど、なんで…!?


「はい、お嬢様がフラン様への鬱憤晴らしと称して花瓶を破壊してその罪を被せようとしていました」

「はぁ…!?」


 な、なにを…!? たしかにフラン姉様のいちゃもんとか悪戯には嫌気が差してはいたけど、仮にも家族だし少しは尊敬していた! そんなこと覚えてる限りじゃ一度も…。


「ただいま~!」


 うっ、間の悪いことに玄関が開いて母様と父様が帰ってきた!


「ちょうどいいわ、ママに言いつけてやる! 見過ごしていたけどもう我慢できない!」


 ぬ、濡れ衣よ! だけど、証拠と証人まで用意されたら弁解が難しくなる…! 止める間も無く、その日は父様と母様、1番上のソニア姉様も含めての家族会議になった。


「ママ、パパ、姉さん、どう思う?」

「クロエ、何を考えてるの!?」

「ふむ…それは本当なのか? ワシはどうも信じがたいのだが…」

「姉さんもそう思うわね〜」


 パパとソニア姉様はまだ味方してくれてる…。


「事実無根です! 大体、遠征で忙しい私がそんなことできると本気でお思いですか!? 花瓶にしたって私はさっきまで庭で訓練をしていました!」

「ふぅん、それを証明できる人は居るの? その謎の訓練とやらを」

「うっ……」


 近くにいたのは執事のパトリックだけど、今さっき私を売った男だから全く信用できない! となったら、他に証人はいない…!


「ぱ、パトリックが…!」

「私はその時クロエ様と一緒に居ました」


 ダメ元だったけどやっぱり…!


「はいはい、つまりはそういうことね? ママ、この妹どうする?」

「クロエ、あなたの悪行はフランや使用人たちから聞いたわ。そんな娘に育てた覚えはなかったけど、もう我慢ならない。出ておいき!」

「お、おい、まだクロエがやったと決まったわけじゃ…」


 父様が異議を唱えようとすると、母様はパチンと指を鳴らした。


「伝えてやりなさい」

「はっ、一昨日のペットのエドワードの死はクロエ様が黙って毒を盛ったからだと…」

「クロエ様の遠征は名ばかりの男漁りだとか…」


 は、はぁ? みんな一体どうしたのよ!? エドワードの死因は老衰だし、遠征だって地域の人たちと交流を持つためって目的があったのに! 男漁りなんてそれこそ私への侮辱よ!

 父様と姉様は困惑していたけど、どっちの味方にもなれてない様子だった…。


「我が家の名を汚す者に住む場所は無い。早くその薄汚い服のまま出ておいき!」


 フランと母様のゴリ押しで私は追い出された。


 ♦︎♦︎♦︎


「たしかに服はちょっと砂埃とか付いてたけどだからって薄汚いはあんまりだわ! ちゃんとしたハンターの服なのに…!」

「そんなことがあったんだ…。でも、どうしてフランはそんなことを?」

「きっと私の力よ。あなたに料理を作った時に魔法を使ってみせたわね? あれは一族の中で私にしかない能力なのよ」


 炎の魔法で肉を焼いたり、調理に応用していたあの力のことか。


「あれをフランは妬んでる。この力はどんなに金を積んでも手に入らないし、生まれついてのモノだからきっと私が邪魔だったのよ」

「そっか…それで、ハンターとして生きていくためにボクのところに?」

「ええ、足手まといになる気はないわ! 何時になるか分からないけど、フランの仕組んだ策略を暴いてやるんだから!」


 確かに謎が多い事件だけど、それを解決するためにハンターになるなんて変わってるなぁ…。


「でも、なんでボクなんかを選んだの? 同じ貴族でもハンターは居るはずだよね?」

「今頃フランとみんなが私の悪評を広めて、私の八方塞がりを狙ってるはずだもの。だったら、世間の情報に疎いあなたと一緒にいれば安心だと思ったの」


 ボクが世間知らずってこと…? まあたしかにそうだけど。


「それに、あなたにはちゃんとした恩返しがしたかった。今回の調査に参加させてくれることでおあいこでどうかな?」

「そ、そうなんだ…でも、本当にボクでいいの? 背が低いし、癖っ毛だし、地味だし、ファッションとか分からないし、戦うことしかできないよ?」

「戦えるなら万々歳よ! それにあなた、地味とか言ってるけど童顔でかわいいわよ?」


 か、かわいい? ボクが…?


「あ、ちょっとあれ見てよ」


 ボクが赤面してる間に、クロエが指した先には数匹の小型肉食竜が草食竜の親子を襲っている様だった。


「あの小さいのはジャギュア、草食竜は…たしか個体数が急速に減ってるアルキノスだね」


 前に聞いたことがある、ジャギュアの生息域が拡大しすぎてアルキノスの生息域が狭まってるから保護活動を積極的にやってほしいってお達しが出てたはず。


「行こう、アルキノスを守ろう!」

「分かったわ!」


 ボクは大槌を、クロエは剣と盾を構えて向かった!


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