27 髪が赤く染まる時
「ガイザロスはあの赤黒い力を行使するときに必ずツノが光る。衝撃波もブレスもツノが重要な役割を果たしていると見て間違いないよ」
「じゃあ、弱点はあのツノってことよね。でも、どうやって壊すの? ファリスの攻撃は通じないし、私の力じゃあいつのツノを壊すなんてそう簡単には…」
「大丈夫、そのために2人…いや、ロイを含めた3人で行くんだ」
バウッ!
クロエがダメージを与えられたのは属性による力…おそらく、あのツノのバリアは一つの属性を無力化できても、二つ以上は防ぎ切れないんだ。
バリアが破れたところをボクのハンマーでツノを叩き割る!
「なるほどね、そういうことなら!」
バウッバウッ!
ん? ロイが横に来て…ボクに背中に乗れって言ってるのかな?
「わかった、ボクとロイが先行するよ。注意が向いてるうちにクロエは安全に接近して!」
「了解よ!」
ロイに跨ったボクは再び肉薄を試みる。
迫る赤黒いブレスを上に跳んで回避して、続け様に振り下ろしてきた腕を横にすり抜けた!
ロイ、君は言葉は話せなくとも立派なハンターだよ…!
アギトが見えた! 後は接近して渾身の一撃をツノへ…いや、飛んで回避しようとしている!
「逃がさない!」
ロイの背から跳び上がって頭部へ一撃を仕掛ける!
ガギョォンッ!
よし、捕まえた! これで飛ぶことはできない!
「ファリス!」
「クロエ! ロイ! 同時攻撃を!」
ゴォーッ!
「はあぁッ!」
クロエとロイの同時攻撃がツノの根元に突き刺さる…! これであとはボクがツノをへし折れば!
っ…! か、硬い! ジェラキドスのそれよりもずっと硬いツノだ!
バギャオッ! ギュルオッ!
この声、エルデリスとエルガリアが左右から挟み撃ちをしに来てる! 間に合わなーー
「行かせてなるものか!」
「邪魔はさせない!」
攻撃をターリアさんとグランさんが防いでくれてる…! ファリス、急げ! 急いで叩き割るんだ!
『ファリス、お前はいつの日かある高みに到達することだろう…そうなった時に、覚えるんだ』
っ! これは師匠の声…どうしてこんな時に?
『その感覚を!』
感覚…そうか! これが、この闘争心が…!
向上心、殺意、守護……そうだ、高めてるこの感覚を覚えるんだ!
ボクは再びハンマーに力を込め直すと、ビキビキと血管が浮き出てきてるのが分かる。さっきよりもずっと強く握れているのが本能的に分かる!
「ファリス、あなた髪が…!」
クロエが何か言ってるけど、今は聞こえない。
込めなおした力がツノをミシミシと言わせて角に亀裂を広げて行って、ついに…!
ゴキィッ!
「や、やったわ!」
折れた! だけどまだ! 折れたと同時に力の反動を利用してまた宙に跳んで、そこからもう一撃だッ!
「喰らえーッ!!」
頭部へ勢いをつけた第二撃を叩き込み、ドゴンッという凄まじい振動が駆け巡った…!
あまりの衝撃の大きさを防ぎきれなかったのか、それはたしかに皮膚を貫いて頭蓋の奥深くへと達した感触があった……。
そして、ガイザロスは……頭を地に付けて、動かなくなった。
「や、やった、やった、やった! ファリス! やったわ!」
クロエがギューッて抱き着いてきた。や、やれたんだ、ボクが…災害級を仕留めたんだ…!
「やったみたいね! 二人とも!」
「エルデリスとエルガリアもそいつが倒れたからか、もう戦意喪失したみたいだ、ほら」
グランさんが指さす先には、さっきまで立ち込めていた暗雲が晴れて、夕焼けの空の中へと帰っていく二頭の飛竜の姿が見えた。
いろんな感情が駆け巡ってどういう動きをすればいいのか分からないけど、ボクたちはやり遂げたんだ!
「ねえファリス、さっき角折るときに髪の毛先が赤く染まってたんだけど、気が付いた?」
「え? そうなの?」
もう髪は赤くないみたいだけど…。
「ほう、どうやら「赫髪」をお前も身に付けたみたいだな」
後ろから声をかけてきたのは、アレスだった。
「お嬢様、ご無事でしたか!
「クロエっち~!」
「パトリックにエイミー!」
下であれだけの数のモンスターの侵攻をたった二人だけで防いでいたっていうのに、非戦闘員のパトリックさんも無事だ!
「赫髪は闘争心を…それが「ある高み」に到達した者が身に付ける力だ。お前はどうやら俺の見立て通りのやつだ。きっとこれからもまた伸びていくことだろう」
もしかしてアレスがモンスターの大軍を抑えられたのもこの力なのかな?
「ファリス、次会うときまでにもっともっと強くなれ。そして必ず俺と同じところまで来い…!」
「う、うん……」
アレスは意味深なこと言って一足先にその場を後にしていった。
「あっくん、すごくうれしそうだったなぁ」
「変なやつよね、まだファリスを狙ってるなんて」
「あっくんはファリスちゃんのことを恋愛対象にしてはいないと思うよ? 生涯独身~ってずっと言ってるから」
ボクが強くなると喜ぶのかな。
とりあえず、一通り喜びを分かち合った後にボクらは王都へと帰還する。
その途中、ロイは足を止めた。
「ロイ? どこに行くの?」
バウッ、バウッ
火山の方へ向かって吠えている。
「もしかして、元居た場所に帰りたいのかな?」
「え、じゃあここでお別れってこと?」
バウッ、クゥーン……
ロイがお別れの挨拶をするように、ボクたちに温かい鼻をこすりつけた。
そして、今も相変わらず赤赤としている火山へと帰っていった。
「短い間だったけど、心強い味方だったね」
「ええ、きっとロイが居なかったらガイザロスの防御は破れなかったわ。なんだか、本当に短い間だったのに、ちょっと寂しくもあるわ」
種族は違えど、言葉は話せなくとも、ロイは勇敢で冷静なハンターだった。
「また会えるかな?」
「きっと会えるわよ!」
ボクらはそんなことを考えながら、王都へと凱旋した。
「よくやった、よくやったぞ!」
集会所に着くと、ギルドマスターが喜々した様子で報告を聞いていた。
「まさかクロエとその付き添いのハンターが、災害級と目される新種を仕留めるとはな! 実に天晴! あっぱれじゃ! 二人には2ランクの特進で「鋼ランク」に昇進させようぞ!」
その場にいたハンターの人たちや受付の人、みんなが大きな拍手と歓声で最大限の賛辞を送ってくれた!
「2ランク特進…! スチールの次はカッパーだ! まさかこんなにも早く此処まで来るなんて!」
「そうなの!? それってめちゃくちゃすごいことじゃない!」
凄い達成感を噛みしめて、ボクとクロエは喜び合った!




