26 閃光と共に
「…ふっふっふ、よりどりみどりねぇ。こんなにたくさんのモンスターが囲むなんて」
「ターリアさん、そんなこと言ってる場合じゃ…」
「こんなに大勢のモンスターが、こんな高いところに集まってる…そこでこれを使ったらどうなると思う?」
ターリアさんが取り出したのは6個に纏めたフラッシュバン…あっ、まさか!
「ガイザロス、あんたはあたしたちを罠にハメたみたいだけど、甘すぎる!」
地面にフラッシュバンを全て叩きつけて、目と耳を閉じていても激しい閃光と騒音が目と耳を揺さぶった…!
目を開けると、周囲のモンスターたちは悉くパニックになっていて、同士討ちしたり塔から落下したりして戦うどころじゃなくなってた。
「知略で私たちと渡り合おうなんてあんたにはまだ早かったようね?」
「お前は罠や地雷を仕掛ける腕は折り紙付だからな…流石だ」
「いいこと言ってくれるじゃないのグラン!」
これですっかり形勢は逆転…いや、相手はアレスが災害級かもしれないって評価するくらいモンスターだ。油断はできない…その証拠に、自分の作戦を潰されても狼狽えない。
すると、ガイザロスは腕を地面に叩きつけてガンガンと音を立てながらリズムのようなものを鳴らした…!
「今度は一体…?」
様子を伺っていると、空から2頭の飛竜が現れた!
「エルデリスとエルガリア…!?」
「厄介なヤツらがやってきやがったな…!」
雌雄の番で行動するモンスター…雌のエルデリスは水を、雄のエルガリアは炎を操って、単独でもかなりの強敵…!
「めんどくさいったらありゃしないわ、あいつらがよりによって揃ってるなんて」
「揃ってると何かまずいんですか?」
「とんでもない連携攻撃を仕掛けてくるのよ」
ターリアさんの言う通り…二頭が揃ったときは準災害級ともされる戦闘力を発揮するから基本的には分断するのが吉…。
「とりあえず、俺とターリアがあいつらの相手はしよう。君たちはガイザロスを任せた」
「わ、分かりました!」
「あっ、グラン…そのセリフあたしが言おうと思ったのに…」
ボクとクロエとロイでガイザロスを倒すってことか…!
「クロエ、準備はいい?」
「ええ。いつでも行けるわ!」
バウッバウッ!
ロイも今すぐにでも飛びかかりに行きそうなほどの闘争心を込めている…よくここまで耐えていたね。
よし、まずはボクが接近して一撃を加えに行く…!
早速ガイザロスは口を開いて何やら赤黒い瘴気を纏いだした…な、なにこれ、でもこの感じはブレスだ!
予想通り吐き出した赤黒い放射物を横にすり抜けて、跳躍! このまま頭部を狙って一撃を!
それを見たガイザロスはさっきの赤黒い瘴気を大きなツノに纏わせて、ボクのハンマーに合わせて打ちつけて来た!
「な、なんだこのエネルギー…!?」
防御されることまでは読んでたけど、さっきからガイザロスの使うこの力は…!?
バウッ! ゴォーッ!
ロイが横から業火を吐き出した! よし、炎に対処すればハンマーが、このままなら炎が当たる…!
キュオォォン…!!
な、この音は!? 次の瞬間、ボクは吹っ飛ばされていた…。
「ファリス!」
かはっ、咄嗟のことで受け身がとれなかった、背中を強打したみたいだ…!
続けざまにブレスが来た!
防御姿勢はとったけど…なにこれ!? ジリって駆け巡るような感じがして、そこから痺れるような感じが伝わってくる…いや違う、なんだこの身体全体を駆け巡るこのヘンな感じ……!?
「大丈夫!?」
う、動けない……身体がボクを拒絶しているの…!?
「ファリス、ちょっとじっとしてて…」
「ッぅあ!?」
クロエが背中を……いや、何だこの感じ、ビリッとしたと思ったら身体の感じが元に戻った…動く!
「た、助かったよ」
「よかった。なんか毒っぽい感じがしたからターリアさんに突かれたツボを突いてみたの」
何が起きたのかよく分からなかったけど、致命傷は受けずに済んだ。
「さっき、ガイザロスのツノが突然光って、ロイの炎が打ち消されてファリスが吹っ飛んでたのよ」
「つまりは衝撃波みたいなものかな…」
衝撃波といい、あの謎のブレスといい、迂闊に近づくのは拙い。
ロイは…よかった、無事みたいだ。
「どうする?」
「そうだね、あの衝撃波は予備動作から発生がすごく早いから、迂闊には頭部を殴れない。どうにかしてあの力を抑え込めれば…」
そのためには分析しなきゃいけない。ここはボクがまた攻めに行くしかないか…。
「じゃあ、私とロイが行くからその間に分析してくれない?」
「えっ!?」
「ファリスはモンスターに詳しいでしょ? だったら、ペーペーの私が時間を稼ぐからその隙に分析しちゃって!」
「ま、待ってよ! あいつは災害級なんだよ!?」
「無茶は百の承知よ。だけど、今ここで1番の突破口になるのはそれしかない。私だって、逃げ続けて時間を稼ぐくらいならできる!」
クロエ…だけど、それならより深く分析できるのは確実だ。
でも、もしクロエとロイが致命傷を負ったら…。
「行くよ、ロイ!」
バウヮゥッ!
迷っているボクをお構いなしに二人は進んでいった。
♦︎♦︎♦︎
よーし、やってやる、やってやるわ! 災害級がどうしたっていうのよ! 動きをよーく見て、躱してやるわ!
ガイザロスは…口を開けてこっちにあのブレスを撃ち込もうとしてる。
シュバオッ!
来た! たしかファリスはこうやって身を捩って…躱せた!
「ロイ、火を吐いて!」
バウッ! ゴォーッ!
すごい、ダメ元で言ったのにちゃんと反応してくれた! ブレスは躱されちゃったけど、着地は見切れる! 剣と盾を赤く燃やして、まずは一撃!
よし、前脚に入った! ってあれ!? 焼き切れないし、刃が深く通らない! 闘争心は充分のはずなのに!
「クロエ! 危ない!」
バギャアォッ!
きゃっ!? 攻撃に集中しすぎてエルデリスの仕掛けてきた蹴りに当たるところだった…!
「平気か?」
「ぐ、グランさん、助かりました!」
キシューッ!
っ! 続け様に今度は高圧縮の水を吐き出してきた!
「やらせるものか!」
またもグランさんが盾を使って防いでくれた…けど、あの高水圧を受けて後ろに後退しつつある…!
「くっ! 流石にこいつの水を真正面から受けるのは愚策か!」
ドシュッ!
この音は弓矢…! 飛んできた方を見ると、ターリアさんがエルガリアを罠で拘束して、こっちに弓を構えていた。
「グラン、大丈夫かい?」
「すまない、助かった」
ターリアさんの矢を横から受けたエルデリスはブレスの方向が変わって、ガイザロスの…それも私が傷をつけたところに高水圧が!
ギシュァッ!?
この苦痛を感じた声…ダメージが通った!? でも、どうして…?
あの時私は火を纏った剣で斬りつけた。だけどまったく効果がなかった…それに、ガイザロスは傷をつけていない爪の部分から既に高水圧を受けていたのに、痛がる素振りをしたのは私の付けた傷に当たってから……。
「火…水…傷…まさか!?」
思い立った私は、武器の属性を水に変えてロイに目を合わせた。
「私についてきて!」
バウッ!
私の考えが正しければ、「ある手順」を踏めば皮膚のバリアは破れる!
ガイザロスも簡単には通す気はずがなく、腕を使った肉弾戦やあの赤黒いブレスでなかなか接近できない…!
バウッ! バウッ!
ロイ…? ロイが急に横に来て歩調を合わせてる…もしかして背中に乗れってこと!?
私の力じゃあの激化した攻撃を潜っていくのは難しい。だけど、一度でも懐に潜れるのなら!
「分かった!」
ロイの背中に跨ると、一直線にガイザロスへと走り出した!
吐いてきたブレスを横に跳んで綺麗に躱して、腕の叩きつけもまるでファリスみたいな動きで掻い潜った! もしかしてさっきから観察していて、それで見切ったっていうの!?
でも直後にガイザロスのアギトが目の前にきて口を開けた…噛みつき!?
それすらも間一髪、アギトを跳び越えて前脚と後脚の中間に入り込めた!
「ロイ今よ! あそこを狙ってブレスを食らわせてッ!!」
ゴォーッ!!
狙ってもらったのは首のあたり…ファリスみたいに上手くいくか分からないけど、ガイザロスはこっちに振り向くはず!
ギルゥ…!?
よし、大当たりよ! 豪炎に包まれてこっちが見えない! なら最後の一押し、水の盾を使ってブレスの中へ!
「ここだぁッ!」
ジュカッ!
この音、ガイザロスのツノヘ一撃が入った!
キュオォォン…!!
あっ、この音はまずい!
「きゃあぁっ!」
盾を構える間もなく一瞬で吹っ飛ばされた…って、う、受け身が取れない! このままじゃ背中を思いっきり打ちつけて動けなくなる!
ガシッ!
この音…この小さくて強い手に抱き抱えられてる感覚は…。
「クロエ、ありがとう。勇敢な君のおかげで謎が解けたよ」
「ファリス…!」
な、ナイスキャッチ…!!




