20 赤衣の少女
「な、何者よ…?」
「……あなたたちはハンターよね?」
「そ、そうだけど?」
「ちょっとあなたたちだけでついて来てくれる?」
なにを言っているんだろう? とはいえ、もう日が暮れているし、彼女の存在に気が付いてるのはどうやらボクたちだけ…ほかの人たちはもう寝てたり、お酒を飲んだりしてる。
とりあえず、赤衣の子の言うことに従ってみることにした。
「ねえ、どこに行こうとしてるのよ?」
「まだ先…あなたたちが探しているものを知っているの」
「えっ? ボクらが探しているものって……」
何かについては想像がついたけど、今一つ確信が持てない。
少女の後を追っていると、峡谷の先にある森の中の大きな樹の上まで登ることになった。
「はぁ、はぁ、いい加減教えてくれない? なんのことよ?」
「ガイザロス」
「は?」
「探してるでしょう? あの姿を変えるモンスターを」
どうしてガイザロスのことを知っているのかとまず思った。この子はギルドの関係者? でも、腕章も何もないし、こんな赤い衣を着ているはずがないと思う。けど、それを問いただす間もなく少女は話を続ける。依然として、そのフードの下は見えない。
「あのモンスターは…あの先に行く」
「あの先…?」
少女は指をさした…その先には轟轟と音を立て、紅蓮の溶岩を流し、暗雲のような煙を発する火山があった。
「あの火山の先、もっともっと先に塔がある。その場所を目指してあのモンスターは進んでる」
「な、どういうこと? どうして知ってるのよ!」
「ねえ、君はどうしてボクたちに伝えてくれたの?」
何も言わず、少女はいつの間にか消えてしまった。まるでそこには元々居なかったみたいに…。
「な、なんだったのよあの子…」
不思議な女の子だった。
それからは峡谷に戻って眠ることにしたけど、謎が浮かび続けて心が落ち着かない。あの子が言うことが本当なのだとしたらと思うとどうも無視できない気がしてくるんだ。
「ねえファリス、起きてる?」
「うん」
「あの子の言ってたことやっぱり気になるよね?」
気にならないと言えばウソになる。こんなところに武器を持ってない子が来るはずないし、考えすぎかもしれないけど、あの子は僕たちだけに伝えに来たのかな。
「明日、アレスたちに言って調べに行こう」
「そうね!」
—―翌日―—
「よし諸君、昨日発見したガイザロスの痕跡だが、方向からするにこの峡谷の先の沼地へと向かったみたいだ。早速、俺たちはそこへ向かおう」
アレスはすごく張り切ってるね。
だけど、沼地のある方向って火山のある方向とは正反対だ。
「二人組を作って手分けして探すぞ」
「ねえ、アレス」
クロエが昨日起きたことを彼に告げた。するとアレスは笑い出した!
「ふ、ははははは! 貴様たち、まさか幽霊でも見たんじゃないか? その赤衣の女がそもそも実在するかも怪しい以上、こっちにある痕跡を調べる方が得策だろう?」
「だけど、嘘とも言い切れないでしょ?」
「まあそうだが、そこまで気になるなら貴様たちで調べにいくといい。ハンターは元々団体行動が基本ではないからな!」
20人近く居たハンターがボクたち含めて8人にまで減ってたのってそういうことなのかな。
とりあえず、ここは火山にーー
「えー? あっくん…せっかく同じ剣盾使いに会えたのに…」
「拗ねるなよエイミー…ファリスとクロエの実力はお前も知ってるだろう? なら簡単に死ぬようなヤツではないと分かっているはずだ」
「そうだけど…あの料理美味しかったから…」
エイミーさん、名残惜しそう…。
「ファリス。絶対に生き残れ、そして強くなってこい! また会える時を楽しみにしているぞ!」
「クロエっち〜! また会ったらいっぱい話そうね!」
アレスとエイミーさんだけじゃなく、カッパーの人たちも見送ってくれた。
「また会おうぜ!」
「料理美味かったぞ〜!」
「2人とも頑張ってね〜!」
皆と別れたあと、クロエと森の中へ入った。
すると、彼女は何か考えて、緊張しているみたいだった。
「クロエ、どうしたの?」
「え、えっとさ、火山って当然暑いのよね?」
「うん…そうだと思うよ」
「わ、私、あの時すごい音立ててマグマが流れ落ちていくのを見てるだけで怖いっていうか、暑いっていうか…」
そっか、まあそれが当然だよね。ボクはどんなモンスターに会えるか楽しみにしていたんだけど、クロエの言う通り暑そうだ。
そんな時のための……
「このアイスを食べるといいよ」
「なにこれ、バニラアイス? 美味しそうね!」
「バニラの味は付いてないけど、それを食べておけば砂漠とか火山とかの暑いところでも大丈夫だよ」
ギルド公認の炎天下行動用アイスだ。
一応予備含めて三個あったから、一つをクロエにあげた。
「うっ、なにこれ…か、身体は冷えるけど、まるで氷でできた雑巾を食べてるみたいな味…」
「美味しくないよね…」
味は褒められたものじゃないけど、効果は十分。身体の芯から冷えるから火山でも大丈夫だ。
準備をして森を抜けると、黒と白の入り混じった玄武岩が待ち受けていた。
「こ、ここからね…!」
「うん…!」
あの娘が言っていたなら、この火山の先に塔があるはず。




