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10 海を渡って

 

 船に揺られていると、水平線の向こうから流氷が徐々に見えてきた。

 吐く息が白くなって、ボクもちょっと寒さを感じてきたころ、クロエの方を見ると既にガクガクでブルブルしている。


「さ、さ″ふ"い"……! 凍え死ぬ…!」


 彼女は持ち前の魔法で火を掌で起こして耐えていたけど、このままじゃ戦うのも辛そう。

 まずはクロエに抱き着いた。


「ふぁ、ファリス?」

「身体を密着させれば少しは暖かくなるかなって思ったんだ」

「う、嬉しいけど…ま、まだまだ寒いわ……」


 どうしたものかな…そうだ、ぴったりの飲み物がまだ残ってたっけ。ポーチの中を探してたら、それはまだあった。…けど、残念なことにもう飲みかけの物しかなかった。


「クロエ、ボクの飲みかけでよければこれを飲んでみるといいよ。辛いと思うけど、これを飲めば身体があったまるはずだから」

「えっ、飲みかけ!? ありがとう、藁にもすがりたいほど寒いから遠慮なく頂くわ!」


 なんか飲みかけってことに嬉しそうだったけど、まあいいや。

 彼女がラッパ飲みをしようとすると、辛さのあまり顔が真っ赤になってる。


「げーっ、か、辛すぎる!? ちょっと、これ口から火が出そうなくらい辛い!!!」

「あはは、トマトと複数の唐辛子と香辛料を混ぜた飲み物だからね。ちょっとずつ飲まないと舌が痛くなっちゃうんだ」

「さ、最初にそういうことは言ってよね…こんなの凶器よ」


 一応これはギルドが寒冷地対策に公認で出してるんだけどね。


「そうだ、これにゲレンデプスの肉を付けて食べてみるわ」


 おお、名案だね。ポーチの保存袋からゲレンデプスの肉を一切れ取り出して、実食!


「うっ、まだ辛い…けど、これはこれでアリな気がするわ。そのまま飲むよりかはずっとマシね」

「へぇ、ボクも一つ食べてみて良い?」

「もちろん」


 食べてみたら、やっぱり口に入れた時はすごい辛いけど、その後から溢れた油が中和していって美味しい……。


「すごいね、ボクは絶対思いつかなかったよ」

「ふふ、せっかくだし、なんでも試してみるものよ!」


 堪能しているうちに、船は凍土に到着した。


「うわぁ、一面真っ白ね……」


 幻想的な風景だ。草原とか山の緑に溢れているガリア大陸とはまるで正反対で、樹木も建物も道も等しく雪を被っているんだ。


「こんな過酷な環境でも生きていけるってことになんだか驚いちゃうわ」

「うん、きっと大型モンスターもこの環境に適応して強力になっているかも」


 したらば、さっそくクエストボードを見に来た。

 近くにもうアレスたちの姿はないけど、なにか情報はないかな?


「特に変わったことはなさそうだけど……ん?」

「どうしたのファリス?」

「このクエストを受けよう」


 手に取ったのは一つの依頼文。


「ゲルギロスの討伐? でもこれ、レザーじゃ受けられないわよ?」

「クロエ、気が付いてなかった? ボクらはもうレザーじゃないよ」


 クロエが驚いて腕章を確認すると、レザーからブロンズになっている。おそらく船の中で諸々の処理が終わってやっと昇格したんだろうね。


「ほんとだ。これなら受けられるね!」

「うん、ところで依頼文の右端を見て」

「なにこれ、赤く光ってるけど?」

「誰かがもうクエストを受けてるんだけど、救援要請を出してるみたいだね」

「そう…って、それなら急いで行かないと!」


 一刻も早く行けば助かる確率は上がる!

 ゲルギロスの巣を目指して早歩きで進んでいると、なにやら小型モンスターが群がっているのを見かけた。

 すると、その中から声が聞こえる!


「うわーん、ここはどこなのー!?」


「な、なに、もしかしてあの中に人がいるの!?」

「もしかしてあの人が先に受けてたハンターなのかな? 急いで助けよう!」


 ボクたちはモンスターたちを一蹴する。

 そして、ハンターに近づいてみると、銀色の腕章に紺色の髪をした女の人だった。傍には彼女のものらしき大きな弓と矢筒も落ちてる。


「うわーん! うわーん!」

「こ、こんなところで武器放り出して何してるんですか!」

「街はどこー!? 村はどこー!? 私は今どこに居るのー!?」

「…ちょっとファリス、こいつは話にならないわよ?」

「でも、銀色の腕章を持ってる人だからすごい人なんじゃないかな?」


 話しかけ方がわからない…まるで酔っ払いみたいに顔が赤いし、子供みたいに駄々っ子になってる…。


「ね、ねえ、こんなところで転げ回ってたら凍死しますよ! 一体いくつなんですか!」

「うわーん、アタシは25歳…はっ! 誰か来てくれたの!?」

「さっきからずっと話しかけてましたよ」

「ん? 銀髪と茶髪の子…もしかして、ドルセットの港に居た?」


 あっ、もしかしてこの人ってサザルゲニアを弓で射抜こうとしてた弓使いの人?


「は、はい…」

「そっか、あの時はアレスの坊っちゃんに絞られてたね」

「ま、まあ…でも、もう気にしてません。あれだけ言われたからには、私たちは絶対強くなります!」


 クロエ…そうだね、ボクも負けてられない!


「良い心がけだね。あ、アタシはターリア。ご覧の通りの弓使いだ」

「私はクロエです」

「ボクはファリス」


 ターリアさんは立ち上がって弓と矢を拾った。


挿絵(By みてみん)


「……あ、あの、寒くないんですか? そんな恰好…」

「ん? 全然平気だけど」


 クロエの言う通り確かに露出度が高い人だね…ボクも少し寒く感じるのにあんな格好はできないなぁ。


「どうして救難を?」

「アタシ、あんたたちも知ってると思うけど調査受けててさ、痕跡を見つけるのと同時にクエストもこなそうって一石二鳥を考えてたんだけど、道に迷っちゃったんだよね~」


道に迷う…? 一応開けていて道も完ぺきとは言えないけれど整備されてるように見えるけどなぁ。まっすぐ歩いて行けば港にも着くはず。


「やっぱりグランの言う通り、誰かについて来てもらった方がよかったなぁ」

「ち、地図とかっていうのは?」

「ダメダメ。アタシ地図読めないもん」


 えっ、シルバーハンターなんだよね…?


「こうして来てくれたってことは、あんたたちはちゃんと方向とか分かってるってことだよね?」

「あっ、まあ一応…」

「よかった! 一緒に付き合ってくれない?」


 ちょっと不安だけど、シルバーの人が仲間に居るってなると心強い…かな?


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