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異能力ガチャ

あの紙にサインをした次の日、俺たち二人は今までの味気ない部屋から牢という形式さえ取っているが、まるで三ツ星高級ホテルのような内観の雑房へ移動させられた。今のところ3食昼寝つきでグレードの上がった食事が出てきている。そう言えばジョンの姿が見えないな。担当房が変わったせいだろうか。


時刻が午後9時を回る頃、食べ終わった食事のプレートを部屋の外に置く。前と違っていつ食べても、いつ食べ終わっても文句を言われない。一服できれば文句無いのになあ、とタバコが頭によぎるがそもそもこの世界にそういった物が存在するのか甚だ疑問である。


そんなくだらないことが頭をよぎった時だった。


「出房だ」


「……?」


一瞬意味が分からなかった。


「え?死刑ですか?」


「…死刑ならわざわざ房を移さんだろう。ほら、そこの娘も一緒に来い」


二人で顔を見合わせて首を傾げる。

そのまま言われるがまま手錠を嵌めて、看守についていくと恐ろしい怪物の顔が刻印された扉の前に案内された。


「この部屋に入れ」


「はあ…」


それだけ言うと看守は来た道を戻り消えてしまった。


「ま、入るか」


「大丈夫ですか、お兄さん。こんな見るからに怪しい部屋」


「死にはしないだろ」


ぎぃ、と重々しい扉を開く。


さあ鬼が出るか蛇が出るか。


と。


「……え?」


「は?」


そこはまるで幼稚園だった。

床に木馬やカラフルな球が散乱し、壁一覧にはびっしりと子供の落書きがところ狭しと貼られている。


「ほらリリィ遊んできなよ」


「バカにしてるんですか!」


俺が軽く冗談を言うとリリィが手袋を外してポカポカ俺の頭を殴ってくる。彼女の素肌に直で触れるのは危険と踏んだ俺はジョンに手袋を手配させリリィにそれを常時嵌めてもらうようにしている。なので力自体は年相応の威力だが手袋を外したので俺の頭には頭皮が焼けるような痛みが襲うのだ。


「いだだだだ!ごめん!俺が悪かった!」


「わかればいいんです!」


ぶすっと頬を膨らませそっぽを向く。幼いながらも恐ろしい女だ…。


その時だった。


今まで開いていた扉が勢いよく閉まり、リリィがその音に驚きパキラの服の裾を掴む。パキラ自身もその音にビビって少し後ずさりした。


急に部屋の照明が暗くなり、部屋の奥から胸から紐のとび出たピエロのフィギュアが転がってきた。部屋の奥には誰の気配も無いし自分から転がってきたとしか思えない。


「ひぇぇ…」


リリィはぴったりパキラにくっつき膝をがたがた震わせている。


「幽霊ってわけじゃあなさそうだな」


「なな何をしてるんですかお兄さん!そんな得体のしれないものペッ、して下さい、ペッって!」


そのピエロのフィギュアを拾い上げるとリリィがそれを捨てるように促すがパキラはそれを意に介することなく胸の紐をビッ、と引っ張った。


『…カラカラカラ…。やあ!ぼくはサンシャインランドのビーズだよ!さあぼくと一緒に遊ぼう!…カラカラカラ…。やあ!ぼくはサンシャインランドのビーズだよ!さあぼくと一緒に遊ぼう!…カラカラカラ…』


壊れているのか?その後も同じことを繰り返し、紐を引っ張ると押し黙る。


「な、なんですかね、これ…」


「逆に不気味だな…」


なんとなくリリィにそれを手渡しビーッと紐を引っ張ると今度は狂ったように叫び出した。


『移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!移動!』


強い光がどこからともなく俺たちを包み、思わず目を瞑る。次にゆっくり目を開けるとそこは黒い部屋だった。炭のようにまっくろな四平面に囲まれて俺とリリィは真ん中の大きなテーブルを囲うように立っていた。


「ここは…」


「お兄さん、これ…」


リリィが自分とパキラの首元を指し、手を当てると何やら冷たく硬い質感が。


「これは…チョーカーか?」


リリィからピエロを受け取り、再度胸の紐を引っ張るとうなだれたピエロは生命が宿ったかのように元気よくダンスを踊り出した。


『…カラカラカラ…ここにいるのはぼくの友だち!そしてこれからキミの友だち!さあ手を取り一緒に踊りましょう!…カラカラカラ…ここにいるのはぼくの友だち!そしてこれからキミの友だち!さあ手を取り一緒に踊りましょう!…カラカラカラ…』


ピエロがテーブルの周りをぴょんぴょん跳ねながら歌って踊る。テーブルにはオモチャの拳銃、生きている真っ赤なサンショウウオによく似た生物、クスリの薬ビン、ゲームでみたことあるような銃の薬莢など多岐に渡り一貫性のないようなものばかりが散乱していた。


生物は他に小さな足の生えたクジラ、花びらが首から咲いたサル・頭が黒い鉄の塊で覆われたイノシシなど他にも様々な種類がいるが彼らは決してテーブルの上から出ようとしない。逃げ出す気配も無い。


「リリィ、もう一度紐を引っ張って貰えるか?」


「は、はい」


ビッと引っ張るがなんの反応もない。


彼女がピエロの紐に手をかけてここに移動させられたと思っていたんだがそうではないのか?また別のトリガーがあるのだろうか。


「この中から選べってことなんでしょうか?」


「どうやらそうらしいな」


山ほどあるそのガラクタの中からそれぞれパキラが錆びた鉄剣、リリィが赤目のウサギの靴を選択する。


ピエロの紐を再度引っ張るとくるくる踊りながらピエロは答えた。


『…カラカラカラ……これでキミと貴方ら共同体!運命共同分かち合い!良かったネ!良かったネ!『ボクノート』と『ラビットブラスター』…カラカラカラ…』


「ボクノート?」


「ラビットブラスター…ってこの靴のことですか?」


ピエロが言い終わると錆びた剣とウサギの靴は溶けるように粒子に姿を変え、それぞれのチョーカーの中に入り込んでいった。


「どうなってんだこれ…」


すると今度は紐を触れてすらいないのに勝手にピエロは喋りだした。



「『あ、あー。あー聞こえているかクソ罪人共。俺は看守長のエイミーだ。名前が可愛いのは気にするな。こいつは特別恩赦だ。ちょいとした実験だ。お前らのチョーカーには爆弾が仕掛けてある。外そうとしたら問答無用でボカンだからおかしな真似はやめろよ。外したい?なら簡単だ。そのチョーカーを五つ集めてこい。外す時に爆発する?なら大丈夫だ。絶命している相手に(・・・・・・・・・)限り不発する仕組みになっている。飲み込めたか?お前たちはクソ罪人共同士でそれの奪い合いをして貰う。ちなみにその首輪、誰かに話そうとしても爆発する。死にたくなけりゃあ死ぬ気でそれ付けたやつを殺せ。以上だ』」


言い終わるが早いか室内にガスが流れ込んできた。急いで口を覆うがもう遅い、何かを訴えるリリィを横目にパキラの意識は闇に溶け込んでいった。

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