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黄金仮面の王


嫌な冷や汗が背中を伝う。どっと全身から汗が吹き出て口の中が乾燥してとてもカサつく。


左手だ。薬指と小指が切断されて床に落ちている。


無くなった指の断面からは骨が見え、風がより冷たく感じる。そこに無いのに動かせる気がして手を握ったり閉じたりした。

溢れ出るアドレナリンが痛みを軽減しているがそれ以上に状況を飲み込めていない自分に憤慨した。


その時だ。


「痛つっ!?」


何も無かった空間から突如鋭い何かがパキラの肩を切り裂いた。斬撃の方向を振り向くがいつもの部屋が瞳に映るだけ。


2撃、3撃と繰り出される不可視の斬撃に俺は全包囲に髪を伸ばし、全身を護る球状の防護壁を作り出し短く息を吐き出した。


取れた指を拾い切断面に合わせてくっつける。そこを縫うように髪で縫合し応急処置は済ませた。


「……?」


何かが肘から垂れ落ちた。


どろりとした何かが。


「ーー何ィいいいい!?」


透明な刃がパキラの左腕の裏から深々と食いこみ肘の肉ごと骨を断ち切ろうとしている。


瞬時に左腕を振り払い、血が地面に刺さるように滴った。


()、実際に地面に突き刺さった(・・・・・・・・・)のだ。


驚愕しているとドームの外から皇女が語りかけてきた。


「|黄金仮面の王(BB・キング)。それが私の力。水の形を変えて自在に操る能力です。喧嘩を売る相手を間違えましたね」


指を切断したのは斬撃ではなく俺の垂らした汗で削ぎ落としたのか。姿が見えなかったのは光を反射していたから。種が分かってしまえば簡単だがそれ故に対処も難しい。


「…クソっ!」


パキラは何も出来ない自分が歯がゆく、怒りを込めてドームを殴った。


「こんなことは言いたくありませんが貴方のような異常な存在を排除することに私は厭わないし躊躇わない。弱くてちゃっちい者ほどワンワンよく吠えると亡き父は言っていました」


『皇女殿下!!ここに居られますか!!?』


『『姫様ーー!!!』』


何故か外が騒がしい。

金属と金属がぶつかり合うような音と騒々しい足音が近づいてくる。


「呼んでいた応援も到着したようです。大人しく投降して下さい」


「ねえお姫さま」


「…気安く呼ばないで下さい。なんですか」


パキラは笑い飛ばすように言い放った。


「だっせえな。お前一人でケツも拭けねえの?」


「ーーッ、|黄金仮面の王(BBキング)…!」


皇女が叫ぶとおびただしい数の剣がドームを囲うように宙に現れる。皇女自身も気付いていなかったが、生まれて初めて抱いた「殺意」だった。


皇女が腕を振り下ろすと凶悪なまでに尖った刃が一斉にドームに向かって射出される。大きく地面が軋み、部屋に響く轟音。ドームは遂に形を崩すが倒壊した家具を巻き込み、地面をえぐるがその攻撃がしばし止むことは無かった。


床にはドームを形成した体毛がパラパラと落ちている。それを満足そうに皇女は見下ろしたがここで一つの事実に気付く。


「……居ない?」


「遅せェよ」


皇女が振り向くと背後には傷一つ無いパキラがそこに立っていた。再度攻撃を放とうとするがその瞬間彼の拳が腹にめり込んだ。


「ッ、おっ…!」


憎々しげにパキラを見上げる皇女。


「な、何…で……」


「『床』だよ。ほら、さっきお前が倒れて液が零れたからここ脆くなってたんだよね。で、ぶち抜いて背後取ったってわけ」


「有り得ない…私が、負けるなんて…」


「俺は弱くてちゃっちい力しか無いからよ、頭フル回転させないと勝てないのさ」


「この卑怯…もの……」


「言ってろクソガキ」


そのまま皇女の意識は闇に落ちた。










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