『ゆび』
髪。
通常人間の頭には10万本生えているとされていて全身の毛は約500万本にも登るという。成分の一つであるケラチンというタンパク質はトカゲの鱗だったり鳥の嘴の一つに構成され、死ぬと硬化する特性を持つ。
1本の髪の毛で100gの物質を持ち上げることが可能であり、理論上では12tまでなら耐えられるという実は凄い髪の毛。触覚などセンサーのような働きまですると言われている。
つまりどういうことか。
「何でっ…刃が通らないのです!?」
「《形状変化》・ドーム」
瞬時にパキラを覆うアフロのようなドームが出現する。皇女が剣で切り裂くが切れども増殖する髪の量に攻撃が追いつかない。
俺はこの髪を無限に生成でき、一本一本を手足のように自在に操れるのだ。一つ一つが脆くとも増殖し、絡みつくそれはまさに壁。
そう、どれだけ切れ味が鋭い斬撃だろうと耐久力が無限の盾の前には本体のパキラに傷一つ付かないのだ。
ちなみに早い段階でネタばらしすると長距離マラソンの後に脇腹痛くなったり足がだんだん軋むようにエネルギー切れするとただの髪の毛に戻るため無限は少し盛りました。すみません。
「先に言っとくけど俺、男女平等主義とか大嫌いだから」
「ごふっ…?!」
アフロドームから少し顔を覗かせた俺の右腕は硬質化した体毛が互いに絡みつき、巨大な角張った漆黒の篭手に姿を変えた。
《形状変化》・ナックル。
増殖させた体毛で自身の倍ほどもあろうかという肥大化した右手で相手を殴り飛ばす単純無比な一撃。
シンプルゆえに、その鉄のような右手は殴れば凶器へと変貌する。
パキラの放った拳は勇式皇女殿下のみぞおちを捉え、壁に殴り飛ばした。膝から崩れ落ちるお姫様。
その衝撃で床に薬で調合前の酸が入った土瓶が割れ、辺りにツンとした匂いが充満する。
「立って下さいよ勇者サマ。ほら、ここ空いてますよ」
トントンと自身の頬を人差し指でノックする。
「…いいでしょう。レベル3にごときに使いたくはありませんが見せてあげましょうか」
突然皇女殿下が上着を脱ぎ始める。
するとやけにデカい肩に入ったタトゥーが目に入った
「ーー『|黄金仮面の王(BB・キング)』!」
そう叫ぶが否か、皇女は景色に溶けるように消えてしまった。
「ーー!?」
何が起こったのか理解できないパキラは辺りを見回すがどこにも彼女の姿が見当たらない。部屋の隅で怯える両親をとりあえず2階に避難させ再度脱ぎ捨てられた上着に向き合った。
緊張感かセミのうるさい8月の真っ只中だからなのかどんどん汗が湧き出て止まらない。
1回下がろうと後ずさりすると何かを踏む感触がした。何も無かった筈だ。
恐る恐る下を見るとそこには柔らかい何か。
「……!!?」
血の滴る俺の『指』だった。
極力作者の人格は出さないつもりだったのですがブクマみて「ああ、ありがたいな」と思って書かせていただきました。拙い文章で恐縮ですが応援よろしくお願いします。あとついでに感想頂けると嬉しいです。




