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被験者1


重い空気が辺りを包む。

『先に動けば戦闘になる』とパキラの本能がそう叫んでいた。じっとりとした汗が背中を伝う。


その静寂を先に破ったのはブリキの兵士だった。


「…やめだ」


「は?」


「お前、今日を何回繰り返して(・・・・・・・・・・)いる(・・)?」


その瞬間パキラは心臓が握りつぶされたような感覚に陥った。何故こいつがそれを知っている?


「俺はな、7回…いや8回か。カレンダーをめくっても、時計の針を何度見返しても全く同じ『今日』。頭がおかしくなりそうだ」


「…それで?」


「このループのタイミングすら謎だ。朝起きていきなり景色が反転して同じ朝を迎えたかと思えば、昼飯に肉を食いちぎっている時にもループに巻き込まれる。まるで誰かに付き合わ(・・・・・・・・・・・)されてるみたいに(・・・・・・・・)、俺は世界から取り残されている」


「だからあの質問をしたのか『これは見たことないだろ』って」


「合点が行ったよ。お前を殺したタイミングで既にお前のパークでの攻撃は既に始まっていたってことだ」


目の前のブリキ人形はまるでテストで取った100点の答案を母親に見せて喜ぶ子供のように無邪気であどけない笑い声をあげる。


「俺にとって殺しはさほど気になることじゃない。朝起きた時に目玉焼きかご飯のどっちか選ぶ。そのレベルの葛藤だ。はは、こんなことになるなんてな」


「ふざけるなよ」


怒りを露わにしてパキラは自然と声が出た。


「お前のクソみたいな都合で人様の人生奪っていいわけ…」


「あー…ハイハイ。それね、結局人はそれを言い出すんだよ」


「は?」


「そもそも何でオレがあの女共を殺したと思ってるんだ?」


「…知るか、そもそもあいつらにはお前を襲う筋合いが無い。お前が一方的にーー」


そこだよ(・・・・)


「…?」


「人って狂っていてな。『自分が完全なる正義にいる』と錯覚した時に行動の枷がハズれる。だってお前、ハナからオレの意見なんて聞く気ねーもんな」


「そんなわけ」


「ある。大いにな。あの時オレはお前に片足を切断された状態で足を引きずっていた所をあの女共に発見された。女の片割れのデカい方が俺のトバされた足の断面にパキラ(おまえ)のパークの残滓があるっつったらその近くにいたガキがパークを起動させて話を聞くまでもなく俺を襲ってきたんだ、それから先は想像付くだろう?」


「…自己防衛の為とでも?」


「ふん、そこまでオレは綺麗じゃないさ。だがこれで分かったろう?1から100まで、そこに理由が無ければ(・・・・・・・・・・)そもそも争いは起こらなかった。あの女共が死んだ理由?そうだな簡単に言おう、彼女らは運が悪かった(・・・・・・・・・・)


「…へえ」


「そういう事だ。というかお前、オレは嫌いじゃなかったぜ?あの演技派な所とか特にな。あの刑務所にいた同士だ、大層なクソッタレかと思ったが友情ごっことは残念だぜ。お前には芯が無いんだ(・・・・・・・・・・)。まるで舞台装置にされた英雄(ヒーロー)さ!『ああ、これは怒らなければいけない場面だから怒らないと』とか自分の意思が見当たらねえ!」


「ーーうるさい!俺には俺の意思がある!」


「違うね!お前にそんなもの無い!脈々とお前のママやパパから受け継がれた『常識』を脳味噌に杭で打ち込まれた意思を持っていると錯覚したヒーローフィギュア、それがお前さ!…ガキと二人で過ごす内に元の世界が恋しくなっちまったのか?このマザコン野郎!」


激しく叱責されるその罵倒の中に聞きなれない単語が混じっていることにパキラは引っかかった。


「元の世界?お前、何を知っているんだ…?」


「…はぁ?お前、まだ理解してないのか?…いや、はは!そういう事か!いいぜ、いい機会だから教えてやるよ。あの『収容所』…いやこの『名札集め』そのものが転生者を対象にした(・・・・・・・・・)大規模な実験さ(・・・・・・・)!俺やお前は生き残ったがパークは原則一つしか(・・・・・・・・・・)持ち得ない(・・・・・)!お前も見たろう!?あのふざけた玩具の山を!アソコで7割の転生者は死に、生き残った転生者同士は何の因果か出逢ってしまう運命にある!俺とお前!この特性を活かしてヤツらは転生者(オレたち)で人体実験しているのさ!」


「待て、この世界には何億もの人々が居るのになんで俺たちを転生者だと判別できた?そんな話信じられるわけ」


「…『記憶を覗き見る』パークとそれを見る手段の『目』を飛ばすパークの両方を所持する能力者がここ帝都ギルガルドにいるって噂がある。オレはそいつをぶち殺しにいく予定だ。その道中でお前らと出会ったんだがな」

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