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RE


「……」


「そんなに見つめないで下さい。照れてしまいます」


微塵も思っていなさそうな聞き慣れた声と特徴的な棒読み。高身長のオレンジ色の作業着に身を包んだ女、チナツその者がそこに鎮座していた。


「え、え?お前なんで…」


「……どうかされましたか?」


「お兄さん大丈夫ですか?酷い顔色ですよ」


これが平心を保てるというだろうか。


俺は今戻ってきた(・・・・・・・・)過去に戻ってきた(・・・・・・・・)。手のひらを開けたり閉じたりしている内にそれがいよいよ現実であることが否応なく頭に染み込ませる。


「お前の、名前…。『チナツ』で合っているか?」


「…」


その無表情の中にも一瞬ビクッと動いた瞳が、いよいよこれが現実味を帯びてきた。続けてパキラは質問する。


「今から俺たちは冒険者ギルドに行こうとしている。そしてお前はこう言う『浮浪者と冒険者どっちがいいですか?』」


「ーー、未来でも見てきたような口ぶりですね」


「…ああ、多分俺の能力は不幸体質(アンラック)じゃなくてーー」


パキラがそう言いかけた途端に頭上から突如何かが降ってくる。勢いよく彼の頭にぶつかったソレ(・・)


「痛っ、え?何?」


「…タライ?」


「タライが落ちてきましたね」


「ま、まあいいや。で、実は俺は…」


ゴンッ


「いや何でだよ!!えっどういうこと?どういう理論でタライが降ってくるの!?」


「なんにも無い所から急に出現しましたよ…」


「どうやらアナタのその言いかけたそこに答えがありそうですね」


…すると何か?俺は俺の身に起きたこと・未来について話そうとすると罰としてタライが降ってくるってことか?


「おいなんだこのクソふざけた能力!…まあいいや、でもとにかく今日はギルドには行かない。絶対にだ」


俺の圧と迫力に押されたのか二人は別段食い下がることは無く、そのまま今日はここで待機する流れとなった。ちなみにここはチナツの上司が手配した仮住居らしい。どうやら国のお偉いさんとの伝手があるのか家の周りは立入禁止とされているらしい。


色々整理した結果、俺のチョーカーの中の力はひとまず「死に戻り」と定義付けた。さっき戻されたタイミングといい、あの男に殺された直前といい俺はチョーカーの紐を引いていた。

これらを踏まえると、1回目に紐を引いた時が『セーブ』だとすると2回目に引いた時に『リセット・ロード』してセーブしたタイミングに死に戻ることになる。


現在時刻は12時59分。二人と別れた分岐点1分前だ。


家の周りを警戒する意味も込めて、二人を自宅待機させパキラは家の周囲を見張ることにした。ガチャリと玄関の扉を閉めて、ゆっくりと辺りを見渡す。


濃い、新緑の香りがパキラの鼻腔を撫でた。ここは深い森の中。人の気配は一切無い。


その時だった。


パキラのすぐ近くの茂みからガサリと何かが動いた。


驚いて飛び退くとそこから長い耳をした小動物が顔を覗かせる。思わず胸を撫で下ろしたパキラだったが突如銃声が鳴り響いた。何者かがパキラの胸元を撃ち抜いたのだ。


「…ぉ、ッ……」


胸を抱えてそのまま地面に膝を立てて崩れ落ちる。どくどくと鮮血が堰を切ったように溢れ出て止まらない。


「ま、不味いい!人を撃っちまった…!」


茂みの奥から頭を抱えたオールバックの男が飛び出してきた。その男はパキラに近寄ってきて抱き寄せた。


「む、胸を貫いてる…これは……」


出血による物なのか、心臓を撃ち抜かれたからなのか頭がぼーっ、として視界がぐるぐると回り始めた。薄れる意識の中、パキラは思い出したように右手に全力を込めチョーカーの紐を弱々しく引っ張る。そこでパキラの意識は途切れた。


「ご愁傷さまです」


何度これを聞いたのだろうか。


アレからパキラは6回死に、現在7回目の生を受けている。


これではっきりしたのは『ギルドに行かない』という選択肢を選ぶとその時点で俺の死亡ルート(バットエンド)に繋がるという事だ。


最初の銃殺・階段から滑り落ち撲殺・家が崩れたことによる圧殺・本棚が急に倒れたことによる圧殺、果てには隕石による焼殺・落雷による焼殺などおよそ普通に考えてありえない死に方をした。


これ以降は試すのも苦痛な上無意味と踏んだ俺は一回目の死に方同様にひとまずギルド協会に出向くことにした。


あの時の受付嬢のセリフを覚えているだろうか。


力を量る水晶が壊れた(・・・・・・・・・・)ため、一年後にまた来(・・・・・・・・・・)てくれ(・・・)』と。


つまりこれを壊すバカより先に冒険者登録をすれば俺たちを殺したあの男と出会わずに済む確率が格段に跳ね上がる。


「いえ、なんというかその…ご愁傷さまです」


7回目のリトライ、もうこれ以上死にたくない。


「大体分かった、立て、ギルド行くぞ」


「ち、ちょっと待って下さい、なんでワタシが話す内容が分かったんですか?」


「…引きこもり(ニート)はもう飽きたからな」


「質問の答えになってないですよ!」


そのまま半強制的に家を出る。若干困惑の色を見せる二人を尻目にパキラは決意を固める。


もう二度と、この二人(・・・・・・・・・・)は殺させない(・・・・・・)


恐怖と緊張で震える心を抑えつつ、パキラは首元の紐を引っ張るのだった。


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