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二種類に分けたとして

 お世話になっているグループのコンテストテーマ、「『この世界には二種類の人間がいる』から始まる作品」の、テーマだけいただいて作成しました。

「この世界にはさ、二種類の人間がいるらしいぞ」

「へぇ」


「……」

「……」


 はい、しゅーりょー! なんて、心の中で叫んでみる。ま、話題に出すタイミングが悪かったかね。自省しつつ。


 二文字で会話を断ち切った幼馴染は、目の前で夕食を作っていた。表情は涼しげなくせに、あれは内心めちゃくちゃ焦っていると俺は踏んでいる。だって、今日は俺ん家の両親がいないので、俺の分夕食を増やさなきゃいけなくなったからである。伝えるのを忘れていて、学校からの帰りに伝えた時の怒りようは久しぶりに見た。


「セイ、お皿とって」

「白いやつ?」

「ええと、青の縁取りがあるやつの方がいいと思う。量的に」

「あ、これな。ほーい」

「そう、ありがと」


 食器棚から指定された皿を取って渡す。彼女が焦っているのは俺のせいなので、今日の俺は大人しく助手に回るのだ。


 いつもはからかっている小さな背と小さな頭が、そう広くもないキッチンをちょこまかと動く。

 よく動くなあ。鍋で煮物をしつつ、フライパンに切ったものを順番に入れながら炒めていく様子を見て、俺は感心する。普段はダイニングの方でテレビを見ていることが多いから、こんなふうに動いているのを見るのはあまりない。


 お、そうか。


「飯を作るやつと食べるやつとかか?」

「喧嘩を売るやつと買うやつでしょ?」

「ちょ、待て! それは置け!」


 ふと思いついたことを言ったら、絶対零度の視線でつい今まで火にかけられていたフライパンを顔の前に掲げられていた。勘弁してくれ! それはシャレにならん!


「何、さっきから。誰のせいで急いでご飯作ってると思ってるの」

「はい、俺のせいです。本当にすみませんでしたリツ様」

 ははー、と大袈裟に頭を下げると、リツはフライパンをコンロに置いて火を消した。とりあえずは落ち着いてくれたらしい。


「二種類って言っても、かなり大まかだよね」

「まあな。でもよく言わね?」


「聞いたり読んだりすることは多いよ。結局分け切りましたってのは聞かないけど」

「答えのない命題? ってやつじゃね?」


「じゃあそんな答えのない問いをこの忙しい時にわっざわざ引っ張ってきたセイの真意や如何いかに!」

「続きはまた来週〜じゃねぇわ!」

 長年隣にいるからこその、このテンポが楽しい。基本無表情の幼馴染が、こういう時は安心しきったように表情が緩むのも、嬉しい。


 差し出してくれたお茶をもらって、一口。飲んだ後のこの一息は力が抜ける。


「あ」

「なん?」

「髪を染める人と染めない人、とか」

 にや、と笑いながら、リツはキンキンにしている俺の頭を指差した。


 俺は金髪に染めていて、リツは染めたことのない綺麗な黒髪だ。そう考えると同時に、最初にこの色にした時のことを思い出して、俺の中の二種類が結論を見せた。


 ああ、俺……護りたいと思ったからなんだよなぁ、こいつを。


 まだ小さい頃、何も知らなかった馬鹿なガキだった俺と他の奴らは、リツをいじめていたことがあった。それを親に物凄く怒られて、こんこんと諭されて、ついでとばかりにリツの住んでいるところに手伝いと称して放り込まれて現実を目の当たりにして。

 やっと、俺が何もわかってない馬鹿なクソガキだと知ったのだ。


 それから俺は金髪に染めて、元々目つきが悪かったから、そんなやつがリツの隣にいるってことで周りが怖がって、リツはいじめられなくなった。

 今やその隣が定着しちまって、今度は逆に俺の風紀指導でリツが呼び出されるなんてこともある。


 護るものと護られるもの。


 でもこの二種類は時に逆転したりもするから、結局は分け切れないってのが答えなんだろうな。


「ちょっと、なんか勝手に納得したような顔されても困るんだけど」

「おう、まあそんな感じだ」


「何それ。意味わかんない。ってか頭に腕乗せないでっていつも言ってるでしょ」

「ちょーどいいんだよ。ほら、高さがな」


「それするから私の背が育たないんだって!」

「そーかそーか。俺、お茶の後の一息みたいな関係が好きだわ」


「全っ然、意味わかんない! 急に話飛ぶのやめて!」


 とりあえず、この幼馴染には頭が上がらん。

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