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今までシルヴィは毎月のようにローゲを訪れていたから、また来月に彼女と会えることをニコラスは疑っていなかった。
その時までに自分の結論を出さなければ。
ニコラスはそう思った。
ところが、彼の予想に反し、それから二カ月近く経ってもシルヴィは士官学校や裏山に顔を出すことはなかった。
本当は何気ないふうを装ってラザールに、そういえば最近シルヴィが来ないな、とでも訊きたかった。
ごく自然に、と思ううちに、どういう口調でどう訊けば不自然でないか考えすぎてしまい、ニコラスはかえって混乱した。
結局ニコラスは二の足を踏んだ。
そんな彼の心情を透視でもしたのだろうか、スヴェンが
「そういえば、最近シルヴィ殿がローゲに来たという話を聞かないな」
とラザールに話しかけた。
「ああ、そう言われてみればそうだな」
ラザールの反応はあっさりしたもので、それで終わりだった。
シルヴィにここに来るよう促すなり、手紙を書くなりしろよな!!?
ニコラスは心の中でラザールを責めた。しかし、しっかりしているのにどこか抜けたところもあるラザールにニコラスの心の声が届くはずもなく、シルヴィは士官学校に姿を見せないままだった。