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それから四人は持ってきた昼食を池のそばで食べ、のんびりとした雰囲気を楽しんだ。


冬の陽だまりのぽかぽかとした空気に時にあくびをもらしながら、ニコラスとラザールはとりとめのない士官学校の友人たちの話をして笑い合った。


アデライードは二人の話が分からないながらもにこにこと柔らかい笑みを浮かべている。


ニコラスはふと、シルヴィが黙ったままなことに気づいた。彼女の普段は血色のいい頬が、今は何だか青白い。


体調でも悪いのだろうか。それとも、風邪でも引いたのだろうか。


そんなことを思いながら


「シルヴィ? どうかしたのか? 今日はずいぶん無口じゃないか」


とニコラスが尋ねると、シルヴィははっと息を呑んで顔を上げた。


「体調でも悪いの?」


シルヴィの横に座っていたアデライードがそっと手を伸ばし、シルヴィの額に触れ、


「あら? 少し熱いかしら?」


と自分の体温とシルヴィのそれを比べた。


ニコラスの隣にいたラザールは立ち上がってシルヴィの横まで移動し、


「どれどれ」


と妹の頬に自らの手を押し当てた。


「大丈夫よ」


そう答えたシルヴィの声はかすれていたから、ニコラスは彼女ののどの状態を心配した。


ラザールも同じことを思ったようで、


「風邪でも引いたんじゃないのか?」


と険しい表情でシルヴィを見つめた。


「大丈夫」


シルヴィはもう一度繰り返したが、ラザールは首を横に振った。


彼はそのまま立ち上がり、


「いや、風邪は引き始めが肝心なんだ。もう城へ戻ろう」


と一同に帰城を促した。


「そうね、それがいいわ」


アデライードもうなずいて立ち上がり、シルヴィに向かって手を伸ばした。


シルヴィもアデライードと手を繋いでから体を起こした。


「悪いな、ニコラス」


とラザールが詫びたから、ニコラスは


「気にするな」


と笑ってみせた。


「……ごめんなさい」


シルヴィがうつむきがちに謝ると、


「いいのよ、シルヴィ」


とアデライードがシルヴィを励ますように微笑んだ。


体調が悪いなら仕方ない。ニコラスもそう思ったのだが、シルヴィが気に病んでいるようだったため、彼は


「気にしなくていいよ」


とシルヴィに声をかけた。


いつも活気に満ちている彼女が風邪なんて何だか想像がつかなかったが、これだけ大人しいということは、やはり体調が悪いのだろう。


彼女には風邪で寝込む姿よりも剣を振っている姿のほうが似合うと思ったニコラスは、何の気なしに


「元気がないシルヴィなんて、何だか張り合いがなくてつまらないしな」


と言った。


「行こう」


ラザールが歩き出したので、ニコラスも自分の馬を目指して前進した。


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