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こうして二人は月に一度の頻度で顔を合わせ、二人で一緒にどこかのパーティーに出席し、その翌日に手合わせをした。
手合わせの結果は、やはり力で勝るニコラスが勝ち続けたが、彼としてもそれが腕力の差によるものだと自覚していた。剣技だけに注目するならば、ニコラスは内心素直に負けを認めていたし、他の士官学校の生徒と比べても、シルヴィの剣の扱いはやはりすばらしかった。
初めて出会った4月から半年も経つ頃には、二人はすっかり打ち解けた。
いつの間にかニコラスはシルヴィのことを『お前』と呼び、シルヴィは彼のことを『ニコラス』と呼ぶようになっていた。
いつも一生懸命なシルヴィは、ニコラスに祖国スコルにいる自分の従卒たちを思い出させた。
スコル王国のために剣を捧げ、自分やスコル王家に忠誠を誓う従卒たちは、ニコラスにとって弟分のような身近で大切な存在だった。
彼はシルヴィと剣を交える時、従卒たちに稽古をつけているような気になった。だからこそ彼女に対して親近感にも似た感情を抱いたのかもしれなかった。