第7話 魔法を使おう。そんなお話。
どうもち~やんです。「評議会」っていい響きだと思いませんか?
注意:一部原爆被害などを連想させる表現が含まれています。苦手、または不快だという方は前半部分のみお読みください。
誤字脱字や不自然な表現の指摘は感想欄にてお願いします。
ハイエナが仕掛けてこないことを確認して、インベントリを開く。
「えーと、魔法書、魔法書......。あった!」
インベントリから急いで【基本第一魔法書】を取り出す。
「魔法の......使い方......」
【基本第一魔法書 〜バカでもわかる基本魔法〜】
[ 魔法とは、古来から■■■の持つ特殊な力と考えられてきた。しかし近年、その考えは否定されている。最新の研究によると、あらゆる物体には魔力を通す■■としての役割を持つ物質が含まれていることがわかっており、これらの多く含まれた物質こそが魔法石である。またまれに純粋な結晶が見つかることもあり、それらは魔法結晶と呼ばれる。更に加工すると......]
「わかりずらい!」
そんなことより、魔法の使い方を知りたい。
「詠唱は......あった!」
[魔法を使うにあたっての基本である詠唱だが、この詠唱には二つの種類がある。一つ目は、精霊魔法を使う際に精霊を使役するための詠唱である。もう一つは、魔法を使う際の詠唱である。後者は熟達すれば詠唱短縮や詠唱破棄が可能。次頁からは、主な基本的な魔法の詠唱を説明する。
火属性魔法
第一詠唱 炎となりて顕現せよ。〜
第二詠唱 その力は身を焼き、命をも燃やす。〜
第三詠唱 我が身に集いて炎矛となれ。〜
水属性魔法
︙
︙ ]
「第一詠唱?よくわからないけど、とりあえず唱えてみるか。」
息を大きく吸い、ハイエナたちを見る。
「「「「「「「......」」」」」」」
あらやだ!増えてる!誰か助けて!
さっそく心が折れそうになったが、なんとか持ち直す。
「【炎となりて顕現せよ。その力は身を焼き、命をも燃やす。我が身に集いて炎矛となれ。】......っ!!」
突如、砂漠に火球が生まれる。そしてその火球はより眩しく、より大きいものとなり、やがてはすべてを飲み込み......、爆発した。
****************
俺の名前はアルフレッド。これでもベテランの冒険者だ。今回のクエストは砂漠を通る隊商の護衛。通常なら小遣い程度にしかならない稼ぎに長過ぎるクエスト期間と、あまり手を出したくない依頼だ。だが今回は違う。
「イリス、ウッズ、異常はなかったか?そろそろ昼にしよう。」
「了解!」「わかった。」
こいつらはどちらも俺の仲間で、3人でパーティーを組んでいる。今回このクエストを受けようと言い出したのは、イリス。この砂漠は、普段は魔物らしい魔物はおろか盗賊すら出ない。出たとしても食糧を盗むサルだけ、といった物資さえあれば安全な場所だ。しかし最近はハイエナのような見た目の中レベルモンスター【デバスターズ】や、指定中レベルモンスター【レッサー・デーモン】の目撃情報もある。つまり、この砂漠で何かが起こっている。
だがおかげで不安になった商人たちが報酬を釣り上げ、俺ら冒険者はガポガポだ。
「明日でこのクエストも終わりだな。」
隊商の護衛は距離が長いので、クエスト受注時の証明書を到着地のギルドに見せることで報酬がもらえる。そして帰りは別の隊商の護衛をしながら、というのが定石だ。
「明日でこの味気ない食事ともおさらばだな。」
「まだ帰りがあるけどね。」
イリスとウッズの雑談を聞き流しながら、護衛依頼用の乾燥肉とパンを取り出す。すると、突然周囲の魔力濃度が下がるのを感じる。......異常事態発生だ。
「何!?」「なんだ!?」
二人も異変に気づいたようだ。雑談を止め、警戒態勢に入る。
「この魔力の消費量......ボスクラスか?」
自然界には稀に「ボスクラス」と呼ばれるモンスターが生まれることがある。中には大魔法やレアスキルを使ったりする個体もいるため、国やギルドからは即刻討伐令と討伐パーティーに対する特別報奨金、それに勲章が用意されている。稼ぎのチャンスだな......。そんなことを考えていると、突然西の空が光る。否、はるか遠くにとてつもなく大きな火の玉が見える。
「馬鹿な......!魔王クラス?いや、それ以上か!」
魔法の行使は思ったよりも遠くで行われている。せいぜいがボスクラスだと思っていたので、もっと近くにいると錯覚していた。
「......!イリス、ウッズ、伏せろ!それと一応結界で馬車を守れ!」
叫ぶと同時に、火の玉が爆ぜる。猛烈な光で思わず目を閉じる。しばらくして、爆風。次いで轟音。皮膚が焼けるように熱い。
(俺らのパーティーはランクA、全員防御値もそこそこある。それなのに、この距離で熱ダメージを喰らうとは......!)
数秒か数分か。長過ぎる時間の末、ようやく体を起こす。後ろを見ると、ふたりとも無事なようだ。防具の隙間から覗く服は焼け焦げ、やっと立っているような酷い有様ではあったが。しかし、馬車の方は無事ではなかったようだ。一応結界で防御していたとはいえ、荷台は燃えて馬は力尽き、内臓が飛び出ている。御者や商人、商品はどこへ飛ばされたのか姿が見えない。物理結界は張ってなかったため、熱戦と爆風でやられたみたいだ。依頼は失敗、そんなことを考える余裕すらない。
(なんだ!?何なんだ今のは!?)
モンスターたちとの数々の戦闘を生き抜き、今や国でもそこそこ有名なパーティーとなったアルフレッドたちにも、これほどの魔法は見たことが無かった。いや、この世界の誰もが見たことはおろか、想像したことすらなかっただろう。それほどまでに凄まじい魔法だった。
「少なくとも魔王クラスを軽く上回る実力......か。」
ギルドに報告したら確実に大混乱が起こる。騎士団や魔導士が派遣されるかもしれないし、ことの重大さを理解しない評議会の老害共は民心を煽るか、もみ消そうとするだろう。しかし......。
(結局報告はしないと......か。面倒なことになった。)
一人のバカの行いが、本人の知らぬところで確実に厄介事を引き寄せていた。
チート??