第6話 幼女は意外とオールマイティ。そんなお話。
本当は昨日投稿する予定でした。
朝起きたら、食糧として取っておいた饅頭が消えていた。
「いやいやいや。」
「ないってないって。」
色々現実逃避してみたが、無いものは無かった。ちなみに僕はあの後すぐ寝たので、犯人は別にいるはずだ。
「不味いね。」
......というか、かなり不味い。これは人間に会える会えない以前の問題だ。
「......」
こうなったら犯人を探し出して、取り返すしかないだろう。人のものを盗ってただで帰れると思うなよ!きっちり落とし前も付けてあげよう!......しかしいつ盗られたのかもわからないのに、そう簡単に犯人が見つかるわけが......。
「......っ!?......」
「......」
少し先で饅頭の袋を腕いっぱいに抱えているサルっぽい生き物と目が合う。見つかった。簡単に見つかった。
「まんじゅうかえせぇぇぇぇぇ!」
「キャンッ!」
くそうアイツめ、逃げやがった!こうなったら砂漠のデスレースの開幕だ!意地でも取り返してやる!
「......はあ、はあ......ちょっと......まって......。っ!......おい......はあ、はあ......まてって......いってるだろ!」
結論。僕の足は遅すぎたみたいだ。いつまで経っても差が縮まらない。いや、サルは足が速いというから、このサルが遅いだけ?
「......あっ!!」
あのサル、今こっち向いて笑わなかったか?
「......」
「上等だぁぁぁぁ!!この糞ザル風情がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「キャンッ!」
そろそろ体力が本気でヤバイというときに、頭の中に声が響く。
―――〈スキル【俊足】を入手しました。〉
「......は?......何?」
一瞬混乱する。何今の声?誰が喋ってるの?スキルってこうやって獲得するの?......そうだ!ヘルプさんに聞いてみるか!
「えと、スキル......習得......。......え?」
どうやらスキルには、ある条件を満たせば勝手に手に入るものもあるみたいだ。でも個人差があって条件を満たしても手に入らない人も多い、とヘルプさんは言っている。
「そういえば......スキルの使い方も載ってるかな?」
......書いてあった。スキルは頭の中でイメージするか、スキルの名前を言えば発動するらしい。魔法系のスキルは詠唱が必要らしいが。
「詠唱がわからないと、魔法は使えないのか。......って、饅頭は!?」
慌てて見ると、サルはまだそこでニヤニヤしていた。......僕がバテて動けないとでも思っているのか?
「バカにして。すぐ追いついてやる。......【俊足】っ!!」
すると、急に足が軽くなったように感じる。否、ただ単に足が速くなっただけみたいだ。
「すご......。時速90キロくらい出てる......?」
不意を突く形で、簡単に追いつく。
「捕まえた!まんじゅう返せ!」
「キャンッ!?」
サルを捕まえ、手に持ってる饅頭を......。こうやって......。......あっ!引っ掻かれた!
「おい逃げるな!」
「キャンキャンキャーンッ!!」
凄え、時速100キロは超えてたぞ。......ということは、今までは遊ばれてただけなのか。......なんだか腹が立ってきた。
「糞ザルがぁぁぁぁ!お前なんて死んじまえー!」
......いけないいけない。怒鳴ったら急に冷静になった。......あのサルめ。僕が寛大でよかったな。次はないからな。次は。
「......はあ、なんか無駄に疲れた。」
とりあえず、饅頭を口に入れる。【俊足】の効果はいつの間にか消えていた。
「......そういえばインベントリなんてのもあったな。」
ふとメニューに他の項目があることを思い出す。画面を開き、インベントリをタップする。
「この饅頭って......入るかな?」
......入った。正確にいうと、念じると手に持っていた饅頭が一瞬で消えてインベントリの中に【もみじ饅頭 4】という文字とイラストが出てくる。そして、インベントリから出すときには同じく念じるかアイコンをタップすればいいらしい。......このアイコンって誰が考えてるんだ。
「......まさかあの幼女神......な訳ないよなあ。」
本当に謎だ。構成物質といい、このメニューは謎すぎる。
「......ん?これ何だ?」
インベントリの下の方に、見覚えのない2つのアイコンが並ぶ。
「なになに。えーと、天恵武装【オーディン・グングニル】?......それと、【基本第一魔法書】??」
説明を読む。
【オーディン・グングニル】
[【滅ぼす者】の槍。その槍先は決して外さず、持ち主を見失わない。【攻撃補正+1000】。]
「ワーオ。ナニコレ。」
......僕は何も見なかった。僕は何も見なかった。僕は何も見なかった。僕は何も......よしっ!これで記憶は完全に消えたはずだ!僕は何も見ていない!【滅ぼす者】?何それ?そんなヤバい名前、聞いたこともありませんよー。......気を取り直して、次にいこう。魔法書の方だ。
【基本第一魔法書】
[お前!読んでるか!世界中に溢れる第一魔法の詠唱を、私が一つにまとめてやったぞ!これで怖いものなしだな!あ、あと、後で■■■きゃい■な■ことが■■■ら■■■■■■■■■■]
......さて。どこからツッコもうか。とりあえずメニュー画面は完全にあの幼女神の管理下にあるらしい。スキルの説明は自分で書いているみたいだ。後半は文字化けしていて読めないが。さらにこの魔法書も自前でまとめられた感じがするし、見かけによらず意外とオールマイティらしい。あの幼女は。......と、そんなことを考えていると。
「「ギャオォォォォォン!!」」
「っ!?何!?」
突然の咆哮に驚いて振り向く。と、......でっかいハイエナがいた。何これ怖っ!あ!やばい。漏れそう。漏らしてもいいよね?誰も見てないし。
「「グルウゥゥゥゥゥゥ!!」」
訂正。漏らすだけの時間すら無いようだ。逃げなきゃ。あ、足が動かない。
「っ!【俊足】っ!!」
覚えたばかりのスキルを使い、逃げる。荷物もないし、このまま奴らを振り切って......!
「「「「グルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」」」」
「......なんで!?」
どうやら包囲されてたみたいだ。やばい。詰んでる。どうしよう。
「いや。まだ使ったことはないけど。詰んではいないっ!」
......どうやら魔法書の出番みたいだ。
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