第4話 異世界へ行こう。そんなお話。
どうも~。ち~やんです。家に客間があるって憧れませんか?
女神様と呼ばれる幼女についていくと、今度は客間のような空間に通された。内装は相変わらず白一色だが、テーブルの真ん中に煎餅と饅頭があるのはなぜだ。
『おま......貴方が選んだ世界の初期スポーn......初期座標はとある惑星の地表になります。その惑星にはおまえら......じゃなくて貴方がたと変わらない人間種が住んでいる......ます。他にも色々種族はいますが、省略する......ます。とりあえず人の住める場所に飛ばすから、そしたらあとは自由にしろ......てください。』
「とりあえずわかったけど、もうちょっと詳しく教えてくれない?」
敬語が話せてないとか省略するなとか色々言いたいことはあるが、多分言っても無駄だと思う。気にしたら負けだ。
『前の世界と違うのは、人っぽい生物種が多いこと!色々ファンタジーっぽいこと!神の存在が認知されていること!それだけ!』
「もはや敬語を使う気すら無いね。」
だけどなんとなく世界観はわかった。とりあえずファンタジーっぽいと思っておけば間違いないだろう。
『じゃあ細かい設定をするからさっさと決めろ!』
幼女神はそう言うと、タブレット端末のようなものを投げよこす。
「なになに......設定......きゃらくたーくりえいと?ってゲームか!」
渡された端末の画面左上には英語で「Character Create」と書かれてある。次いで名前の入力欄と種族選択、性別選択があるが、そこはもう埋まっていた。
────────────────────
NAME 【利上 優】
RACE 【精神体(人間族)】
SEX 【中性(男性)】
────────────────────
「......」
結局精神生命体らしい。すると何かを察した幼女神が口を開く。
『見た目が人間の男の憑依体を作るから大丈夫だぞ!』
......何が大丈夫だ。人外じゃないか。しかしこんなところで躓いていては永遠に先に進めないので、気を取り直して「次へ」と書かれたところをタップする。すると次は職業選択の欄があった。
「【一般村人】、【一般市民】、【高級市民】、【一般農民】、【行商人】、【一般商人】、【武器商人】、【奴隷商人】、【高級商人】......って多すぎ!」
『何かあったら「ヘルプ」のところを読めよ〜。』
あるのかよ、ヘルプ!心のなかでツッコミを入れながら「ヘルプ」の画面を開く。
「え~と、設定......職業......整理......っ!ここか!」
「ヘルプ」によると、職業は分類化して探すことができるらしい。
「分類、職業っと。これでいい。え~と、一般職業、生産系職業、戦闘系職業、支援系職業、神職、【無職】、か。......無職?」
どうやら【無職】は職業のようだ。職業補正で【HP補正−50】と【無職の呪い】があるらしい。......絶対なりたくない。
「とりあえず異世界は危なそうだから......戦闘職でいいかな?」
戦闘系職業の欄には、【戦士】【剣士】【侍】【槍使い】【|将軍】【暗殺者】【盗賊】【王】【勇者】【魔王】【弓使い】【魔法使い】【魔導士】【魔術師】などなど、豊富な職業があった。......っていうか勇者ってそんな簡単になれるんだ。選ばれし者じゃないの?えっ違う?そうなんだ、へ~。
「魔法......使ってみたいなあ。」
ということで、職業は【魔術師】にした。魔法系の職業は3つあったが、一番補正が高かったのが【魔術師】だったからだ。だって【MP補正+500】と【技術値補正+2ランク】だよ?これはもう取るしか無いだろう。職業を選ぶと、ステータスの割り振りとスキルの決定だ。僕の初期ステータスはこうだった。
────────────────────
HP 100
MP 600
防御 100
攻撃 100
筋力 C
技術 A
敏捷 C
星力 C
幸運 C
火 A
水 A
雷 A
風 A
土 A
光 A
闇 A
空間 A
顕現 A
────────────────────
正直高いのか低いのかわからない。「星力」とか「顕現」とかそういう謎ワードは無視する。ステータスは合計200まで割り振れるらしいので、HPと防御にそれぞれ100ずつ割り振る。次はスキルだが、これはランダムで3つ決定されるらしい。でもランダムといっても職業やステータスが考慮されるので、なんというか悪いものは出ない、と言ったのはあの幼女神だ。......信用できない。
『ステータスは決まった?じゃあスキルを決めるから「スキル決定」のボタンを押せよ!』
言われたとおりにボタンを押す。すると空欄だったスキル欄に3つのスキル名が現れた。
【第一魔法】
[基本的な魔法。火属性魔法、水属性魔法、雷属性魔法、風属性魔法、土属性魔法がある。尚、このスキルを所持していても職業やステータスによっては使えない場合がある。熟練度に応じて威力が変わる。]
【鑑定】
[相手のステータスを見ることができる。ただし名前、種族、性別は見ることができない。熟練度に応じて見られるステータスの数が変わる。]
【走査(レア)】
[物体に対して使うと、その物体の詳細がわかる。空間に対して使うと、一定の範囲内の味方や敵、トラップなどの詳細がわかる。熟練度に応じて情報量が変わる。]
なんというか、まともなものが出た。【鑑定】と【走査】がかぶっているような気もするが、十分に使えるスキルなのでいいだろう。
『じゃあ天恵スキルと最低限の装備を渡すから、さっさと異世界に送るぞ!何か言い残したいことはあるか!』
「僕は無実だ!......じゃなくて、もう行くの?あとまだ聞いてなかったけど名前は?」
『!?』
......なぜか幼女が焦りだす。心なしか顔も赤いような。なぜだ。解せぬ。
『も、もう行くことは決まっている!決定事項だからな!今更嫌だと言っても無駄だぞ!どうしてもと言うなら考えてやらないこともないこともないこともないけど......』
「少し落ち着け!......それで、もう行くんだったらしょうがないけどどうやって行くの?」
『そ、そこの転送陣の上に乗って、そしたらすぐだ!』
どうやら床に彫られている複雑な模様が「転送陣」みたいだ。グズグズしていても仕方ないから、さっさと乗る。一瞬、幼女神が寂しそうな顔をした気がした。
―――転送陣の複雑な模様に沿うように青い光が流れ、転送陣全体も白く、淡く光る。
『そ、それと!私の名前はオーディンだ!ほ、本当は!神に名前を聞くときは契約のときだけだから!つ、次からは!気をつけろよ!』
そして体が青い光に包まれて―――
―――世界が暗転した。
北欧神話で、戦争と死の神です。