衝撃
「え、ど、どういうことですか…」
僕は思わず唖然としてしまう。なぜ甲城さんが明確な理由もないのにそう断言したのかがわからなかったからだ。
「その犯人は前まで私達と一緒の世界にいたのです。しかし、彼の場合は間違ってこの世界に飛ばされたのではなく自分から来たのです」
「そ、それはどういう事ですか?」
「彼は私達の世界では禁止されている黒魔術を使って他の世界に行けないかを試していたのです」
黒魔術…名前や危険なものだと聞かされているものの、実際にどんなものかはわかってはいない。
「黒魔術ですか…それって一体どんなものなんですか?」
「黒魔術とは私達が呪文を唱えて使う魔法とは違い、今回のように他の世界に行ったり寿命や病などで亡くなったものを誰かを生贄にしたりや他の動物の骨を使い復活させたりなど私達の世界でやってはならない呪文です。これを使うことにより世界の法則が変わった事例もあるので国が使うことを禁じているのです」
つまりその犯人はそれを使いここに来たのか…でも、
「なぜその犯人はわざわざこの世界に来たのですか?」
この世界に来てもお金が入るわけでもないし自分の技術や装備をあげようにも、そういう場所がないので来ても不便なだけだと僕は疑問を覚え質問する。質問すると甲城さんはふと寂しそうな顔をし間を空け答える。
「それは、彼が国から逃げるためです」
「国から、逃げる?」
「はい、彼は元々私達のいた世界でたくさんの人を殺し国から追われそれから逃げるために黒魔術を使いこの世界に来たのです。そして、今回のニュースで流れた事件は彼がたくさんの人を殺そうとしようとし失敗したのではないかと考えられます」
つまりその犯人はこの世界に逃げてきたが自分を止める人がいないことを良く思い殺そうとした、
「そ、それなら早く犯人を捕まえなくちゃ!」
「私もそう思いますが、彼の居場所を知る人は誰もいないのです…」
甲城さんがうつむきながらそう告げる。どこにいるのかわからないのなら手の打ちようがない。
「でも、なんで甲城さんはそこまでその犯人のことについて知ってるのですか?」
「そ、それは、様々な事情があるんですけど、今は言えません、ごめんなさい…」
そう言い甲城さんは深々と頭を下げる。
「あ、謝らなくても大丈夫なので、頭を下げないでください!聞いた僕も悪いので!」
自分から聞いておいて頭を下げさせるのは罪悪感がすごいので僕は慌てて謝る。
「………」
「………」
その後沈黙しかなく気まずい雰囲気となる。
「あ、あの、その人の名前ってわかりますか?もしわかればかなり楽になると思うので」
僕は慌てて考えた質問をする。
「は、はい、わかります。彼の名前は」
甲城さんが名前を言おうとした直後、
甲城さんが消えた
「…え?」
僕は一瞬何が起きているのかわからなかった。甲城さんが消えるのと同時に何かが壊れる音がした。周りを見渡すと壁が壊れ外が丸見えとなっている。
「な、なにが起きているんだ…」
「あ、天神様…に、逃げてください………」
さらに混乱していると甲城さんの声が聞こえた。声の方を見ると壊れている壁とは逆の壁で甲城さんが横たわっていた。その壁には割れ目が入っており、強い衝撃を加えなければできないものだ。つまり、甲城さんは消えたのではなく吹き飛ばされていたのだ。
「こ、甲城さん!!大丈夫ですか!?今から助けます!」
僕は声を荒げ甲城さんの近くへ行く。腹部からは血が出ており手も思うようには動かすことができない。
「…私の事は、大丈夫です…それよりも……逃げてください…」
話すことも辛いはずなのに声を絞りだし甲城さんは言う。
「に、逃げる?で、でも、甲城さんの怪我が…」
「なんだ?仲間の忠告を聞かずに、死体が二つに増えちまうぜ?」
聞いたことのない声だった。冷たく鋭いその声の主の方を見る。猫背気味の痩せ型で黒い洋服に黒のロングコート、黒のジーンズという文字通りの黒一式。髪はぼさぼさとしており整えていないのがすぐわかる。目に光は通ってなく殺意に満ちている。
「あ、あれが……事件の犯人の、黒崎陸です…」
「よくもべらべらと俺の個人情報言いやがって…でもまぁ、どうせ死ぬんだし意味ないよな」
そう言い犯人、黒崎陸はにっこりと笑う。
どうも、新しく名前を変えたヨムです。かなりの時間投稿せず申し訳ございません!今後は早めに投稿する努力をします!