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新年の挨拶と抱負



広間に敷かれた赤い敷物の上に座る豪華な面子達。その中心にいるのは白地に色鮮やかな四季の花々がほどこされた振袖を見に纏ったセリーヌ。


「ご挨拶が遅れましたが、明けましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願い致します。」


微笑みながら挨拶と共に綺麗にお辞儀をしたセリーヌに倣い左右に座っている者達も一同にお辞儀をする。

慣れない座り方に足を微かに動かす者、眉間に皺を寄せる者、セリーヌの姿に見惚れる者など様々だ。


「さて、挨拶は済ませましたから。皆様、本年の抱負をお聞かせくださいませ」

「抱負とはなんだ?それに、セリーヌ。そのドレスは一体どうなっている?」


セリーヌの隣に座っていたアーチボルトは着物の袖を掴もうとし、反対側から伸びてきた手にパシッと手を叩き落とされた。


「僕のセリーヌに触れないでくれるかな?

それに、ドレスではないよ。とある国の着物というもので、セリーヌの為に特別に作らせたのだから」


お兄様……私はお兄様のものではありませんよ……。

それと、既婚者なのに何故振袖なのだろう。

持って来たギーからは「僕は認めていないから、そう言付けされました」と言われたが。頭が痛い……。


「素晴らしいものだな。私も作らせよう」

「……無知とは愚かだね。この国にはない技術で作らせたものをどうやって作らせる気なのかな?」

「技術を買い取れば良い。幾らだ?」

「財貨では取引出来ないものもあると知らないのかな?」


値段の話しをし始めた二人を手で遮り話しを戻す。


「抱負とは、そうですわね……望んでいる物事を達成するために自身の心の中に抱いている計画でしょうか?」

「計画か……ならば王である私から。ヴィアンの国王として、セリーヌの夫として、今迄の恥ずべき行いを改めていこうと思う」

「どうやってかな?」

「それは、だな……」

「お兄様……細かいことは流してくださいませ。アーチボルト様にはまだ難しい問題なのですから。」

「難しくはないぞ!?私も色々考えてはいるからな!」

「では後程ジレスと話し合ってください」

「セリーヌ!?」


ほら、もうサクサクいきますよ!次。


「では、ラバン国の王太子であるお兄様」

「奪われた宝を取り戻す為に、邪魔なものは全て叩き潰すこと。自身の無力さを実感したからね……使える駒を増やし、僕の宝を覆っているものを一つづつ剥がしていかないと。我慢の限界がくる前に……ね?セリーヌ」


兄の両手が頬に添えられ、顔を固定された。間近で見る兄の瞳の奥の仄暗い闇にぶるっと身震いする。怖い、怖い、本気で怖いから!

私の怯えを感じ取ったのか、するりと頬をひと撫でし離れた兄に脱力した。


つ、次……。


「頑張ってくださいお兄様……では、帝国の皇子であられるセオフィラス様」

「その流れで俺にふるのか……そうだな、取り敢えずは戴冠式を無事に終え皇帝になることだ。そのあとは……」


セオフィラスの方から視線を感じ、顔を向けたら何かに絡め取られたかのように身体が動かなくなっていた。

困惑したような、探られているようなセオフィラスの瞳に息を呑む。


「セオ、何故僕のセリーヌを見つめているのかな?」


それを遮るように間に入った兄のおかげで視線が外されまたもや脱力した。

一体なんなんだ、これは……。


「……いや、お前の気のせいだろう。あとはだな、追々考えていく。ほら、次は誰だ?」

「では、私が」


アーチボルトの横に座っていたジレスがふわっと長い髪をかき上げそっと手を挙げた。


「この国の宝を奪われないよう厳重に囲い込むことにいたします。アーチボルト様にも、この国にとっても……私にも、大切な宝だと気がつきましたので。はい、クライヴ次は貴方ですよ」

「わかった」


相変わらずの美声で兄と同じ宝の話しを出したジレスは自然な流れでクライヴに次と促した。

腹黒は話しに割り込まれる前に次を指名したのだろう。懸命だわ。


「近衛騎士隊を統率していける力をつけていきたいと思っています。貴族が主だった近衛騎士隊は平民が入ったことで衝突することもあるやもしれません。ですから、私が皆をまとめていきたいと思います」

「どのようにまとめるつもりだ?部下の対立はどの組織にも見られる、それによって仕事の成果にも影響を及ぼす。だからこそ上に立つ者には人をまとめる資質が求められる。近衛騎士隊の隊長だったな?こういっては何だが、貴殿にそれがあるとは思えない」

「……セオフィラス様?」

「上が無能だと、苦労するのはその下にいる者達だ。貴殿の場合は……下だけではなく、近衛が守るべき王族もだな。先日の夜会が良い例だろう……出来もしないことは口にするな、不快だ」


クライヴが膝の上に置いた拳を握り締め言い切った言葉に、セオフィラスがすかさず反論した。

鋭い眼差しをクライヴに向けたまま厳しい言葉を淡々と話すセオフィラスに、声をかけられた本人はセオフィラスの名を口にしたあとは黙ってしまった。


「セオ、凄く怒っているね。ねぇ、僕ならまだしも、何故セオがそんなに怒っているのかな?」

「……思ったままのことを口にしただけだ。そこの護衛騎士。テディといったな?次はお前だ」

「はいっ!」


セオフィラスは嫌そうな顔をし、どうしてかな?何故かな?と纏わりつく兄を無視し端に座っているテディを指名した。

急に振られ驚き、顔を強張らせたテディに微笑みかけた。


「テディ、緊張しなくても良いわ。いつもの貴方らしく」

「はい、セリーヌ様」


うちのテディ良い子だわ。新しい隊服も似合うし。


「セリーヌ様の護衛騎士、テディと申します。セリーヌ様はとてもお優しく、自身よりも他を優先される方です。ですから、私はセリーヌ様のおそばを離れず誠心誠意、尽力させていただきます」

「同じく、私はセリーヌ様の護衛騎士、アデル・ブリットンと申します。他を優先するあまり、自身を軽視されているセリーヌ様ですから。張り付いてでもおそばを離れないことにいたします」


テディに続くように抱負を語るアデルの言葉が胸にちくちく刺さる……。

テディと同じ内容な筈なのに、何故か無鉄砲のお馬鹿さんと聞こえるのだが。


「良い護衛騎士だな」

「セリーヌは優し過ぎるから……頼んだよ」

「「はい」」


むーっとしているとセオフィラスと兄が微笑みながら二人に私をお願いしだした。

それに対して分かっていますとばかりにしっかりと返事をする二人……ねぇ、貴方達は私の保護者ですか?

それに、セオフィラスが微笑んだところを初めて見たかもしれない……意地が悪そうに笑っているのならゲームでは良く目にしたが。びっくりだわ。

さて、次は……と取り掛かろうとしたところで隣に座っていたアーチボルトが私の手を掴み、そのまあ勢いよく手を挙げた。


「待て、私からもセリーヌを頼む。私はセリーヌの夫であり家族だからな」


テディ、アデル、セオフィラス、兄、四人の和やかな空気にピシッと亀裂が入る音が聞こえた。

慌てて手を下ろそうとするが力が強過ぎて動かない。ならばと空いている手でアーチボルトの手を剥がそうと試みるが手を伸ばすと逃げられる。


「アーチボルト様……何をなさるのですか」

「セリーヌが逃げようとするからだな……その、あれだ」


あれとは、どれよ……。

アーチボルトは気づかないのか、お兄様からの殺気を!?


「アーチボルト王、その手を離してもらえるかな?セリーヌが困っているから」

「これは夫婦の問題だ。済まないが、兄だろうと口出し無用で願いたい」

「アーチボルト様、セリーヌ様の許可を取ってからにしてください」

「おい、護衛そのいち!何故許可が必要なのだ!?手を、繋いだだけだぞ」

「えー、護衛そのにから進言を。そのように乱暴になされるとセリーヌ様が腕を痛めますので直ぐにお離しに」

「痛めたのか!?」

「いぇ、大丈夫ですので、手を離してください」

「見せてみろ……怪我はないか?」


手は下ろしたが離そうとせず、今度は両手で包まれてしまった。

周囲の殺気にひやりとしながら手を引き戻そうとしていたとき、アーチボルトの腕にセオフィラスが手を添え。


「腕を切り落とせば良い…」


淡々と恐ろしい言葉を吐いた。


「アーチボルト様、時間がありませんので手をお離しに……さあ、あとはレイトン様の騎士だけですね」


ジレスが硬直したまま動かないアーチボルトの手を剥がし兄の背後に座っていたギーへと促す。

新年の早々、とんでもないことになるところだった。


「……やり残したことがあるので、それを片付けようと思います」

「やり残したこと?」


黒服隊のギーが?珍しいわね。

なんだろうかと聞き返して後悔することになった。


「顔をぐちゃぐちゃにします」

「あぁ、そういえばまだだったね」

「……ちょっと待て、まだヤル気だったのか!?あれは止めただろう」

「セオフィラス様、我が主様の命令は絶対です」

「セオだって腕を切る気だったじゃないか」


アーチボルトがびくっとし恐る恐る「顔とか腕をとか……わ、私のことではないよな?」とジレスに尋ね「恐らく、アーチボルト様のことでしょうね」と笑顔で言われたアーチボルトはクライヴを連れ広間から飛び出して行った……。


「それと、我が主様とセオフィラス様の楽しい六日間はいつ頃更新されるのでしょうか?本編にも関わることなので早めに出して欲しいのですが。あの馬車に乗っている者は「ゴホッ……ゴホ、ゴホッ」とか、美女に騙さ「ゴホッ」」

「セオ、聞こえないよ」

「セリーヌ!抱負は終いだ、良いな?さあ、帰るぞレイ」

「ちょっと、まだセリーヌに挨拶のキスをしていなっ、離せセオ!」

「では、我が主様を追いますので失礼いたします」


セオフィラスが兄を担ぎ上げ早足に広間の出口へと向かう。唖然としている間にギーはお辞儀をして後を追って行ってしまった……。


残されたのは、私とジレス、テディとアデルの四人だ。何がどうして、こうなった?


「……セリーヌ様、挨拶を」


ジレスに耳打ちされ姿勢を正し引きつる顔を笑顔に変えた。


「では皆様、これからも宜しくお願いいたします」



あいつら……本編で覚えていなさい!




今回出て来なかったメンバーは次の番外編で(._.)

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