第零章 始まり
―――昔、神の寵愛を一身に受けている天使が降りました。
彼女は誰よりも優しい心の持ち主で、神だけでなく仲間からも愛されておりました。
ある日、神は一人の女神を連れて彼女の元を訪れ、言いました。
―――私たちは近々結婚をする、と。
それを聞いた彼女は泣きました。
彼女も、ずっと神を深く深く愛していたのです。
その深い愛は悲しみのあまり憎しみに変わり、彼女の中を支配してしまいました。
彼女は深い悲しみと憎しみのあまり、神と女神を殺してしまったのです。
その時、彼女の穢れの無い純白の羽が、まるで2人の血を啜ったかのように、鮮血の色に染まってしまいました。
その日を境に、彼女は変わってしまいました。
彼女が現れると必ず誰かが死を向かえることから、人々は恐れ、畏怖し、彼女を『紅の死天使』と呼ぶようになりました。
彼女が行方を眩ませてから、天使たちの間で時折紅の羽を持った子が生まれるようになりました。
紅の羽の子が生まれる度に、人々にしが訪れました。
以来『紅の翼を持つ者は、死を運ぶ天使の生まれ変わりだ』と言われています。
―紅の翼は、髪を欺いた罪の証。
神の流した血を啜り、純白の翼が染まった印。
紅の翼は死を運ぶ。
羽を紅く染めるため、血を啜るために―――
これは、天使たちが住まう国イルバールに古くから伝わる昔話。
嘘のようで本当な昔話。
一人の少女の運命を巻き込む物語が今、開かれようとしていた……。