プロローグ
初めての投稿となりますので、拙い文章で分かりづらい事もあるかと思いますが、よろしくお願いします。
そこは異様な場所だった。
光の玉が6個浮かんだ広間の床には見たこともない文字が円を描くように羅列されており、浮かんだ光の玉を結ぶように六芒星が描かれていた。
そしてその六芒星の外には黒装束を身に付けた男が佇んでいた。
「ふぅ・・・。やっと準備は整った。チャンスは一度きり、失敗は許されない。あとはこの召喚が成功してくれる事を願うだけだ。さあ、始めるか。」
そう呟いた後、男は六芒星の中心へと歩みだした。
中心へとたどり着いた男は目を閉じ、深呼吸を何度か繰り返すとそっと目を開き、口の端をつり上げるようにニヤリと笑うと、魔法の詠唱を始めた。
『我はここに召喚する。汝は清らかなる心を持ちて、その身が朽ちるまで大切なものの為に戦いし乙女なり。この身体、この命、汝が為に尽くそう。来たれ!■■■■■■■』
詠唱が終わると、描かれていた魔方陣から光が輝き始めた。男の身体も光り始め、視界さえも光に遮られ何も見えない。
やがて光が収まり始めると、魔方陣の中心にいる男の目の前には一人の女性目を瞑った状態で佇んでいた。
完全に光が収まると女性は目を開けると、目の前に立っている男に尋ねた。
「・・・・・あなたは?・・・・それとここはどこでしょうか?・・・」
何かに魅入られたかのような雰囲気をしていた男は、その言葉で我に返ったのかビクッと肩を振るわせるとバッと女性の前に跪くと、少し声を震わせながら話し始めた。
「ここは貴方のいた世界とは異なる世界の『ベルナルディア』という所です。・・・そしてはじめまして、お会いするのは初めてですが、貴方をこうして呼び出す事が出来た事を神々に感謝します。私は、騎崎聖と申します。今日この時より貴方と共に歩み、貴方を護る騎士として忠誠を誓います。」
ベルナルディアの世界において語り継がれていく事となる聖女とその騎士たる騎崎聖の物語はここから始まった。
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ビュッビュッビュッ
風を切り裂くような音が響いていた。剣道の道着のような服装の男が汗を流しながら懸命に木刀を振っていた。俺の名前は騎崎聖5歳からじいちゃんと親父から古武術と剣術を習っているので、日課となっている走り込みと古武術の型を終え、今は素振りを行っている所だ。
「ふぅー。素振り5000回終了!そろそろシャワー浴びて準備しないとあいつらに怒られちまうな。」
そう呟くと早歩きで浴室に向かった。
シャワーを浴び終わり、制服に着替え部屋を出るとタイミング良くチャイムが鳴った。
「おーい!準備終わってるかぁ!迎えに来たぞ!」
チャイムと共に玄関の向こうから大声が家中に響いた。
「うるせぇ。叫ばなくってもこの時間にチャイムが鳴ればわかってるっての。」
扉を開けながら悪態を吐く。
「ハハッ。お前はたまに鍛錬に集中しすぎて時間忘れてる事があるからな。念のためだよ。」
爽やかな笑顔とともに話しかけてくるのは、芹澤悠馬俺と同じ年の幼馴染の1人だ。こいつも俺の親父から剣術を習っており、剣術の腕前はこの年齢にして超一流で俺よりも上だ。その為、スラッとした外見をしているが無駄な肉のついていない絞り込まれた身体をしている。顔もかなりのイケメンで性格も誰に対しても気さくで話しやすい雰囲気をしているため、女子からは相当モテている。
「おはよう。聖、準備は終わっているな。遅刻をする時間ではないが、いつまでも立ち止まっている訳にはいかない。そろそろ学校に行かぬか?」
ちょっと古風な話し方をするのは、真弓桜同じく同じ年の幼馴染の1人だ。彼女は俺の母親から合気道と弓術を習っており、弓術の腕前は去年一昨年と史上最年少で世界選手権を連覇しており、合気道も世界チャンピオンだったお袋から、免許皆伝を去年もらったほどだ。さらに容姿端麗、頭脳明晰と非の打ち所のない大和撫子を体現しているようで、男女問わずモテている人気者である。
「あっ待たせてゴメンな。いつも迎えに来てくれてありがとう。」
「う、うむ。別に苦ではないし、好きで迎えに来ているのだ。礼など言わなくてよい。気にしないでくれ。」
ニコリと笑ってそう言うと桜は顔を赤くしながらそう答え、赤くなった顔を隠すように学校に向かって歩き始めた。
「芹澤くんおはよー」「おはよう悠馬くん。」「真弓さんおはようございます。」「桜ちゃんおはよー」「聖くんおはようございます。」「皆さんおはようございます。」
通学路を歩いていると同じく登校中の先輩方や同級生達から挨拶を受けたので、それぞれにちゃんと挨拶を返しながらといういつもの登校風景を久しぶりに感じながら学校に着いた。
「さて、お楽しみのクラス発表を見に行こうぜ。」
悠馬を先頭にクラス名簿が貼り出されている掲示板に向かう。
名簿を1組から順番に見ていくと3組の所で自分の名前を見つけた。
(他の2人はここまではなかったけど・・・・・・)
「おっ3組だ。」
「私も3組だったぞ。」
俺が見つけるよりも早く2人が自分の名前を見つけたようだ。揃って同じクラスになるのは中学1年の時以来だな。
「へへへっ。久しぶりに全員同じクラスになれたな。」
悠馬が嬉しそうに満面の笑みを浮かべて言うと、周りにいた女性の何人かが顔を赤くしながら見惚れていたが、それを見て苦笑いしながら俺と桜は新しいクラスに向けて歩いていく。
教室に入ると何人か見知った顔があったので軽く挨拶を交わして黒板に貼ってあった座席表に書いてある自分の席に座る。悠馬と桜も見知った顔の人達と挨拶を交わすと早速俺の席までやってきた。
新学年という事もあり、担任の挨拶とクラスメイト達の自己紹介をし、委員長などの係りを決めて新学年初日は終わりを告げた。
いつものように3人で話しながら下校をし、家に帰ってきて制服を脱ぎ、道着に着替える。
「すみませーん!!宅配便です。」
鍛錬をする為に家の道場に向かって縁側を歩いていると玄関から声が聞こえてきたので、急いで玄関に向かって荷物を受け取る。
(親父から?なんだろう。)
仕事で海外に行っている父親からの荷物だった。普段お土産などを送ってこない為、驚きながらも箱を開けると、中には黒い小箱と両親からの手紙が入っており、黒い小箱の中には黒くくすんだ色をした十字架が入っていた。手紙も封を開け読んでみる。
聖、元気にしてるか?鍛錬を怠ってないか?
父さん達は元気だから心配しなくていいぞ。
いつもはメールで済ませているのにこうして荷物を送ったから驚いているだろう。
一緒に入っていた小箱の中身についての事だからな。あれはとある人物の聖遺物だ。
普通なら一考古学者の私達が持ち帰ったり出来るものじゃないが、今回の仕事で父さんは協会から世界に5人しかいないS級の考古学者に母さんはA級に任命された。S級になると聖遺物の中でも不思議な力を宿した物を受け取る事が出来るのだが、父さん達は軽く人間辞めてんじゃねって言われるくらいの力をもっているからなぁ(笑)そこで協会にお願いをして、不思議な力を秘めてはいないがお前が唯一興味を持った方の聖遺物を貰う事が出来た。
心配はいらないと思うが、決して無くさないように大切に扱うんだぞ。少し早いがお前への誕生日プレゼントとして贈らせてもらった。
「・・・・・・これがあの人の聖遺物・・・・・・・・親父、お袋ありがとう。絶対無くさない。一生大切な宝物にするよ。」
少し泣きそうになりながら、ギュッと胸にその十字架を押し付けた。
それから数日が経った。
聖の鍛錬は、あの日からより一層力を入れて取り組んでいた。
「ハァハァハァ・・・・お前最近急激に強くなってきたなぁ。」
「くそっ今日も勝てなかった・・・ハァハァハァ」
この日悠馬と剣を交え、二人とも立っていられない程に白熱した稽古を終えて、床に仰向けに寝転がっていた。
この数日は不思議と自分自身でも実感出来るくらいに強くなり、以前は歯が立たなかった悠馬を稽古に誘い今日こそは勝つ気でいたが、前より接戦になった事は実感できた物の結局は負けてしまった。
「お前なんかあったのか?正直かなりヤバかったぞ。ほとんど実力差なんてねぇよ。ってか古武術使われたら100%勝てねぇな。俺ももっと鍛錬しなきゃ剣術だけでも勝てなくなるわ。」
驚き半分、悔しさ半分といった感じの顔で悠馬が聞いてきた。
「俺が古武術とか習い始めた切っ掛けが、より強くなったからなぁ。それが原因だと思うってかそれしか思い浮かばねぇわ。」
「そっか。お前の切っ掛けが強くなったって事は、誰か守ってやりたいと思う相手が出来たって事だな。」
「ああ、そうだな。」
「えっマジか!?・・・・・・おい聖!!それって誰なんだよ!!」
ニヤニヤしながらそんな事を言ってくるので、軽く返事をすると悠馬が驚いて声を荒げるが無視をしてシャワーを浴びる為に浴室に向かう。
汗を洗い流して私服に着替えると今日は3人で出かける約束をしていたので、桜に稽古が終わったと連絡をした。桜が到着し、話し合った結果3人でこの辺りで一番大きなショッピングモールに行く事になり、家を出た。
「なあ、桜。今日の服装も似合ってていいと思うんだけど、たまにはもっと女の子らしい服にしてみるのも良いと思うんだがなぁ。聖もそう思わね?」
「ん?ああ。桜なら絶対に似合ってて可愛いと思うぞ。」
「そ、そそそそうか。な、なら今日いくつか試着してみるので、見繕ってくれぬか?」
「クククッ。真っ赤になっちゃって、青春だねぇ。」
「バ、バカモノ!今日は少し暑いからだ!!」
そんな感じで馬鹿騒ぎしている2人とともに目的地へと移動する。
入口から一歩建物の中に入ると突然目の前が真っ白に光り輝き、フッと足場が無くなり、宙に浮いてるような感覚になる。光が収まり、目を開くとそこには何もない真っ白な空間が広がっていた。
「やあ。こんにちわ。騎崎 聖くん」
急にそんな声が自分のすぐそばから聞こえてきた。
(・・・・・・クッ、気配を全く感じなかった・・・・コイツ、ヤバい!)
反射的に声の主から距離を取り身構えるが、勝てる気がしない。
「そんなに警戒しないでくれないかな。別に危害を加えようなんて思っていないよ。」
「・・・・・・ここは?入ろうとしていた建物とは違うようだが・・・」
敵意を感じなかったので、警戒を和らげ現状の確認をするために、声の主に質問をしてみた。
「ここは、次元の狭間と言えば良いのかな。君と君が一緒にいた2人がとある世界からの召喚魔法を受けて飛ばされていたので、それに干渉してここに引き寄せたんだよ。」
(次元の狭間?召喚?なにを言ってるんだ。)
「理解出来ないのも仕方がない事なんだけど、時間がないからね。すぐに説明に入らせてもらうよ。私はミカエル。今回君をこの空間に呼んだのは、少しばかりの力と1つだけお願いしたい事があったからなんだ。」
(・・・・・ミカエルって言えば、天使の長を務めている方だったよな。・・・疑いたい気持ちもあるが、この底知れない力と背中の6枚の翼を使って空に浮かんでいるのをみると本物のようにも思えるが・・・)
「フフフッ。中々に冷静に分析しているようだね。面白い子だ。では早速力を授けるよ。」
そう言うと彼(彼女?)の手から光の玉が出てきて、そのまま俺の身体の中に吸い込まれていった。
「まだ実感は沸かないだろうけど、向こうに着く頃には実感出来ると思うよ。次はお願い事なんだけど、君が持っているロザリオの元々の持ち主を救ってあげて欲しい。向こうの世界で今回使われた召喚魔法は時間軸に関係なく異世界の人間を召喚する事の出来るものだが、もう少し改良すれば人物の指定も出来るようになるはずなんだ。私達はこうしてお願いは出来ても、人々を救う事なんて出きないように神様によって定められている。だからこそ君の力を借りたいんだ。あの悲しい運命にさらされてしまったあの子をどうか君の力で救ってあげて欲しい。」
そう言って深く頭を下げられた。
「ミカエル様。頭を下げないでください。あの人を救う事が出来るんだったら、俺はどんな事でもしてみせます。必ず成功させます。だから、心配せず見守っていて下さい。そして成功したら俺はあの人を護る騎士になって、何人にも危害を加えさせたりしません。」
「フフフッ。あの子もこんなに想われて幸せ者だ。それじゃあ君にはもう1つプレゼントだ。これは神石といって強力な武器を生み出す事が出来るものだ。神様に戴いた大切な物だが、あの子を護る騎士たる君にあげよう。時間も無くなった様だし、君の武運を祈っているよ。気を付けて行ってきなさい。」
俺の言葉に満足した様に頷いた後、そう言って送り出してくれた。
再び視界が真っ白に輝く光に包まれると俺は再びどこかに飛んでいくような感覚に身を任せた。