第5話 キミという光
私たち唐桐姉弟には他人には見えない景色が見えている。
この力があると知ったのはまだ二人共、物心がついてない時からだ。
人の気?オーラ?的なものが弟の千歌にも見える
とのこと。
そして、自分たちでいうのもおかしいが私たち姉弟はそれはそれは手のかからない子だった。
だいたいのことは使用人が言われる前にきちんと終わらせたりと、両親でもちょっと引くような子共だったようだ。
暫くして、その力はますます強くなっていった。人を通して別の人間が見えたり、その人が考えているようなことも言い当てたりと、屋敷中は騒然となった。
会話するにも本人の目を合わすことなく、誰もいるはずもない後ろで目を合わせて話す姉弟をみて皆が不気味がった。
そして、また一人、また一人と使用人たち仕事を辞めていった。
だが、ここまでは別に平気だったが、実の両親はそうはいかなかった。
私と千歌を見る目は恐れおののき、自分たちの子共を化けもののような目で見たのだ。
幼かった私は両親の拒絶に耐え切れず、何度も何度も必死で取り繕った。けれど、両親は私と千歌を見ようともせず私たちの存在を否定した。
そしていつから私たちの中にある何かが【ボキッ】と音をたて、壊れていった。
それからは私たち姉弟は腫れ物扱いされた日々が続いた。
私と千歌はどちらからともなく、互いの手を握る。
互いの存在意義を確かめるかのように、私たちだけの世界を作った。
千歌といる時だけは互いに心の安らぎ、自分が自分でいられるような思いで、反対に千歌も私といる時だけは自分が自分でいられた。
年々、私たちは二人の世界をより強固にしていった。両親から浴びせられる罵倒も、使用人たちからのいじめも二人なら大丈夫と互いの手を繋ぎ確かめあった。
そんなある日、二人の世界に大きな風穴が吹き溢れた。
いつも通っていた幼稚園から、ご子息・ご令嬢が通う幼稚園に編入が決まったのだ。
勿論、両親は世間体を気にしてか人前では私たち姉弟を可愛いがっているかのような演技をし、問題なく幼・小・中・高・大とエスカレーター式の
陽明学園に編入したのだ。
編入したからといって、私たちは片時と離れることはせず互いに手を繋いだまま園内の端っこにいた。
相も変わらず私たちの目に映るクラスメイトは幼いだけあって感情が手に取るように分かる。
新しいクラスメイトと仲良くしたい気持ちと私たちを不気味に思う二つの気が容赦なく浴びせられ気持ち悪くなってくる。
隣の千歌も唇に手を抑え、耐えている。
そんな時、私たちの前にボールが転がってきたのだ。
反射的に顔を挙げれば見知らぬ少年?が立っていた。