第2話 学園の王子様?
三時間目の授業を終える告げるチャイムのあとは待ちに待ったお昼の時間。
一斉に席を外れ、廊下側の一番後ろの席にクラスの女生徒が我先にと集まってくる。
ある生徒は有名シェフが作ったお弁当を武器に。
また、ある生徒は自分で作ったお弁当を武器にして。
目的は1つ。
ある生徒とお昼を共にするためだ。
もちろん、ある生徒ととはこの私、
御影 類のことだ。
「御影くん一緒にお昼いかがですか?」
「あっ、ずる~い、類くん一緒に食べようよ」
「有名シェフが作ったお弁当がありますわ」
「わ、わわ私、手作りのサンドイッチ作って来ました!!」
1人の生徒が私の目の前にみずみずしい林檎のフルーツのサンドイッチを差し出した。
緊張のあまりか彼女の手は小刻みに震えている。
そんな彼女の手を掴みそのまま口元に持っていき一口かじる。
シャリッ
口内にみずみずしい林檎の酸味と甘さ控えめな生クリームが広がる。
「~!?る、類くんっ!!///」
彼女は顔を真っ赤にさせ口をパクパクさせている。
同時に周りの女生徒達が一斉に悲鳴に似た叫びをあげる。
「ご馳走さま。甘さ控えめで私好みのサンドイッチだったよ」
惚けている彼女のサンドイッチを完食し、口元に付いた生クリームをペロッと舐めればまた違う意味で叫び声があがる。
そんな光景にクラスのみんなは慣れてしまった。
もはや周りの男子達は尊敬と憧れの眼差しで見てくる。
陰では私を学園の王子様と読んでいる生徒もいるらしい。
それはそうと相も変わらず彼女達は頬を仄かに赤く染め、潤みを帯びた瞳で私を見てくる。
誰だって人から好意を向けられれば悪い気はしない。
もちろん私だって悪い気はしない。
中性的ルックスで、女子でありながら素で女子ナンパ体質を持ち合わせていた私はいつからか、気障な台詞を吐き口説くようになった。
当然といえば当然だが私は女生徒から圧倒的に人気がある。
これは妄想ではなく、れっきとした事実である。
なんなら学園のあの彼らと良い勝負だと思う。
それに私は女の子が好きだ。
しかしそれは【like】であって【love】ではない。
けれども目の前の女の子たちを見ていると決心が揺らいでしまう。
うぅ、可愛い……。
必死で心の中で葛藤していると、腹周りに衝撃を感じた。
下を見ればしがみつく美少女と目が合う。
栗色のさらさらした長い髪を揺らし、大きくぱっちりとブラウンの瞳でこちらを見上げる。
小柄な彼女はこのまま抱きしめれば女の私でもすっぽり収まってしまう。
彼女の名は唐桐 音子。
唯一の大親友であり、幼馴染みの彼女は私にとって大切な存在だ。
「……」
音子は言葉を発さず、ただただ私にしがみつく。
「ごめん、遅くなってしまったね」
私も音子を抱きしめる。
端から見ればお似合いのカップルだろう。