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紹介状を頂いた俺は、役所で名前を登録し、宿を取り寝る。セキュリティがそれなり以上の懐に優しくない宿だが、いいとこの店から出た貴族邸への紹介状を持っている以上、なくした盗まれたはヤバイからな。最悪文字通りの意味で死ぬほど。
店でのプレゼン失敗があっても安宿連泊で職探しできる前提の旅費はここでぱーっと使う。子爵邸で粗相や行き違いがあったら冒険者ギルドの初心者部屋で雑魚寝からスタートだ。(ゲー厶時代のリスポンやセーブ、拠点絡みの救済措置)いちおう旅の途中で元冒険者が親だったやつに有るとは聞いているが、あまり泊まりたくはない。
、、、
予定の日、奉公したいという体で人に聞いておいた貴族居住区の子爵邸に向かう。途中で巡邏の兵に呼び止められたので、紹介状を出す。
兵が真贋を改められるかは関係ない。万一本物を追い返し子爵の利益を損なったら、バレた時点で兵が終わるからだ。服代が無かったので貧乏くさい見た目なのもあり、見送るではなく子爵邸まで付いて来たが、逆に護衛になるのでヨシ。
「この者が本物だった場合そばにいられるのは問題になる。門前で待つか偽者だった場合の引き渡しを考え帰ってくれ」
子爵邸の門衛が巡邏兵に告げ、巡邏は帰ってゆく。俺が本物だった場合マジで時間の無駄が出るからな。持ち場を離れて居られないのと、偽者なら子爵邸の警備が捕縛する(と信頼する態度でないといけない)前提もあるためこうなるのだろう。
門衛の一人が詰所に呼びかけ、交代の兵が出てきて俺は中に通される。
屋敷の入り口で従僕らしき人に紹介状を渡し、しばし待つ。
「確認が取れました、お入り下さい」
たびびとのふく装備でもジロジロは見られなかった。貧乏芸術家とか発明家とか相手にし慣れてるのだろう。
「執事長のイレッグと申します。条件は副店長殿から事前の手紙にて。荷の中身は当家の魔法技師に改めさせております」
通された部屋にいたのは執事長という人だった。荷物として、スライムねんどらしき包みと封切りしていない固め液のポットが応接用のような低いテーブルに載っている。このひとしか副店長のコネやタイミング上合う人がいなかったのか、それとも……。
「シャークと申します、お時間ありがとうございます。では、早速」
スライムねんどの包みを破り、指から電気信号を流す。スライムねんどに貴族女性のようなドレスの人間をかたどらせ、カーテシーをまねた動作をさせる。
「なるほど、少なくとも貴方に何らかの力はお有りだ」
「では、私の話を聞いて頂けますか?」
「技術と申されましたが、ユニークスキルではないのですな?」
「はい。やり方をお教えし、再現ができたならば報酬をお願いします」
「分かりました、契約書を作りましょう」
イレッグさんが手を上げ合図すると、動物紙とペンなどを盆に載せた人が部屋へ入ってくる。
「騙りでない売り込みに備えて、法務担当が控えています。名が書けない場合は血判になります」
条件をざっと詰め、サインした紙を頂く。
「では習得条件を開示します。雷属性が強すぎず細やかに扱えるか、または雷の小精霊と契約していて、かなり上手く意思が通じていることのどちらかです。どちらかに該当しそちら様が信頼できる人はおられますか?」
「代々の庭師をしているものが精霊契約のスキルに秀でています。小精霊でよいなら契約を増やさせれば可能ですな」
「ではその人の準備が整いましたら始めましょう」




