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 「私は副店長だ。店長は子爵の御用聞きがあるから、いま店のトップは私だ。と言っても暇ではない。他にも売り込みがあるから手すきが私だった」

 「ありがとうございます、私はシャークと申します」


 シャークは生まれた時の名ではないが、この世界は地球よりさらに楽に名前が変えられる。おそらくキャラエディットシステムの名残か何かだろう。平民のしかも移民が一度名前を変えるくらいならさほど苦労はない。さすがにゲーム時代と違って一国の納税者や戦闘者が主体な冒険者となるとコロコロは変えられないし、犯罪歴がある場合なども厳しいが。ゆえに「名残」であり、まんまではない。今の俺の名乗りは、この国での登録名を先に喋っている形だ。


「実は売り込みたいものは技術でして。持ち込ませていただいたスライムねんども仕込みはないのです」


 店の奥の応接室で、副店長と会話する。


 「新魔法か?そんな希少なものを?詐欺にしてももう少しあるだろう」

 「完全に証明するにはそちら様に仕込みなしと証明出来るスライムねんどを買ってきて頂き、属性持ちにやり方を教える感じになりますので……普通の魔法回路やコア方式でない立証は、例えば」


 俺はスライムねんどを一部ちぎり、太さ2ミリくらいの麺のように細くして掌で蛇のようにくねらせる。


 「この大きさではコアも回路もないものだと思います」

 「ふむ……続きを」

 「この技術は先ほど店員さんに見せましたが、私など特定属性ならもっと大きなものを扱えます。多少離れていても」


 俺はゲイツ様から頂いていた馬の尻尾の抜け毛をより合わせた、1mほどの細い紐に、水筒の水をたらす。そして移民としての移動用食材で買った塩をすりこみ、スライムねんどに接続する。そして塊の上に荷物袋だけを載せ、虫のような六脚に変形させ歩かせ始める。


 「おお……これは重さはどれくらい載る?」

 「これはただのスライムねんど、しかも加工なしなのでこの袋程度ですね。ただ、パテや記念品にするための固め液で背中を補強するなりでまた変わります」

 「完全に新魔法ではないか。然るべき機関で発表すれば……」

 「誰かが成果を横取りしようとした時点で終わりです。論文の名義をいじられただけで詰みなので」

 「後ろ盾がないのか」

 「移民の平民なもので」

 「だが、君は研究はしたくないのか?これを編み出せるならば」

 「そのときはそのときで、そのための後ろ盾になって頂くためにも子爵様にお目見えをと」

 「話はわかったが、そのときとは?」

 「一応冒険者志望なもので」

 「……ふむ。そこは私が止められるものでもないか」


 副店長が冒険者志望を止めないのは、この世界は元ゲーが戦闘系メインなためどうしてもジョブの充実度やらがそっち寄りだからだ。新魔法はレアだが、それを編み出す学識か地頭があっても、武で身を立てたい願望を若い者が持つのは普通だと、貴族の下にいる大都市の店の偉い人でも常識くらいに思っているわけだ。


 「私の権限で紹介状を書こう。先方に先触れを兼ねてスライムねんどの新品も配達させる。相手は……」


 副店長が手帳をめくる。


 「対応できそうな方のお時間は2日後の午後の頭に空いている。その時に訪問しなさい」

 「丁寧にありがとうございます」

 「なに、君が成果を出してくれれば私の覚えもよくなるからな」


 ふっ、と笑う副店長は紹介状を書きに応接室を出た。

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