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 スライム筋肉を用いる鮫鎧は、実はあまり水中は得意ではない。特に今回のような海中は。


 海の、陽光が減るほど深い深度はそれだけで温度が下がりやすい。しかもこっちは水分の塊を筋繊維的に扱うものを鉄塊に詰めているから、浮力がかなり少ない上に温度低下は化学反応としての筋力の低下につながる。


 なので今はオプションとしてボディや腕などに海綿体のような隙間のある、ある程度厚い断熱材を表面に巻いていた。


 浮力で多少は動き易いし、薄暗い水中で暗色の断熱材は視覚的迷彩にもなるようで、水中の魔物に絡まれないまま船に取り付けた。


 船の表面に開いた穴から俺たちは入り込む。


 「命綱をつけよう」


 両端がカラビナになっているワイヤーを互いの鎧の腰の突起部につける。(ロビンのものはもとから、俺の側はオプションパーツだ)ここから先は天然のダンジョンに近く、危険度が跳ね上がる。離れられる自由よりはぐれない安全だ。


 船の中へすこし進む。舞い上がる泥や船の壁自体の遮蔽で光学的視界は少ない。だが俺たちには別の探知手段がある。


 ……と、高を括るとツケがくる。周囲をまずは光でもアクティブ音でもない感覚で探査する。と、水の流れがあるのがシュコーという定期的な音と鎧表面への軽い圧力で感じられた。


 「魚介系のモンスターがいる」

 「なんで分かるの?」

 「一定の短い間隔で水流があるからだよ。卵に新鮮な水を送り込んでいるんだろう。間隔が吸って、吐いて、みたいな長さだからヒレじゃないね。イカかタコだと思う」

 「そうなの……?」

 「そこで凄いとか言い出さないのは偉いぞ。俺が必ずしも合ってるとは限らないからな。じゃあ、ちょっと答え合わせしようか」


 俺たちは船の外にいったん出ると、岩陰に隠れてから船の壁に開いた穴に大人の拳くらいの石を投げ込む。


 数秒ののち、ズアッ!と船内の泥を巻き上げながら、長さが見える範囲で3m、太さが太いところで50cmはある暗褐色の吸盤つき触手が見えた。


 「うええ……」

 「不用意に踏み込まないでよかった」


 触手はしばらく辺りを探り、船へ引っ込んだ。第一義は卵のお守りだろうし、釣り出すのは無理だろうな。やるとしたら完全に殺す場合だけだし、あの個体のみとは限らない。


 「どうするのお兄さん?」

 「プランBかな」


 一度言ってみたかったやつ。

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