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数日の講義が終わり、予定通り錬金術ギルドへ行く。ロビンは村から出るのをやや渋ったが、領主様に裁きをお願いしたと言って連れ出した。
ギルド前に着くと、ボロ布を着た副ギルド長とスタンレーさんが地面にひざまずかされ、インクの染みた紙玉を投げつけられていた。
「依頼者から無理やり技術を聞き出すな!」
「スイマセン!」
「それやるとバカが研究室に来るんだよ!!」
「ゴメンナサイ!」
「副ギルド長までやらかして!!」
「悪うございましたあ!」
先に勧告が行ったうえで今日この時こうなっているのは、俺達へのアピールだろう。内容は多分、リアル中世にあった石打ち刑とかの一種だろう。
「ふむ」
「お兄さん、怖いよ……」
「心配しなくていい、恥さらしなだけだから」
俺は刑の内容の推定を語る。
死刑やダメージ刑でなくとも、主食のパンに細工(かさ増しで差を着服など)したパン屋は檻に入れられクレーンだかで川の水に漬けられる刑があったはずだ。そう思えば屈辱を与え戒めにするだけで済ますのはだいぶ有情な刑だ。インクでべしょべしょするから気持ち悪いだろうし、ボロ着で見た目は悲惨だが、逆に言えば大怪我はしないし服をダメにするわけでもないのだ。ひたすら屈辱特化というか。
「大人ってこわい」
「まだマシな方だよ。すみませーん」
「ああ、あんたらが例の。アタシがギルド長のモルガンだよ。今回は悪かったね」
俺の声掛けに、小柄だががっちりとして手が大きな、白髪の老婆が反応する。おそらくドワーフの女性だ。
「いえ、しっかり裁かれたようですから」
インクまみれの二人を見る。
「ところで、俺の依頼なのですが」
「よし、スタンレーは解き放ち。カーネギーはあと百発」
天国と地獄を表すかのように表情が二分される。カーネギーさん、副ギルド長はインクが口に垂れるのも忘れて驚愕し絶望していた。
「当たり前だろ、止める権利と義務があったやつが、一緒になってやらかした。それのたちの悪さが分からないくらいバカなら技術系ギルドなんざやめちまいな」
ごもっともなので擁護はしない。
「スタンレーはさっさと着替えと水浴び!今回やらかしたら平服でもう五十だからね?」
「は、はいっ」
彼女がいてアレだというより、彼女だからあの程度で済んでいた、なんだろうな。技術系ギルドはマッドの卵が孵化したものでいっぱいだ。
、、、
「では、成果物を」
「これじゃ」
指定していたサイズ、兜の鮫の鼻部突起部に収まる大きさのゼリーのようなものだ。
「先日録音しておいたロビン君の音波を用いてテストはしてある。確認してくれたまえ」
「では、ロビン、俺の身体に触れないで音波を出して」
「わかった」
部屋にコウモリ獣人の超音波が反響し、それがゼリーを震わせる。前世でいうイルカのメロン体の役割だ。目をつぶり振動を映像情報に変換する。このへんはVRゲーの基幹になる電気信号科学の変換理論を用いて感覚的に調整する。電波のチューニングが一番近いだろう。
きちんと、ロビンたち三人や部屋の調度などが『見え』た。
「いい出来です、ありがとうございました」
「では、また縁があれば」
「はい、お願いします」
これで情報感知系が増えた。




