15
ロビンを村へ帰したあと、子爵邸で執事長のイレッグさんにふたたび会う。
「あの技術の続きですか」
「もう独自研究で気づいておられたならすみませんが、スライムなどを用いた動く物は人体に手足として増設出来ます」
「ほう……」
「これ自体は気づきの問題ですが、身体のどこにどう増設するのが効率的かの先行データ付きでは如何ですか?」
「確かに、それも含めるならばより価値がありましょう」
商談成立。
「支払い内容の交渉なのですが、一部減額で錬金術ギルドに軽い抗議文を」
「かしこまりました」
「理由は聞かないのですか?」
「たまに技術を聞き出したがる無茶を煙たがる新人発明家はいるのです、あなた様同様」
「なるほど……」
恒例行事かい。
それから数日は、地球での知識を先行知識として伝える。
「まず、増設部位自体に関し、第一に考えるべきは素材部位ごとの強度、硬度、柔軟性です。それらを利用目的と利用者の一般的服装などに照らすことです」
「具体的には?」
「例えば子爵邸の庭師さん。前線で鎧を着るわけではなく、普通の布の服、まあ薔薇のつるなどや枝の尖り、ハサミを想定すると多少硬いかも知れませんが、さほどガチガチには固定しないはずです。貴婦人のコルセットなどのようには」
「ふむ」
「その状態に腕をひとつつけ足し、庭師さんから便利だと言われる腕や足とは?ここが考えるべきところです」
例えば、と続ける。
「腰の後ろに基点を着け、紐のようにする手があります」
簡単なイラストを描く。
「尾の長いタイプの猿のようですな」
「まさしく。今錬金術ギルドに発注している俺の私物装備は鯨やイルカを参考にしていますが、これはその手の猿に似た機能があります」
「と言うと?」
俺は直径20cmくらいのスライムねんどをいじって、イラスト通り腰の後ろ中心に接着する。そして、スライムを棒状に地面に伸ばした。
「こうです」
俺は背中側に体重を掛けるが、スライム棒の根元はラッパの口型に開いて全体が硬化しているため、身体を傾けても後ろに倒れない。
「おお」
「ただし、これは冒険者をやっていて、雷属性スキルがあり、この技術に慣れた俺の芸です。ここの庭師さんと同じく雷の小精霊に宿ってもらい、それを商品にするほうが初心者向けではあります」
俺のように使いこなそうとするなら、それこそ雷属性ガチ勢が本気で学ぶしかない。初心者の直感的操作は差がめちゃくちゃ出るだろう。自転車の練習時間とかそんな風に。
「自由度と利用しやすさの綱引きと」
「ええ。自力で覚えてしまえば必要なのは最弱の雷属性スキルと本人の腕です。雷の小精霊に命じるにしても、命令を考える頭は必要ですが」
あとは、と前置く。
「雷の小精霊を用いる商品は、精霊と契約または生み出すスキルでスライムに込められる数と速度が上限になります。かわりに、新しいスキルを覚えて使いこなす必要はありません。スライムで出来た新商品でしかないですから。しかし、それらを操りたい、自由度を持たせたいと思うなら、スキルを覚え学習しなければなりません」
つまり、と一拍置く。
「スライム商品をまず売り、雷属性スキルなどは剣術の道場的に教室を開き流派的に上位概念として教える、こうなると思います」
腕2本以上人型キャラはファンタジーな人外、生得的なキャラもわりといますが、(無職◯生のハーディ様とか) 「普通の四肢型人体にパーツをつけ足す場合の問題」をこの回では考察しています。




