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 「いやあ助かったぜ」

 「鯨は下手に殺せねえしな」

 「信仰とかですか?」


 「いんや、まあ身体が資本の国だからな。デカくて強いのは信心に値はする。だが狩ったらいけねえわけじゃねえ。やつら群れるから肉にする手筈ではぐれとかを仕留めねえと報復がな。値崩れがあってもギルドや俺らの生活があるし……」

 「かといってただ殺しても、浮いた死骸は膨れあがってドカン!てなこともある。浜に乗り上げて助かりようもないならさっさと殺しちまうなあ慈悲とすら思うがね。死体をさっさと流れに乗せるのも手間だし、そもそも魔道具で殺すのに幾ら掛かるかってえとな。口にしたくもねえ」


 港のすぐ近くで障害物や死体ガス機雷や値崩れするほどの肉になられるのを思えば、最適解だったってことだな。


 「つうわけで、ほれ」


 漕ぎ手の漁師さんが重さの変わらない財布を返してくれる。


 「鯨の暴走もあり得るなか働いて貰ったので、手間賃は払いますよ」


 それなりの額を出す。


 「随分出すな」

 「俺はもともと鯨やらに詳しい錬金術師さんに用があったので、これで失礼します。多かったら祝杯にでも使って下さい」

 「ありがとよ。じゃあ貰っとくぜ」


 漁師さんらの数がいるので景気づけの一杯分くらいの額だが、みんなは酒場へ繰り出していった。


 「ロビン、錬金術ギルドへ行こう」

 「そなたらは鯨などの研究者に会うのか?」

 「はい。正規依頼を提出しましたが、港で対処しているということで」

 「ワシも行こう。条件に合う奴を見繕おう」

 「ありがとうございます」


 俺たちは錬金術ギルドへ向かった。


、、、


 錬金術ギルドの応接室で、条件に合う人を待つとやはりあの老人が出てきた。


 「ワシはスタンレーと言う。本来じゃとちと額が足らんかったが、そこはこちらで交渉した」

 「よろしいんですか?」

 「お前さんの依頼なら面白そうじゃったからな。弟子にはやらぬ」

 「別の意味でいいんですか……」

 「なあに、ワシが先に得た知恵を弟子に教える、これはむしろ当たり前じゃろ」


 (好奇心の)鬼かな?


 「では依頼の概要ですが、まずスタンレーさんは鯨の音声を真似る技術がお有りですね」

 「うむ」

 「では逆に、鯨の声を聞く装置もお有りのはず」

 「さよう」

 「その聞く機材をこの子、コウモリ獣人のロビンの音波に合わせられるようにして欲しいのです」

 「それはコウモリと話をすると言うことかね」

 「いえ、俺の受信装置にしたいのです」

 「ほぉ!早速面白そうじゃな」

 「よろしければ感覚を試してみますか?」

 「できるのかね」

 「ロビンと俺が手をつないで、スタンレーさんとも繋げば低レベルなものなら」

 「ほう、では」

 「目を閉じ耳を澄ます気持ちに」


 俺が真ん中になり左右で二人と手を繋ぐ。


 「ロビン、周りを探る時の音を頼む」


 少しして、『聴こえる』わけではないが髪や産毛が震えるような感じがしたので、微弱な信号を変換、スタンレーさんにも『視せ』る。


 「おお、なんだかぼんやりじゃが見えおる」

 「頭に焼き付いた光の像でないと確かめる手としては、人でも呼んで下さい。錬金術ギルドの知っている人とか」

 「分かった。おうい!誰か黙って」

 「靴もないほうが」

 「靴を脱いで入って来てくれ!」


 困惑したのか若干の間のあと、足音に特徴のない誰かが入ってきた。


 「ぼやけてはおるが、背が高く肩幅が広く髪は短い。受付嬢ではないな。ええと……副ギルド長か?」

 「あ、はあ。そうですが」

 「おお!当たった!」

 「……ところでこれは何を?」


 説明して『視せ』てみると、副ギルド長も興味深そうにしたが……。


 「うぇ……ねえ、まだやるの?喉が……」

 「悪かった、ロビン。実験はコウモリ獣人などなら可能なはずなので、人の都合がついたらお試し下さい」


 退出しようとする。


 「騙されんぞ。音波係はその子でなくともよいが、見せるほうは……」

 「そのへんはスタンレーさんに期待します!」

 「あっ待て!」

 「スタンレーさん?」

 「副ギルド長、ワシもまだ細かい仕様は……いないっ!」


 子爵邸でまた技術換金でもしよう。錬金術ギルドも押しかけられまい。

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