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 錬金術ギルドは、ゲーム時代と同じ位置にあった。事前に道も聞いていたけど。


 「すいません、依頼です」


 受付に提出し、審査を受ける。


 「確かに、冒険者ギルドからの適正価格帯依頼と認められました。ただ……」

 「なんでしょうか」

 「この条件ですと、今港に迷い鯨の群れが出ていまして、合致した者はそちらの対応に」

 「分かりました」


 錬金術ギルドを出る。


 「港に行ってみるか」

 「見物?」

 「錬金術師をね」


 対応を見て、場合によれば指名依頼を通したい。あくまでこちらが過剰に関わらなければいいはずだ。港の現場でこれはと思う人の名前を見物人から聞き出すくらいはセーフだろうし。


 、、、


 「オレこんなぎゅうぎゅうの人だかり初めて見た」

 「まあ大きな街でもまずないだろうね」


 祭りでも統制されていたら芋洗いにはなりにくい。露店とかあるから場所によればここのほうが混んでいる。今、港の船着き場は漁師や船員や野次馬だらけのようで、人まみれだ。


 鯨が群れて船を出すエリアの少し先に潮を吹いているのだから、船の関係者は仕事にならないわな。小舟なんか万一突っ込まれたら最悪沈むだろう。


 「鯨よ、わが願いを聞き給え……」


 「わっ!?」


 港の先端、兵士に人避けされた先の老人がつぶやくと、ロビンが耳を押さえる。人込みの犬顔や猫顔、つまり獣人もだ。(獣人はケモ度合いに個人差が大きい。ロビンは内臓などはともかく多少耳が獣のような程度だが、二足歩行猫みたいな人もいる)他にも獣人の血統かスキルか、毛深い耳を動作させる人も。


 「ロビン、どうした?」

 「すごい音がする。クォーとかクィーみたいな」

 「なるほど」


 多分、あのお爺さんによる鯨の声の模倣だな。海中に大半の出力を割いているんだろうが、漏れた音が耳のいい人に拾われたんだろう。


 鯨たちは動き始めるが、めいめい不揃いな方向へ動き出す。しかも一頭が港方向に来た。


 「お、おい!ヤバイ!」

 「うちの船があ!」

 「それより乗り上げたら俺達も!」


 漁師はともかく野次馬は逃げ始める。俺は、ロビンを肩車し逆走する。


 「ロビン、落ちるなよ!」


 保持はロビン任せだ。けど両手がフリーでないとこの場はかえって危ない。筋力と体格に優れた大人の野次馬に呑まれたら最悪死ぬからな。というわけで、将来的には禁術になりそうな行為で場をしのぐ。


 ぶつかりそうな人間の動作を、筋肉への電気信号でちょっとそらした。原理的には秘孔式暗殺拳みたいなもんなので、悪用のしかたはいくらでもある。


 バレたらヤバイので、看破されにくくなるよう自然に最低限だけ反らした。おかげでちょっと手足に打ち身ができたが。


 「ロビンはここに」


 俺は鯨を止めに向かう。人間身ひとつあればとも言うが、資産がなくなった『生きているだけ』は幸せとイコールではない。災害国日本の人間として、なんとかできることはなんとかするつもりだ。

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