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幕間
灰色の雨空の下で、僕たちは出会った。
志島 流 二十一歳。
風波 桜 二十四歳。
ただ雨の日に、偶然出会っただけの二人だと思っていた。
傘を差し出し、モーニングを分け合い、
潮風の匂いの中、叫び声を海に溶かした。
でも――
あの日病院で告げられていた。
『卵巣がん、ステージⅣ……ですが、治療と体力次第では
五年、十年と生きられる可能性も十分にあります』
その宣告を受けた帰り道に、
彼女は雨に打たれていた。
そんなことを、僕が知るのはまだ少し先のことだった。