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「お前が倒れたら、このラピッドはどうするんだ?」
「そ、それは……」
グラビエルに痛いところを突かれてブランシュは呻いた。また、それはラピッドを家族として迎えるという信条にも反していた。
「……ねぇ、抱っこしていい?」
「別にいいけど……」
やわらかいぬくもりに、ブランシュの瞳からは、じわりと涙が溢れだした。
「な、泣くなよ……! お前が俺の嫁になればいいだけだろ……! 俺と結婚すれば、こいつもオマケでついてくるんだから……!」
「へ……? そ、それって……!?」
「いつも言ってんだろ、俺はお前が好きなんだよ……!」
ぼふんとブランシュの顔が真っ赤になった。
「……ほんとに? いつも冗談で言ってるのかと思ってたんだけど……」
「俺は冗談で言ったことなんか、一度もないぞ!?」
「そ、そうなんだ……!?」
グラビエルは真剣な顔つきで、ブランシュを見た。
「で、どーするんだよ? 言っておくが、友達からとかはだめだからな。付き合い長いんだし、俺の性格なんて分かってんだろ。結婚するか、しないかの二択から選べ。まぁ、結婚する以外の選択肢はやらねーけどな」
「ど、どうしよう……!?」
「迷うなら、俺にしとけよ。いっぱいうまい飯を食わせてやるぞ」
グラビエルは猛アプローチをして、数日後、ブランシュを口説き落とした。
「ほら、ブランシュ、あーんして」
「グ、グラビエル!こんなの、恥ずかしいよ……!? 私、ラピッドじゃないよ……!? ……あっ、これ美味しいね……!」
「だろ? 気に入ったなら、俺のもやるよ」
「いいの? ありがとう、グラビエル!」
グラビエルはブランシュの父親と同様、愛妻家となり、グラビエルとブランシュは周囲が羨むほど仲の良い夫婦となった。
「こっちにおいで、ルルー」
「いや、こっちにおいで! ほら、ルルの好物だよ!」
「餌で釣るなんなんて、ずるいや!」
その傍らには白い毛玉のラピッドが、幸せそうな顔で夫婦とその間に出来た子供達に愛されていた。