ワールドチェンジ
その日は突然やってきた。
部屋の窓を開けるといつも通りの光景があるはずだった。
目が覚めて、違和感に気づく。
身体中から湧き出る大量の汗。
未だかつて経験したことのない息苦しさ。
強い不安を抱きつつカーテンに手をかけていき良いよく開ける。
目に映った光景には「異常」と言う言葉はもはや似合わなかった。
目を開くことさえ困難な閃光。
昨日まであったはずの雪はそこにはなく、空一帯を大きく丸い固体が覆い尽くす。
それは、隕石だった。
しかし次の瞬間隕石の方向へ強い閃光が飛んでいき、見事に砕けた。
驚きのあまり思わず尻もちをついて気分が激しく高揚した。
ゲームの中でしか見れないであろう光景を今目にすることができたから当然だ。
だからだろうか、僕は気付かなかった。
僕の元へ飛んできた1人の少女に。
「危ない!」
窓ガラスの割れる音を聞きながら意識は途絶えた。
そして現在に至る。
とりあえずあたりを見渡してみる。
特に何もない空間、僕以外に金髪で幼い少女が1人。
少女は申し訳なさそうなさそうな顔で僕を覗き込んでいた。
少女は僕に話しかけようとしてはやめ、やめては話しかけようとしていた。
待っててもらちがあかないので自分から話しかけることにした。
「あの、ここどこですか?」
「ここは死後の世界です」
少女は少しおどおどした声で言った。
「それよりあなたは誰ですか」
「私は命の番人の弟子です」
なに言っているのかよくわからないけど一旦無視しよう。
「あっ、僕って死んだんですか?」
「……ご、ご、ごめんなさい」
彼女は気まずそうな顔をして言った。
「え? そうじゃなくて、僕って死んだんですか?」
「…はい、そうですね…」
「なんでですか?」
彼女はより気まずそうな顔をして
「私が未熟なものでリヒト・キャノンを放った際にその反動であなたにぶつかってしまった…からです」
「リヒト・キャノンってなんですか?」
こいつ厨二病かと思いながら聞いてみた。
「光属性の最高位魔法です」
彼女は少し得意げに言った。
どうやら残念な人らしい。
ただ、よくわからないないけど、ぼくはこの変な少女との会話を最後に息を引き取るのだろう。
なら、最後くらい付き合ってやるか。
「ところで僕はどうなるんでしょう?」
「今回の件は私が原因なので魂の状態から蘇生させようと思います」
「はは、蘇生ですか、でもあなたが僕にものすごい速度でぶつかっても体は残っているんじゃないですか?」
「…私の力不足であの後砕けた隕石が落ちてきて地上は火の海になりました
…なのでその時にあなたの身体も一緒に」
まーいいか、どうせこの少女の変な空想に付き合っているだけだし。
って、なんでまだ死なないんだ。
「で、いつ僕死ぬんですか?」
「だから蘇生させるって言う話じゃないですか、私の話聞いてます?」
いきなり口調が強くなった、もしかして本気で言ってるのだろうか?
「あーもう、じゃ、蘇生さっさとお願いしますよ」
めんどくさくなった僕は気付けばそんなことことを言っていた。
「わかりました。ただ、魂からの蘇生なので目覚めるのは100年後となりますがいい人生を!」
途端に意識が薄れていく感覚を味わって心の奥底まで沈んでいくのを感じた。