表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/304

11話 牢獄視察1





『――おーい亮ちん! チャイム鳴ったぞ、昼飯昼飯! 一緒に弁当食べよ!」


 これは夢か……? 過去の記憶か……?

 また俺の脳裏に、お馴染みの親友である蓮池ヒロシの声がよぎってくる。


『ヒロシ……授業中に爆睡するのはヒロシの自由だけど、チャイムが鳴った途端に大声を出さないでくれ。恥ずかしいだろ。

 なんで寝起きなのに、そんな元気に叫べるんだよ』


『ハハハッ! ごめんごめんって。だってこんな広い空間で目が覚めたら、つい大声を出したくなってさ!』


『だろうな、だってここ()()()()だぞ? そもそも、体育の時間に爆睡するなよ」


『いやぁ。眠りについていないと、我のあしき力的なものが暴走しちゃうかもって胸騒ぎがさ!

 善良なる市民とたわむれて、怪我人を出すわけにはいかないだろ?』


あしき力って。あの招き猫みたいな投げ方の事か? 単純にヒロシが球技苦手なだけだろ……』


『そんな事ないって。我が本気を出せば、どんな球技でも軽く世界とか狙えるけど……って、それより今は昼飯だ!

 亮ちんっ、教室に急ぐぞ。ハリアップ!』


 俺はこの会話を覚えている。どうやら日本での記憶を、また夢で見ているようだ。

 

 なつかしいな……。この後ふたりで教室に戻り、いつものように向かい合って弁当を食べたっけ。

 あの時のヒロシが食べていた弁当、凄まじかったな……。


『さーてとっ、いただくとするか。腹減ったー!』


『体育後だもんな、ヒロシは寝起きだが。俺もお腹ペコペコだ、いただきます』


『なぁ亮ちん、弁当タイムにごめん。食べながら少しいい?』


『どうした?』


『亮ちんってさ、誰にも話せない秘密ってある?』


『そりゃ……ない事もないけど』


『我にも秘密があってさ、それを亮ちんに話したくなったんだよ』


『いいのか? 誰にも話せない秘密なんだろ?』


『亮ちんは()()()に入っていないさ、親友って言う特別枠。秘密を提供できる、言わばシークレットサービス!』


『いや……それはアメリカのボディガードだろ』


『ハハハッ! そうだっけ? まぁいいや、我の秘密なんだけど……未だに自分家の住所が覚えられないんだよ』


『はっ? 俺たちもう高校生だぞ?』


『だよな!』


『………………何その力強さ。本気で住所が分からないのか?』


『下界にあるって事は覚えた! けどそれ以上、我のサンクチュアリに関しての情報を覚えるのに難儀なんぎしてて……。

 こんな恥ずかしい事、亮ちんにしか打ち明けられないよ』


『だろうな。ゲームとかの情報は秒で覚えられるくせに、自分の住所が覚えられないって。

 て言うか下界って、何様目線だよ』


『目線は市民と同じだって。我も同じ下界に住みし者だからさ!

 それより、サンクチュアリの位置情報を覚えるコツとかない? 亮ちんにしか相談できなくて』


『コツも何も……ないよ。普通に覚えろよ……って言う前に、ヒロシさぁ……話をらして悪いけど、さっきから気になって集中できないわ。その弁当なに?』


『これっ? 卵かけご飯だけど。あとチューブの生ニンニク』


『学校で生卵を割るヤツ、初めて見たわ。おまけに生ニンニクって……何そのチョイス』


『亮ちんも味変あじへんに使う? 薬味チューブなら沢山持ってるからさ!

 ワサビに柚子コショウ、ショウガに歯磨き粉、からしと後は……』


『待て待てっ! そこのアブノーマル男子生徒!

 ひとつだけジャンル外のチューブが混ざっていたぞ。歯磨き粉? それは薬味扱いしたらダメだろ!』


『これイチゴ味だけど?』


『味は全く関係ない、使い方の問題! そんな頭のネジが外れたような事しているから、住所もろくに覚えられないんじゃ……』


『それこそ関係ないけど、まぁ亮ちんが心配するといけないから、早く引っ越したての新しい住所を覚えるよ! 頑張ってみる!

 やっぱり亮ちんは優しいな、さすが親友!』


『――おい待てよ……! ヒロシお前、引っ越したのか……? 俺は何も聞いていないんだが……!』


 俺はこの後に起きたヒロシとの喧嘩を、夢で見る事なく。


「んん……朝か……」


 寝室のベットで、目を覚ました。


「おはようございます、ロース様!」


「あぁ、おはよう。お前は朝から元気がいいな、デュヴェルコードよ」


 目を覚ますなり、俺はベットの隣にたたずんでいたデュヴェルコードに挨拶を返す。


「いいえっ、究極に眠たいです! 側近が朝から、ふにゃついた態度では締まりませんから、無理矢理に近いほど元気をよそおっております!」


「………………あ、朝から素直だな。そこは正直に申さなくていいぞ」


「失礼致しました。ところでロース様、本日はいかがなさいますか?

 またっていったエリアボスたちの蘇生に回りますか?」


「それも重要だが、今日は別件を……」


 俺はベットから起き上がり、デュヴェルコードを真っ直ぐ見つめた。


「昨日聞きそびれた、ある件を調べたい」


「ある件……昨日ロース様を死に追いやった、ハピリの事ですか?」


 真顔で首をかしげながら、問いかけてくるデュヴェルコード。

 昨日俺が死を迎えたのは、お前のせいだろロリエルフ。自然な流れで他人ひとに罪をなすりつけるな……!


「それも多少は気になるが、今は別の確認をしたい。

 勇者ンーディオが去り際に語っていた、とらわれの姫についてだ」


 俺が姫の話題を出した途端、デュヴェルコードはハッと表情を変えた。


「そうでした、すっかり忘れておりました。今でも牢獄ろうごく幽閉ゆうへいしておりますよ」


「どうやら本当にいるようだな、その姫とやらは。ンーディオにほのめかされるまで、全然知らなかったぞ」


「お伝えが遅くなり、申し訳ありません。ロース様が昏睡こんすいされていた間、ずっとおそばにベッタリでしたので、わたくしも姫の存在を忘れておりました」


「忘れていた事は仕方がない、そこまで気に病むな。

 詳細は向かいながら話してくれ。まずはその姫を幽閉している牢獄へと……」


 俺が行き先を伝えようとした、そんな矢先に。



 ――コンコンッ……。


 寝室のドアから、ひかえめなノック音が聞こえた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ