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8話 個々死闘6





「食らえや、『トゥレメンダス・フレアバースト』」


 俺に手をかざし、仰向けのまま爆発魔法を唱えたンーディオ。

 途端に俺の胸元は、真っ赤な魔法陣におおわれた。


「やばっ、爆はっ……」


 ――ドォーーーンッ……!


 視界を狂わすほどの強い閃光せんこうと、耳をつんざく激しい爆音。


 身構える余裕もないまま、俺の胸元で強烈な爆発が起きた。

 ゼロ距離で起きた爆発の衝撃に耐えられず、俺は後方へと吹き飛ばされる。


 熱いを通り越した灼熱。

 体の芯にまで衝撃を伝えてきた爆圧。

 残りわずかとなった体力。

 口からフワフワと湧き出る黒煙……。アニメやゲームでしか見た事がなかったが、本当に口からこんな煙が出るなんて……!


 俺はなすすべもなく、爆風に体をゆだねてちゅうを舞った。


「完全に、油断した……」


 自分の甘さと情けなさを痛感しながら、俺はしばらくして床へと落下した。


 十数メートルは飛ばされただろうか。上半身を起こし視認すると、ンーディオはかなり離れた所にいた。


「ハハッ! ざまぁねぇな、情けなく飛んでいきやがった。まるで出来損ないの花火だったな。雑魚ざこの飛び方してやがったぞ!」


 ンーディオは聖剣を杖のように使い、ゆっくりと立ち上がる。


「ハァハァッ……! 誰が雑魚だ。

 先にお前だって、私に殴られて飛んでいっただろ。しかも味方のヒーラーに、迫り来る危険物のような扱いまでされて」


「あぁ!? テメェ、オレの女癖おんなぐせがわりぃって言いてぇのか?

 誰が、ベットの上では暴れん坊勇者だ!」


「いやっ…………なんの話しだっ! どこでどう間違えれば、危険物が()()()()に解釈できるんだよ!

 どう考えても飛来物って意味だろ、お前のとこ事情など知るか!」


「テメェが遠回しにっ……あーっ、もういい。めんどくせぇ!

 おいマイル、早速回復だ」


「ご、ごじゃりゅ! 『ヒール』、『ヒール』……」


 立ち上がったンーディオの元へ、チョビチョビと駆けつけたマイル。大きな杖を構え、回復魔法を連呼し始めた。


「ハァハァ……! か、回復されたか……。

 しかし、なぜ私の拳をその身に受けて、致命傷に至っていない?」


「ハハッ! 咄嗟とっさに勢いを殺したからに決まってんだろ」


「勢いを、殺しただと?」


「勘のにぶい脳筋だな。打撃に合わせて、体を流しながら衝撃を軽減させただけだ」


 ンーディオの種明かしにより、先ほど感じた違和感の正体を理解できた気がする。通りで、手応えが軽かったわけだ。

 

 しかし驚く事に、コイツはあんな一瞬で器用に身をあやつり、衝撃をやわらげ致命傷を防いだのか……?

 もはや勇者と言うより、ただのバケモノだな……!


「まったく、なんて恐ろしい反応と体術だ。だが、まさかお前まで死んだフリをするとは思わなかったぞ。そこは誤算だった……!

 シノと言いお前と言い、人族は恥も知らずに死んだフリが好きなのだな」


「なんだとゴラァ! オレは誘い込んだんだ。シノと一緒にすんじゃねぇよ!

 アイツは死んだフリのプロだぞ、シノに失礼だろ!」


「………………それは褒めているのか? バカにしているのか?」


「知らねぇよ!!」


 ンーディオは理不尽な怒りを露わに、隣でたたずむマイルの顔面を、片手で鷲掴わしづかみにした。

 自分で言っておきながら、いったいコイツはどこに癇癪かんしゃくを起こしているんだ……!


「んんんーっ……! ンーディオ様、痛い臭い! 痛いでごじゃりゅよ」


 マイルは両手をバタつかせ、モゴモゴと覚束おぼつかない口調でンーディオに訴えかける。

 どさくさ紛れに、臭いと聞こえた気が……。


 呼びかけを受けたンーディオは、我に返ったようにハッと表情を変え、マイルの顔から優しく手を離し頭をで始めた。


「ハハッ! すまなかったなマイル。なんか横にいたから、つい握っちまった。狩猟しゅりょう本能ってやつだ」


 ………………どんな言い訳だ、動物かよ……!


 ンーディオは頭を撫でる手を止め、ニヤリと俺に不敵な笑みを向けて来た。


「オレのヒーラーが優秀に働いてくれた事だし、オレも働きを見せねぇとな!

 おいマイル。こっからオメェは邪魔になりそうだ、オレの背後に隠れてな。よくやったな、お前は自慢の魔法少女だ……!」


「ごじゃりゅ!」


 手の平を返すような指示にも関わらず、笑顔でンーディオの背後に移動したマイル。

 魔法少女って……。間違ってはいないが、ニュアンスおかしいだろ……!


「待たせたな魔王。テメェの無駄に有り余った体力をワンパンで始末すんのはキチィが、さっきの爆発で少しは体力も削れただろ。

 そろそろ大技でも決め込んで、美的にフィニッシュといこうか!」


 ンーディオは聖剣を大胆に振り回し、勢いのまま剣先を床へと叩きつけた。


 ――少しどころか……。

 先ほどの爆発で、俺の体力は虫の息レベルにまで削られたんだが……!



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