表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/304

7話 裏切御免3





 俺たちは正門前にいたゴブリンから、勇者パーティの行方ゆくえを聞き出した。


「ロース様、今はこのゴブリンの情報を信じて、敵さんの跡を追いましょう」


「そうだな、ただちに玉座の間へと向かう」


「フハハッ……! 腕がうずいてきた。城内でしたら、我も全力を出せますな」


 変わらず日の光対策として、マントを頭の上に広げ続けるコジルド。


「玉座の間へ向かう前に、コジルドよ。お前に頼みたい事がある」


「ロース様のご命令とあらば! 支援魔法をご所望ですかな? それとも我に、けもののように暴れろと?」


「いや違う。お前は玉座の間に入らず、身をひそめておけ」


「なっ……!」


 俺の出した指示に、コジルドはギョッと目を見開き固まった。


「戦力外通告ね、お疲れー」


「そそそっ、そんな! 我だって戦いますぞ!」


「コジルドさん、まるでドキュメンタリーですね。わたくしたちの行く末を、見守っていてください」


「あぁ、マイノリティ……! これではまるで、今の我は……のけもの、のけもの……」


 コジルドはマントをキープしたまま、途方に暮れたように遠くを見つめる。


「それは……『除け者の、獣』と言いたいのか? 区切る所がおかしいぞ。

 心配しなくても、これはあくまで作戦の一環だ。ちゃんとお前にも働いてもらう」


「と、申しますと?」


「コジルドよ、お前は隠し球だ。恐らくンーディオは、お前の復活をまだ知らない。

 ひそかに身を潜め、好機に備えて欲しいのだ。場合によっては、魔王軍の切り札となり得るかもしれん」


 俺ははげますように、生気の抜けたコジルドの肩をポンポンと叩く。

 するとコジルドは、徐々に不敵な笑みを浮かべ……。


「フハ、フハハッ、アジェンダ……! ロース様、素晴らしき策略。この我にしか務まらぬ、最重要ポジションですな!

 漆黒の闇に、まぎれるとしよう……!」


 背中を大きく反らせ、天に向け高らかに笑い声を上げたコジルド。

 どうやら無事に、闘志を取り戻してくれたようだ。背中を反らせすぎて、思いっきり日の光を浴びているが……。


「あ、相変わらず痛々しいヤツだが、頼りにしているからな。

 では玉座の間に向かうぞ。デュヴェルコードよ、『テレポート』を頼む」


「かしこまりました。わたくしの手をお取りください」


 俺たちは一斉いっせいに、デュヴェルコードの差し出した手に掴まり。


「『テレポート』!」


 一瞬にして、玉座の間に通じる廊下へと移動した。

 しかし到着するなり、俺はある事に気がつく。


「扉が閉められている……。先ほど玉座の間を離れた時、確か開いていなかったか?」


「恐らく敵さんが既に到着し、扉を閉めたのでしょう。

 玉座の間って、ジッと待つには肌寒い場所ですし」


 納得するように、その場でひとりうなずく経験者のデュヴェルコード。


「できればトラップなどの警戒に、意識を向けて欲しいところだが……まぁ良い」


 俺は静かに数歩ほど前に進み、皆の方へと振り返った。


「気を引き締めるぞ。前回のような作戦はないが、今回もお前たちの力を信じている。

 新たな戦力にも期待しているからな、隠し球役を頼むぞコジルド。

 デュヴェルコードとレアコードは、私と共に玉座の間へ入る。いいな!」


「「「かしこまりました」」」


 皆の返事を聞き入れ、俺は玉座の間へと歩き出す。

 そして扉の前で足を止め、背後にふたりの立ち止まる気配を感じた瞬間。


 ――バンッ……!


 勢いよく、扉を両手で押し開いた。

 玉座の間を露わにした入口から見えた光景は……。


「ハハッ! 遅かったじゃねぇか魔王。待ちくたびれたぜ。

 威勢のいい登場だが、オレを倒しにでも来たのか!? 調子こきやがってよ!」


 座面に片足を乗せ、堂々と椅子に腰をかけるンーディオが待っていた。


「調子こいているのはお前だろ。玉座の椅子に、なんてガラの悪い座り方してんだ。それでも勇者か……!」


 ここは最終エリア、玉座の間。


 俺はこの状況に、疑念を抱いた。

 アニメやゲームで目にする場面なら、普通は立ち位置が逆のはず。

 魔王城の玉座で、勇者が待ち構えてどうする……!


 ――はたから見ると、立ち位置的に俺が挑戦者みたいじゃないか。魔王なのに……!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ